昭和59年の夏は、初戦がやたらに逆転の目立つ大会です。中には記録的な大逆転、快投劇の中、信じられない結末をもたらす試合もあります。


8月8日

第1試合 開幕戦 桐蔭学園 対 福井商

①神奈川勢、得意の開幕戦を逆転勝利!


福井商 100 000 000 1

桐蔭学 000 011 01X 3


桐蔭学園は中盤から福井商の藤田の投球にタイミングが合ってきた。五回、桐蔭は竹内が内角の難しい球をレフトポール際に大会第1号の同点ソロ。さらに六回、先頭の大久保が真ん中の絶好球を右中間スタンドへ勝ち越しソロ。八回には下位の安打でつかんだチャンスに、またしても竹内が左前ポテンヒットでダメ押し。福井商は初回、先頭の高橋の二塁打から送り、スクイズとソツなく先制点をあげて優位に試合を進めたが、勝負所の六回、八回の好機を活かせなかった。


第2試合 星稜 対 別府商

②星稜、粘りきれず三大会連続初戦敗退!


星 稜 100 001 000 2

別府商 000 000 021 3


別府商は見事な粘りを見せた。2点を追う八回、先頭の海老名が二ゴロ失。続く工藤の詰まったあたりが中前に落ち一、二塁。直後、海老名が牽制で刺されたが、続く一番藤内が一塁バントヒット、内野ゴロで二死二、三塁から本郷が右前同点タイムリー打した。勢いそのまま九回、別府商は先頭の池部が右中間三塁打。ここで後藤が右犠飛でサヨナラ勝利した。星稜は初回、湯上谷の右前先制打、六回も仁尾の二塁打を正田が返し、2点リードと優位な展開だった。しかし三回の無死二、三塁でスクイズを空振りしたミスが後半に響いた。


第3試合 海星 対 学法石川

③ホームランの応酬も、最後は犠打、犠飛で!


海 星 020 001 002 5

学石川 010 030 000 4


二回の海星。一年生の種村が二死一塁からレフトラッキーゾーンへ先制2ラン。学法石川もすぐその裏1点を返すと五回、近内がライトへ逆転3ラン。海星も六回すぐに浜口、中庭の連続二塁打で1点差とすると九回、粘りを見せる。先頭の中庭が安打、山下の二塁打で無死ニ、三塁とすると、城田のスクイズが野選となり同点。さらに一死後、先制2ランの種村がレフトへ大飛球。決勝犠飛となり、その裏の学法石川の二死二塁の粘りを抑え、勝利した。一年の種村の活躍が目立った。


8月9日

第1試合 鎮西 対 高崎商

①鎮西、九州1位の実力発揮!松崎4安打好投!


鎮 西 000 002 100 3

高崎商 000 000 100 1


鎮西は松崎が好投、打線も中盤チャンスを活かした。中盤まで両チーム互角。六回、鎮西は先頭の松崎が右前打。河内のバントは二封されたが伊藤の遊内野安打とミスで一死一、三塁。ここで坂本が中越え三塁打で2点を先制した。七回には山野がライト線二塁打、バント、スクイズで加点した。

高崎商はその裏、富岡のライト線二塁打から長井の右前打で1点を返した。前半の待球作戦が実りかけたが、鎮西の好守が松崎を盛り立て、そのまま逃げ切った。


第2試合 大船渡 対 長浜

②選抜の旋風大船渡、初戦14安打空回り‼️


大船渡 000 020 010 3

長 浜 000 103 00X 4


選抜4強の大船渡に対し、長浜は少ないチャンスに食らいついた。四回、ヒットと四球で二死一、二塁から吉岡が右前打で先制。大船渡も五回、鈴木、清水の連続タイムリーですぐに逆転。しかし長浜は六回、2安打で一死一、三塁とし西田の中前打で同点。さらに吉岡のスリーバントスクイズで逆転。スクイズが野選となり、さらに堤の中犠飛で4対2とリードした。長浜の安打は四回の2本と六回の3本の、計5安打のみ。大船渡は八回、木下の右前打で1点差としたが、15安打、4四球、4盗塁と毎回チャンスを作りながら13残塁の拙攻。好投する金野を見殺しにした。


第3試合 浜松商 対 智弁学園

③大波乱!7点差大逆転の大乱戦‼️


浜松商 000 060 003 9

智弁学 133 000 100 8


浜松商が土壇場の爆発的打線の威力を見せ、豪快な逆転勝ちに結びつけた。九回、先頭の石牧がレフトへソロ。続く河島はライト線二塁打、一死後野島が同点左中間二塁打。二死後、内山が左中間二塁打で逆転した。

智弁学園は序盤、浜松商の田中を捉え、渡辺の満塁からの三塁打などでノックアウト。しかし五回、智弁先発の堀川がピンチで崩れる。四球と連打で1点を返され、野島が四球で一死満塁。白井の三塁強襲安打で2点追加。交代した坂口から内山がレフトへ3ランでこの回一挙6点。

対する智弁も1点差を七回、三連打で2点差とし、突き放したかに見えたが、浜松商の最後まであきらめない粘りが上回った。


第4試合 県岐阜商 対 明徳義塾

④明徳、エース登板回避も全員でカバー!


明徳義塾 120 032 003 11

県岐阜商 200 000 000 2


明徳はエースの山本賢が肩痛でレフトでの出場。二年の山本誠が先発する。初回、明徳は先発を援護すべく、横田が右前打で出塁。送り、町田の内野安打で先制する。県岐阜商はその裏、岡村のエラーで一死二塁から富田の中前打で同点、清水の右中間三塁打で逆転する。しかし二回、明徳はすぐに四球と二つの捕逸、山本誠の犠飛で再逆転すると、中盤に打線が爆発する。五回、横田がレフトへソロ。続く岡村もレフトへソロ。史上15人目の二者連続ホームラン。さらに町田の三塁打でこの回3点目。六回には岡村、山本賢のタイムリー、九回にも武村、池の活躍でダメを押した。明徳は17安打の猛攻を見せた。


8月10日

第1試合 金足農 対 広島商

①スクイズ、2ラン!強打金農変幻自在‼️


金足農 210 010 002 6

広島商 011 000 010 3


一回戦屈指の好カード。4年連続出場、2年前の準優勝校で、春の中国大会優勝の広島商と、初出場ながら春の東北大会で圧倒的な打力を見せた春夏連続出場の金足農。試合は初回から激しく動く。初回金足農は先頭工藤がライト線二塁打。大山のバントが内野安打となり、水沢の左犠飛で先制。さらに二死二塁から鈴木の左前打で2点目。二回にも斎藤の右前打、原田のバント野選、佐藤のバント内野安打で無死満塁とし、一死後工藤のスクイズで3点目。広島商もその裏西川が中前打、山村の中越え三塁打で1点を返す。しかし続くスクイズを水沢がグラブトスでホームタッチアウトとして1点に抑える。三回裏、広島商は死球、盗塁、内野安打などで二死一、三塁から山村が二塁打。この後を水沢は抑え、三回終了3対2と熱戦となる。しかし五回、金足農は死球と内野安打で一死二、三塁から長谷川がスクイズで貴重な4点目。八回、広島商はまたしても山村の右中間三塁打で1点差と迫り、迎えた最終回。金足農は中前打の佐藤俊を送った一死二塁から、工藤がレフトラッキーゾーンに決定的な2ランを放り込み試合を決めた。水沢は8安打されたものの11奪三振と要所を締めた。金足農は強打を警戒する広島商の裏をかき、10度のバントを試み、スクイズ2回、内野安打2回を含む8回成功させて広島商を困惑させた。試合内容は完勝であった。


第2試合 東北 対 柳井

②序盤の猛攻、東北押し切って圧勝!


東北 232 000 010 8

柳井 100 000 100 2


東北は序盤で決着をつけた。初回、斉藤が二塁打。送って平尾のスクイズで先制する。さらに中根が左中間二塁打、阿部の中前タイムリーで2点目。二回にも渋谷の二塁打にスクイズ、四球、安打が絡み3点。三回にも阿相の二塁打を斉藤が二塁打で返すなどで計7点。柳井は初回、エラーで1点を返したものの、序盤の失点は大きすぎた。七回、松崎が好投の佐々木からライトへソロを打ったものの、八回にはまたしても斉藤に、この日三本目の二塁打を打たれ、8点目のきっかけとなった。斉藤の3二塁打は一試合での最多記録となり、東北は二回戦進出を決めた。


第3試合 益田東 対 日大一

③日大一、本盗を披露、益田東の追撃かわす!


益田東 000 002 000 2

日大一 010 020 00X 3


日大一は二回、村上の中前打で先制。五回には足を発揮。綿内の中前打と四球、暴投で二死一、三塁のチャンス。ここで足を活かしたダブルスチール!成功して動揺する野村から続く尾前が右前打って3点目を奪う。対する益田東も六回、三好、小野の連打とバントで一死二、三塁とし佐々木の左前打で1点差と追い上げる。九回も二死三塁と同点のチャンスをつくるが、踏ん張る渡辺の力投に抑えられた。


第4試合 PL学園 対 享栄

④PLの猛打恐るべし!清原3ホーマー‼️


PL学 124 021 022 14

享 栄 000 000 010 1


好ゲームが期待された実力校同士の対決。しかしPL学園の破壊力は予想をはるかに超越していた。特に凄まじかったのは清原。史上初の一試合3ホームラン。三回は一死一塁でライトへ2ラン。六回はソロ、九回にも2ランをレフトスタンドに放り込んだ。清原は4打数4安打6打点、2四球、塁打13と大当たり。PLは八回にも鈴木がソロを叩き込み、全員毎回の18安打(史上5度目)、投げてはエース桑田が3安打、奪三振11と圧倒。享栄は八回、川津の三塁打と川野の右前打で完封を免れるのがやっとだった。


8月11日

第1試合 上尾 対 徳島商

①競い合い、上尾が打ち勝つ!


上 尾 000 201 000

徳島商 002 000 010


上 尾 1 4

徳島商 0 3


池田を破って選抜に続く出場を果たした徳島商と、埼玉県大会で全試合2ケタ安打で打ち勝った上尾。激しい打撃戦が予想された。

徳島商は三回、二死から四球を機に3連続長短打で2点を先制。しかし上尾もすぐに四回、小川、高柳の連打で一、三塁とし高柳の二盗が捕手の悪投を誘いまず1点。さらに小林が同点中前打。勢いに乗った上尾は六回、井がライトラッキーゾーンへ勝ち越しソロ。しかし徳島商も八回、代打滝上がレフトラッキーゾーンに同点ソロ。試合は今大会初の延長戦に。十回、上尾は高橋が右前打。これで徳島商は黒上を代え司馬に。送って二死後、小川が追い込まれながら中前へ決勝タイムリー。上尾は左腕の池田が牽制を武器に、徳島商の機動力を封じ込んだことも勝利の要因となった。


第2試合 法政一 対 境

①無安打快投一転‼️延長の一発に泣く境・安部


鳥取境 000 000 000

法政一 000 000 000


鳥取境 0 0

法政一 1 1


劇的な幕切れとなった‼️法政一の岡野と境の安部の投げ合いは、予想外の展開となる。先発が不安視された境だが、安部が快投を演じる。なんと九回まで一つの四球のみ、ノーヒットに抑える。その走者も牽制で刺したため、きれいに三人ずつである。しかし法政一の岡野も懸命に耐える。わずか1点で大記録とともに勝利が見える境だが、その一本が出ない。岡野は七回には右ヒジに投手ライナーを受け、氷で冷やしながらの力投。境の安部はストレートとスライダーのコンビネーションが抜群で、法政一は全く打てないまま試合は進む。そして迎えた延長10回も、法政一は二死無走者。ここで3番末野が安部の初球スライダーを思い切りよく振り抜いた。打球は左中間ラッキーゾーンへ劇的なサヨナラホームラン‼️なんと、延長に入って初めて出た法政一の安打が、試合を決定した‼️力投安部、援護できなかった境打線にとっては無情な結果になった。


第3試合 松山商 対 高岡商

③投打に圧倒!四国の名門スケールアップ!


高岡商 000 000 000 0

松山商 111 413 20X 13


選抜では取手二相手に結果を出せなかった松山商だが、夏はエース酒井がひとり立ち。速球と大きなカーブのコンビネーションで高岡商打線を封じ込めた。打っては初回、今井がソロ。二回、三回にもソツなく点を重ね、四回には4長短打とバント、盗塁を絡め一挙4点を奪い勝負を決めた。松山商は全員毎回の19安打(史上六度目)の猛攻を披露。酒井もわずか3安打完封と高岡商を寄せ付けず圧倒した。


第4試合 沖縄水産 対 篠ノ井

④初陣対決、沖水に軍配!篠ノ井終盤崩れる!


沖縄水 100 000 120 4

篠ノ井 000 000 000 0


両投手が三振を奪い合う投手戦。沖縄水産の城間盛が11、篠ノ井の小出が12個とそれぞれ持ち味を発揮した。沖縄水産は初回、先頭の諸喜田が中前打。二死一塁から奥間が中越え三塁打。潰しかけたチャンスで先制する。ここから互いにチャンスを活かせないまま終盤七回、沖縄水産は諸喜田がソロを放ち点差を2点とすると、八回には四球を連発してダメ押しの2点。篠ノ井は沖縄水産の城間盛のタイミングを外すスローカーブに手を焼き攻略できず完封を許した。


8月12日

第1試合 都城 対 足利工

①都城圧倒‼️選抜4強の力、存分に発揮!


都 城 100 100 320 7

足利工 000 000 001 1


都城はエース田口の好投からリズムをつくり、足利工に勝利した。初回、都城は先制すると、四回に選抜でサヨナラ落球した隈崎が、レフトラッキーゾーンに名誉挽回のソロ。これでリズムをつかんだ都城は七回、山元のタイムリーのあと、矢野がレフトスタンドへ豪快な2ラン。八回にもバントを絡めた長短打でダメ押しの2点を奪った。足利工は九回、清水の右中間三塁打と松島の左前打で完封を免れるのがやっとだった。都城の田口は8安打されながらも14奪三振の力投を見せた。


第2試合 明石 対 北海

②古豪対決!がっぷり四つの延長戦の熱戦‼️


明石 000 002 100

北海 000 200 100


明石 02 5

北海 00 3


一回戦最後のゲームは大熱戦となった。

北海は四回、二死一、二塁から金山、中沢の連打で2点を先行。明石も六回、3安打を集めて同点に追いつく。七回、ともに1点ずつを上げた試合はともに譲らないまま延長戦に突入。10回、明石は一死満塁のチャンスを逃すも、続く11回、再びチャンスをつくる。先頭の高橋がライト線二塁打。一死後、南坂が左越えの勝ち越し二塁打。さらに二死後、岸本も右前打で2点目を奪う。北海の今野は181球の熱投も実らなかった。


ここまで一回戦です。

組み合わせで好ゲームと注目されたのは、開幕戦の桐蔭学園対福井商、明徳義塾対県岐阜商、金足農対広島商、PL学園対享栄でしたが、明徳、PLは圧倒的な強さを発揮しました。また奇跡の大乱戦といわれた試合が智弁学園対浜松商、打線の迫力が目についたのは松山商、都城でした。また最大の番狂せとしては大船渡対長浜があげられます。最後に投手として九回ノーヒットノーランを達成しながら、味方の援護がなく、延長戦になり、初安打がサヨナラホームラン、という悲運の安部投手を擁する境の試合が印象深い大会です。ますます盛り上がる二回戦を楽しみにしましょう。