『雲を紡ぐ』伊吹有喜
お友達と読み終わった本を交換。
そんなきっかけで
この本は私の手元にやってきた。
どうしても自分で本を選ぶと
自分の好きな作家さんばかりになってしまう。
自分で選ばない本を読むって
新鮮でいいなと思った。
不登校になった高校2年生の美緒は
両親とのこじれた関係から逃れるように
新幹線に飛び乗り、盛岡へ向かう。
そこでは祖父が羊毛を手仕事で染め、
紡いで織る工房を営んでいた。
手伝ううちに、いつしか美緒は
「自分の色」を紡ぎたいと思うようになる。
(本の裏表紙から抜粋)
主人公・美緒が不登校で
自分の進路や
自分のことが自分でわからないず
悩むところなど
自分の現状が重なって
続きが気になり一気に読んだ。
親と子
そして夫婦も
お互いのことを想っているのに
ちょっとした掛け違いですれ違う。
自分の家族関係とも重なって
切なくなった。
美緒が祖父から
“自分の好き”について聞かれて
自分の好きがわからないという場面にも
グッときた。
今は自分の好きが
だいぶポンポン出てくるようになったけれど
数年前は全くわからなかった。
そんな自分と重なった。
美緒の祖父の言葉が
とても深くて素敵。
心に沁みるものがたくさんだった。
美緒と同じ不登校の息子に
伝えたいのはこれなんだよなぁ・・・
と思う場面もたくさんあった。
心残った言葉のひとつ
「好きなことばっかりしてたら駄目にならない?
苦手なことは鍛えて克服しないと……」
「なら聞くが。
責めてばかりで向上したのか?
鍛えたつもりが壊れてしまった。
それがお前の腹じゃないのか。
大事なもののための我慢は自分を磨く。
ただ、つらいだけの我慢は
命が削られていくだけだ」
命を削るような我慢はしなくていい。
でも、自分の好きなこと
大事なことの為の我慢もあること
それを息子にはわかってほしい
そのためには腹をくくることも必要。
自分の好きをみつけ
自分の道を決めていく
美緒のように立ち上がってほしいと
息子を重ねてしまった。
そしてこの言葉
すぐに
“何かしないと!”
“頑張らないと!”
と
私の頭の中に流れる思考にも
優しく声をかけたい。
私も美緒のように
好きなことばかりしていたら
楽しんでばかりいたら
ダメになるんじゃないかと
そんな思考が流れる。
そんなに
自分を追い詰めて
それは良い結果になったのか
それがやりたいことなのかと。
自分を緩める声かけをしよう。
物語の舞台は岩手。
ご当地メニューやお菓子、
実際にあるカフェなど出てくるので
岩手にも行ってみたくなった。
自分だったら何色に染めたいだろう。
自分の色。
そんなことも考えて楽しい。
とても素敵なお話だった。