今日は、第29回和漢医薬学会に参加してきました。
北里大学で行われ今回の内容について
気になるところをチェックしてみましょう。
まず、シンポジウム1では「和漢医薬学とがん」
北里大学東洋医学総合研究所臨床研究部の日向須美子先生の講演では
がん治療での再発・転移をいかに無くすかは
漢方薬に期待される役割の一つです。
そのなかで
麻黄湯がこの転移を防止するという研究発表がされました。
麻黄湯、特に麻黄そのものががん転移抑制するメカニズムは
c-Metを発現しているがん細胞においてc-Metチロキシナーゼ阻害作用を有し肝細胞
増殖因子により誘導されるc-Met及び下流のAktのリン酸化阻害し運動を抑制するということだそうだ。
つまり、ガン細胞があちこちに転移するには広がって行く必要があるのでそこの部分を
抑制すれば広がらない。転移しないということらしい。
これは、補中益気湯、十全大補湯、人参栄養湯の補剤ではない働きだそうだ。
それでは、抗ガン作用そのものについてはどうでしょうか?
次の富山大学和漢医薬学総合研究所病態生化学分野の
済木育夫先生のお話では
やはり補剤が有効であるが、それぞれ生体内の必要な働きがあるそうだ
例えば十全大補湯はマクロファージがないと効果が出ない。
補中益気湯はNK細胞
人参養栄湯はリンパ球がそれぞれ必要だそうだ。
そして、イリノテカンと半夏瀉心湯の併用では
ベルべリン(オウバク、オウレンなど)の働きで
肺がん同局性移植による縦隔リンパ節転移を抑制し
副作用の下痢が軽減できる話などもありました。
このイリノテカンがアメリカでは吐き気の副作用防止のために黄芩湯との併用治験に入っているそうで、
今は、こういった漢方生薬のなどの臨床治験がアメリカの方が始まっているという事も
今回の学会で
多くの先生方から大きな話題としてお話がありました。
また、最近では多くの病院やクリニックの先生方も認知症の方に抑肝散が出される事が普通にあります
が
ランチョンセミナーでは
㈱ツムラの五十嵐康先生と
医療法人慶明会けいめい記念病院 副院長の岡原一徳先生のお話でした。
五十嵐先生のお話では認知症の周辺症状(BPSD)のお話を中心に
どのように抑肝散の効果が上がるのかの説明でした。
特に注目されたのが
精神的興奮状態において
抗精神薬と違って、眠気がでない、ヤル気が出ないなどの症状が出ることなく
興奮状態だけを抑える事が出来ると言うお話でした。
岡原先生の話で特に心に残ったのは
高齢者タウオパチーについて
高齢化社会の年齢自体が上がってきて
85歳以上の高齢者の認知症が増えてきています。
つまり、若年性のアルツハイマーとは違い、βアミロイドが蓄積されていない認知症の場合に
現在のような治療ではなく、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の量を減らし
抑肝散を足していく方法などが必要なのではと提唱されていました。
ちなみに2日目は免役についてのお話がたくさん聞くことが出来ました。
この学会は漢方といっても臨床より基礎研究に近い感じです
つまり、化学的裏付けが漢方薬にあったら
西洋医学に親しんできた私達には受け入れやすいように思いました。