『地図にないカフェ』~美しい男の意地~ | 赤いてるてる坊主

赤いてるてる坊主

ウルトラマンと円盤生物を愛するブニョグ

 

ウルトラマンオーブ第22話『地図にないカフェ』(脚本:勝冶京子/監督:市野龍一)にブラック指令とノーバが登場しました。

 

 

控えめに言って最高だった。もはや冷静に客観的な評価はできません。赤星昇一郎さんのブラック店長=ブラック指令、最高だった。

 

僕は放送前に期待を高めることを基本的にしません。ガッカリしたくないからねw

しかし今回は赤星さん×市野監督だからまず外さない(※)だろうし、ノーバもブラック指令らしき人物も出る。

だから少なくとも僕には絶対に面白いはずだと期待値ハードルを上げまくったのに、それすらも軽々越えました。

 

(※)赤星さんはティガ「オビコを見た!」、コスモス「オヤジ星人」、マックス「怪獣漂流」などなど過去の円谷作品にも出演経験のある名バイプレイヤーです。
赤星さんと市野監督は過去にも「オヤジ星人」のベリル星人や、ブースカ!ブースカ!!の松土最円など個性的で記憶に残るキャラクターを作り上げました。

本作の巨大化したノーバがビルを覗き込むシーンで花束を受け取っていた人物が市野監督です。

 

 

 

 

■悪魔の惑星からカフェが来た

 

「カフェ★ブラックスター」のブラック店長とその相棒ノーバ。店長の胸のマークは…!?

 

かつてここは地球を侵略するためやって来た宇宙人たちで賑わっていた。

だが、宇宙人たちは地球に迫る脅威を恐れ、沈みゆく地球から次々と去ってゆく。

 

ブラック店長もかつては何度敗れようとも地球侵略の夢に挑戦していたという。

そんな彼も本日限り店を閉め、ノーバと共に地球を去ろうとしていた。

 

変わりゆく時代と老いた男の哀愁が涙を誘います。

 

『ウルトラゾーン』的な回と言えなくもなさそうですが、ピット星人のお姉さんと店長の微妙な関係?も匂わせつつ独特の空気が漂った僕好みのドラマです。

 

 

第9話『ニセモノのブルース』に登場した馬場先輩ことババルウ星人はかつて店長の戦友だった。

店長は「みんな逃げ出した」と語っていましたが、馬場先輩は今も地球のどこかで影ながらヒーローをやっているのではないかと思います。

ヒーローを目指す自分は戦友だった店長にはもう会えないとけじめをつけたんじゃないかな?

 

 

また、ウルトラマンオーブことクレナイ・ガイもブラックスターの客でありながら、調査に来たSSPの仲間たちにも教えない、今回は一歩引いたポジションでした。

回によって様々な顔を見せてくれるガイは過去のシリーズの主人公には無かった独特な魅力を持っています。これは演じる石黒英雄さんは芸達者ですね。

 

 

 

 

■夢を呼ぶ赤い暗殺者

 

 

店長が名残惜しそうにカフェを閉めると、突如ノーバが巨大化する。

 

「そうか、わかったよ、お前なにも変わってなかったんだな」

 

店長とノーバの関係は、ティガで赤星さんが演じたオビコと影法師を彷彿させますが、ノーバと影法師の決定的な違いは言葉を発しないこと。

もともと円盤生物は明確に知能がある頭のいい種族です。恐らくウルトラマンオーブに勝ち目がないことくらいはノーバにもわかっていたでしょう。

 

それでもノーバは、もう一度、相棒に地球侵略の夢を見せてあげたかった。一緒に夢を見たかった。だから立ち上がった。

想像ですがノーバの心境はこうだったのではないかと。

 

店長も相棒の心意義に答え、ノーバに吸い込まれるように合体、黒装束を身に纏い「ブラック指令」として地球侵略の夢に挑む。

レオのブラック指令は円盤生物を使役していたけど、この世界のブラック指令は合体して共に戦うのですね。泣かせる。。。

 

 

「ハイッ、私がブラック指令です!」

このポーズはレオの初代ブラック指令のスチール写真でお馴染みですね。

youtubeの公式配信では「オーブはますます面白くなるねぇ。レオも配信や円盤でチェック」とレオネタを仕込んだ広告を表示する徹底ぶり。

 

 

変身前のブラック店長は悲壮感すら滲んでいましたが、ブラック指令に変身するとコミカルな振る舞いになります。ノーバ対オーブも同様、どこかコメディタッチです。

 

今は老いたが、若い頃のブラック指令あんな感じだったのかも知れないと想像するとちょっと楽しいです。

 

或いは、初代ブラック指令のような全身黒ずくめの恐ろしい悪役を今の時代に真面目にやっても怖さを出し辛い、時代に合わないのかも。そう考えるととちょっと切なくなります。(赤星さんは悪役の演技も大得意ですが)

 

 

 

 

■夢よさよなら・・・

 

がんばれブラック指令!まけるなノーバ!

もう目を潤ませながら応援してしまった…

 

 

相手が顔馴染みのブラック指令とノーバであるせいか調子が出ない様子のオーブだったが、ノーバの意外な?強さに対抗するため、オリジンに変身しオーブカリバーを携える。

 

「やっと本気を出しましたね」

 

ブラック指令も本気のウルトラマンとの勝負が非常に厳しいこはとわかっていたと思います。だが、それに勝てなければ地球侵略の夢など叶うはずもない。オーブの本気を見てどこか嬉しそうです。

 

そして、ブラック指令とノーバはついに敗れた。夢に挑戦したノーバは花火となって華々しくも儚く散った。彼らの戦いに美しい男の意地を見ました。

 

ブラック指令から戻った店長が生きていたのはノーバが守ってくれたからでしょう。

ガイがウルトラマンのカードに掛けるお馴染みの台詞「お疲れさんです」がここで活きるのが上手いです。

 

「あんたのコーヒーを美味しいと言った奴らがいるじゃないか」

 

ガイの言葉を噛みしめるように頷いた店長はふっと姿を消した。

 

 

 

 

■運命の再開

 

「カフェ★ブラックスター」のコーヒーが忘れられないSSPの3人に朗報が届く。どうやらブラック店長は「ラーメン★ブラックスター」を開いたらしい。

夜は屋台を引いているかもね?納豆入りのラーメンもあったりして?

 

 

カフェに人間が紛れ込むのを迷惑そうにしていた店長でしたが、コーヒーを美味しいと言ってもらえた時はたとえ相手が人間でも嬉しさがこぼれていた様子でした。

店長は侵略の夢がとうとう叶わなかったこの地球で、新しい夢を見つけたのかもしれません。

 

こみ上げる笑みを思わず隠すガイが爽やかな後味を残す傑作エピソードでした。

 

 

…何から何までベタ褒めしてしまった。やはり冷静に客観的に評価することができませんw

好きなキャラクターを好きな役者さんが演じてくれる、こんなこと滅多にありませんよ。いい話を見させてもらいました。

 

 

 

12/21追記

ウルトラマンオーブのブラック指令とノーバにウルトラマンレオBGMをつけてみた動画をUPしました