昭和61年の選抜は、それまでの高校野球をリードしていた早稲田実→池田→PL学園の流れが一旦落ち着き、新盟主としてどこが中心となるのか、という注目がありました。そのため優勝候補も各地区の優勝校中心に挙げられたのですが、番狂せのオンパレードとなります。そういう意味ではとても印象深い大会です。


3月26日

第1試合 開幕戦 高松西 対 秋田

①九回劇的同点アーチ‼️伝統校、選抜初勝利‼️


秋 田 000 000 012 3

高松西 110 000 000 2


高松西の新鞍は、一度打者に背を向けてから投げる変則下手投げ右腕。秋田の斎藤新は新2年の上手左腕。好対照の投手戦は後半の秋田の粘りにより白熱した熱戦となった。

初回、高松西は四球、捕逸の冨沢を竹内がレフト線二塁打で迎え入れ先制。二回にも遊ゴロ失の香川がバントで二死後、中川の三ゴロが悪送球となり2点をリードする。対する秋田は変則技巧派の新鞍に苦しみ、四回の一死二塁、五回の一死一、三塁を逸機。しかし高松西も同じく四回の一死二塁、六回の二死二、三塁を逃し勝負は後半へ。

八回、秋田は牧野が死球、内野ゴロ二つで二死三塁から長嶋の中前打で1点差とする。迎えた九回、秋田は先頭の高田がレフトスタンドへ同点の大会第1号を叩き込む。さらに一死後佐藤健が右前打、二盗から石井の右前打で逆転に成功。その裏高松西も四球と三ゴロ失で二死一、三塁まで攻めるも、代打浦上が三振で試合終了。秋田は選抜初勝利を劇的逆転劇で達成した。


第2試合 岡山南 対 東邦

②東海優勝校、中国地区の第四代表に完敗!


東 邦 000 000 201 3

岡山南 102 020 10X 6


優勝候補の一角、東邦の初戦は立ち上がりから岡山南に対して追う展開となった。

初回、岡山南は河合が三塁打。東邦の田中の暴投でなんなく先制する。これでリズムに乗ったのか、岡山南は三回、先頭・森下が二塁打、竹中のバントは野選となり、河合が中前打で追加点。さらに一死満塁から岡田がスクイズで3点目を奪う。さらに五回、河合が四球後、坊西がライトラッキーゾーンに決定的な2ランで試合を決める。東邦は七回、一死二塁から田中、伊藤の連打と失策で2点、九回にも無死一、三塁から併殺の間に1点を返すにとどまった。


第3試合 松商学園 対 東海大山形

③神宮大会の覇者!圧勝で初戦突破!


松商学園 000 111 031 7

東海山形 000 000 100 1


明治神宮大会で猛打で優勝を飾った松商学園。対する東海大山形は、夏の初戦、PL学園に記録更新となる大敗を喫したところからの東北大会優勝と、見事な復活を遂げている。試合前の評価は松商学園有利であった。

山形は三回、松井の内野安打と黒田のバント安打で一死一、二塁とするも連続三振。すると松商は四回、武田が右前打の後田口の中越え三塁打で先制する。五回にも竹内がライトへソロ!さらに六回、川村が左前打、二盗、武田四球からバントで送り、田口の遊ゴロ失で追加点。山形は七回、松元の右前打と高橋勝の左中間三塁打で1点を返したが、無死一、三塁から中飛、遊併殺でそれまで。八回、松商は武田、藤井の連続二塁打とバントエラー

、スクイズで3点、九回にも武田がダメ押しソロで圧倒した。


3月27日

第1試合 上宮 対 沖縄水産

①力投空し、沖水再三の好機逃す‼️


沖縄水 000 001 000 1

上 宮 000 110 01X 3


上宮は三回まで沖縄水産の上原にノーヒットに抑えられていたが、迎えた四回、先頭・山本が遊ゴロ失で出塁し、浜田の右前打で二死一、三塁。ここで峰地が中前打で先制する。五回にも鈴木、山元の連続二塁打で追加点をあげ優位に立つ。対する沖縄水産も六回、平安が四球、金城の右中間三塁打で1点を返す。八回にも二死から金城がレフト線二塁打、上地の左前打で一、三塁とするも上原が中飛でこれを活かせず、その裏上宮に一死から清水が右中間三塁打、森本の左犠飛で突き放された。沖縄水産は9安打を放ちながら強攻策が裏目に出て、上宮の山元を崩せず、沖縄水産の上原の被安打6、奪三振10の力投を活かせなかった。


第2試合 池田 対 福岡大大濠

②終盤に、やまびこ復活‼️逆転劇‼️


福大濠 001 020 000 3

池 田 000 000 34X 7


福岡大大濠は五回まで毎回、先頭打者が安打で出塁とリズム良い試合展開。三回、先頭・持田の左中間二塁打から二死三塁とし、、瀬戸の二塁内野安打で先制。五回にも持田の安打、山下のバント野選から二死二、三塁とし古谷の中前打で3点をリードして後半に入る。しかし池田は七回、それまで2安打と抑えられていた大濠の神野を捉え、谷川、黒田の短長打で無死二、三塁。藤原の右前打でまず1点。続く阿部のスクイズは併殺となるも、3番・森がレフトスタンドへ同点2ラン‼️

同点となり流れは池田へ。八回、一死一、三塁から阿部が勝ち越し二塁打。森は敬遠で満塁となるが、梶田、長谷川が連続安打でこの回一挙4点。池田は七回、八回と連続で打者9人を送り込み、『ニューやまびこ打線復活‼️』の狼煙をあげた。


第3試合 防府商 対 関東学園大付

③魔の八回‼️霜田に悪夢!防商見事な集中打!


防 府 商 000 010 050 6

関東学園大 100 001 002 4


関東屈指の右腕・霜田が注目の登場。関東学園大付も初回、無安打で先制するなど出だしは好調。しかし防府商は五回、梅田、村重の二塁打で同点。六回、関東学園大付も霜田の中前打で再び勝ち越すも、八回、防府商は猛反撃。先頭・金本が四球、佐鹿賢の右前打で無死一、二塁。バントで進塁後安丸が左前打で逆転に成功する。さらに松永が左前打でチャンスをつなげ、村木がレフトへ3ランで勝負を決めた‼️九回、関東学園大付は3本の安打と四球で2点を返したが反撃もそこまでだった。関東学園大付の霜田は七回、三者連続三振を奪うなどその片鱗を見せたものの及ばなかった。


第4試合 天理 対 関東一

④関東一先制も天理猛打で逆転劇‼️


関東一 200 000 001 3

天 理 001 001 30X 5


評判の好投手、天理・本橋の立ち上がりを攻めた関東一。室井、西村の安打で一死一、三塁から四番・渡辺が右中間三塁打で2点を先制!しかし天理も三回、本橋がレフトへソロを放ち流れを引き戻す。四回は北浦、藤井の長短打で一死一、三塁、五回も岡田、中村の連打で二死一、三塁と攻めたてる。迎えた六回、天理は北浦のレフト線二塁打と2四球で一死満塁とし、金井のスクイズでようやく同点とする。続く七回、中村が中越え二塁打後、山下和がライトへ2ラン‼️さらに北浦の3番目の二塁打、西山の右前打で5対2とリードを広げる。関東一は九回、大館がレフトへソロを放つも及ばなかった。


3月28日

第1試合 尾道商 対 熊本工

①逆転、逆転の末、打ち勝った尾道商‼️


熊本工 011 021 010 6

尾道商 201 000 40X 7


雨の中、九州大会優勝の熊本工と、中国大会優勝の尾道商が真っ向から打撃戦を演じた‼️

尾道商が初回、松原の2点三塁打で先制すると、熊本工もすぐに反撃。二回、三回に5本の安打を集め同点とする。尾道商もすぐに三回裏、古毛堂、取釜の安打で勝ち越すが、五回、熊本工は内山、杉本、川本の3安打で逆転、六回にも無死一、二塁から内山の三塁線バントの悪送球で1点を追加し5対3と優位に立って終盤へ。

尾道商は七回裏、二死一塁から古毛堂の右中間三塁打、土居ノ内の中前打で同点、さらに取釜の右前打を後逸で逆転に成功。先発永野から木村に代わるも、さらに木村が左中間二塁打で一挙4点を上げ7対5とする。尾道商は八回から投手を木村から眞治に代え逃げ切りを図るが、熊本工は三浦の安打と四球からチャンスをつかみ、杉本の安打で1点差まで詰め寄る。さらに岩山も安打で二死満塁とするも川本の一打はライトフェンス際のファウルフライで逆転の好機を逃した‼️


第2試合 新湊 対 享栄

②強豪を完封劇‼️初陣見事な大金星‼️


享栄 000 000 000 0

新湊 010 000 00X 1


大会屈指の剛腕・享栄の近藤!チームも優勝候補の一角として評価が高い。対する新湊は北信越の第二代表で初出場。ワンサイドゲームすら予想されていた。

試合は予想外の展開を見せる。二回、二死から新湊は湊谷が四球。ここで投手の酒井が追い込まれながら右中間深々と破る三塁打で先取点。しかし享栄の近藤は左腕から力のあるストレートと鋭いカーブでこのあと3安打、奪三振12個の圧巻のピッチング。しかしそれ以上に新湊の酒井はコントロールよく享栄打線を封じ込める。四回、味方の二つのエラーで無死一、三塁のピンチをまねくも、ここは喜多をセカンドゴロ併殺、近藤を三振で切り抜ける。七回、喜多の初安打から迎えた無死一、三塁のピンチも、近藤の遊ゴロで6-4-2の判断良い併殺。さらに長谷部をライトフライで無得点。新湊の酒井は近藤を上回る2安打完封で初勝利とともに優勝候補を撃破した‼️


3月29日

第1試合 洲本 対 拓大紅陵

①投打に圧倒!拓大紅陵、横綱発進‼️


洲 本 000 000 000 0

拓紅陵 020 000 06X 8


雨のため、順延された試合。前年度ベスト8、関東大会優勝の拓大紅陵に対して洲本がどこまで粘るか、の前評判だった。試合はまさに前評判通りの展開。紅陵が二回、網野が敵失、二盗し、飯田の右前打で先制。飯田も二盗後、小枝の右前打で2点目をあげた。このあとは両投手ともに粘りの投球。五回、洲本は井上の二塁打、森の死球で無死一、二塁とするが飯田捕手の牽制で二走が刺される。さらに山下が安打で一、二塁とするも再び二走が捕手の牽制で刺され好機を逃す。七回にも井上、森の連打で二死一、三塁とするも逸機。

八回、紅陵は谷が右中間三塁打!加藤が四球から鈴木が右前打で貴重な3点目を奪う。併殺で二死三塁となるも、谷田部左前打、網野左中間二塁打、飯田の2ランとたたみかけ、さらに敵失もあり、この回大量6点で勝負を決めた‼️紅陵の木村は4安打完封を記録した。


第2試合 智弁学園 対 函館有斗

②4安打を全て得点に絡め、集中打で勝利‼️


智弁学園 000 000 000 0

函館有斗 000 010 01X 2


昨年夏の甲子園で一年生ながら快速球で注目を浴びた智弁学園・辻本!2度目の甲子園のマウンドは、昨年と同じく快投を演じながら苦戦した。

智弁学園は二回、松場が一死からレフト線二塁打でチャンスをつかむ。二死三塁まで進めるも、内野ゴロで無得点。対する函館有斗は速球とフォークのコンビネーションの辻本に苦しむも、五回、福島が右中間を深々と破る三塁打で一死三塁とすると、続く山形の遊内野安打で先制。八回にも山形が中前打、暴投とバントで一死三塁とすると、西澤昌の右犠飛で2点目をあげた。函館有斗の安打はこの2イニングのみで、あとはパーフェクト、奪三振9個、4安打に抑えられた。しかし函館有斗の西澤昌がそれ以上の快投劇。1安打、3四死球の完封を記録した‼️


第3試合 京都西 対 甲府商

③京都西、切込隊長大活躍で勝利発進‼️


甲府商 000 010 000 1

京都西 410 012 03X 11


京都西は近畿大会の準々決勝でコールド敗退ながら、選手の能力を評価されての選抜出場。その真価が問われる初戦の相手は関東大会ベスト4の甲府商。立ち上がりから京都西のペースとなる。

初回、甲府商は先頭・青柳の二塁打から四球を絡め、二死満塁と攻めるも無得点。対する京都西も田村、夜久の連打、盗塁と山本の四球で無死満塁の絶好機‼️四番・上羽の右前打で2点。さらに二死二、三塁から餅原が二塁内野安打の間にさらに2点を追加した。流れをつかんだ京都西は二回、五回にも加点。六回には二死から足を絡めて2点、八回にも二死二塁から田村、夜久、山本の三連打で3点を追加した。

甲府商は走者を出しながらも京都西の佐々木の前に決定打を奪えない。五回、右前打の青柳が二盗、三盗後、赤池との重盗が決まり(記録は本盗)で完封を免れるのが精一杯であった。なお青柳の1イニング3盗塁は大会初の記録となった‼️


第4試合 広島工 対 鹿児島商

④九州最後の砦も完敗!広島工圧勝‼️


鹿児商 000 000 000 0

広島工 200 003 12X 8


今大会で3戦3勝と絶好調の中国地区。逆に3戦3敗と苦しむ九州地区。ともに4校目が直接対決。初回、広島工は戌丸のライト線二塁打と高津死球、バントで一死ニ、三塁とし、宮川のスクイズが野選、さらに上田もスクイズで2点を先制。鹿児島商も三回、浜田の中越え二塁打で一死二塁とするも、広島工・上田の前に逸機。しかし四回、広島工も敵失、上田の安打で無死一、二塁とするも、バントミスで逸機。流れが微妙になったものの、六回、広島工は竹下が四球、宮川のエンドランで無死一、三塁とし上田、山村、三井の三連打で3点を奪い流れを取り戻した。広島工は七回は敵失から、八回はスクイズと敵失で一方的展開。広島工・上田は3安打完封で圧勝し、中国勢は無傷の4連勝、九州勢は4連敗で姿を消した。


3月30日

第1試合 PL学園 対 浜松商

①ちぐはぐPLにリベンジ浜松商‼️


浜松商 022 000 040 8

PL学 000 001 000 1


昨年の選抜初戦と全く同じ組み合わせ。前回はPL学園が11対1の大差で圧勝している。今回もPLの圧勝劇が期待されていた。

二回、浜松商がチャンスをつかむ。飯田四球、大庭のレフト線二塁打で無死二、三塁。ここで宮田が左前打、さらに内野ゴロで2点を先制する。さらに三回、一死一、二塁から飯田が左前打。処理を誤る間にさらに2点を追加した。PLは四回、今岡、松田の安打で二死一、二塁とするも、浜松商の大庭の前に無得点。六回、中田の安打から二死二塁とすると、松田の中前打でようやく1点を返す。

しかし八回、浜松商は寺田の左中間三塁打を小出の右犠飛で迎え入れ、先発・月城をノックアウト。さらに代わった深瀬からも中山の三塁打、飯田の中前打で追加点。大庭の死球で一、二塁から敵失で追加し、鈴木雅の左犠飛でダメ押し。浜松商は8安打が効率よくつながり、PLの11安打に勝利した。PLには王者の風格は失われていた‼️


第2試合 高知 対 帝京

②高知・和田!先制打と完封のワンマンショー‼️


帝京 000 000 000 0

高知 020 000 01X 3


四国優勝の高知と、東京の優勝校・帝京!初戦にはもったいない好カード!尾道商対熊本工もそうでしたが、今大会は初戦で当てるには惜しい試合が続出しました。

高知は二回一死から山本が右前打、処理をもたつく間に二進し、和田のレフト線二塁打で先制すると、さらに河野の左前打と内野ゴロで2点目をあげた。ただ、高知の和田投手はこの回の攻撃で右手薬指を痛め、中盤から変化球中心だったピッチングを直球中心に変えた。

帝京は三回、平山がレフト線二塁打でチャンスをつくるも、和田の巧みな牽制に走者を刺され、さらに奈良原も右前打で出塁するも、牽制に引っかかって攻撃の糸口を見いだせない。

対する高知も中盤のチャンスを逃すものの、八回、大坪の中前打と山本の左中間二塁打で貴重な3点目をあげた。和田は6安打完封を記録した。


第3試合 御坊商工 対 宇都宮南

③御坊、同点アーチも空しくサヨナラ負け‼️


御坊商工 000 002 001 3

宇都宮南 201 000 001 4


選抜一回戦最後の対決は、関東最終枠選出の宇都宮南と、近畿最終枠の御坊商工という、前評判のあまり高くないチーム同士の対決。しかし試合は白熱します。

初回、宇都宮南は四球、バント野選のチャンスに、稲葉、伊東の短長打で2点を先制。三回にも敵失を逃さず関谷のライト線二塁打で追加点をあげた。対する御坊商工はバントミスなどで序盤、宇都宮南の高村を助けたものの、六回、四球と敵失から二死二、三塁とし、吉本が左中間安打で1点差に迫る。そして迎えた九回、二死走者なしから、御坊商工は高村から堀田がこの日4安打目となる値千金の同点ソロ‼️高村は勝利目前で同点とされる。しかし宇都宮南はその裏、稲葉が左前打、内野ゴロで二進し、関谷の左前サヨナラ安打で勝利を決めた。宇都宮南は毎回の15安打を放ちながら拙攻が目立ったものの、6安打、奪三振9個の高村の力投に応えた‼️


荒れる選抜!いきなり初日、東海地区の優勝校・東邦が敗れました。九州優勝の熊本工と中国優勝の尾道商は大熱戦。こちらは熊本工が破れ去りましたが、最大の話題はその次の享栄対新湊‼️まさか話題の好投手・近藤を擁する享栄が初戦で甲子園を去るとは!辻本を擁する智弁学園も、初戦で消えました。そしてなんといっても荒れる選抜の決定的な試合は、今まで3年間、高校野球の中心だったPL学園が、昨年春に一方的に倒した浜松商に、逆に一方的に破れ去ったことです。

この後に東京の優勝校・帝京と四国の優勝校・高知が対戦し、高知が完勝しましたが、PLが敗れたほどの大きな印象ではありませんでした。

享栄、智弁、PLをはじめ帝京、熊本工と戦前の優勝候補に名を連ねている学校が初戦で消え去ります。二回戦では順当に進むのでしょうか?それとも‥‼️