国立文楽劇場:第115回会場25周年記念夏休み特別公演 | やじのブログ

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残された人生を精一杯生きる。
残り3ヶ月と宣告されてもう8年。

なかなか梅雨の明けない近畿地方です。
きょうなど熱いくらい、日差しもつよかった、でも梅雨明け宣言がでていません。


そんな中今日の午後から大阪に出てきました。
近鉄大和西大寺から日本橋まで電車で、
そこから徒歩5分ほどですね。


夏休みとはいえ平日。
ガラガラかと思っていたのですが、沢山の人が来られていました。
一部は「親子劇場」ということで、その名のとおり子供向けの演目、
そして文楽のみかたの解説もあるので、結構制服を着た学生と親子連れが多かったですね。


自分が見たのはまず二部の名作劇場「生写朝顔話」


やじのブログ-生写朝顔話


今まで何度も観たことのある演目です。
舞台が宇治→明石→浜松→嶋田宿(大井川)と移ってゆきます。
前半は間延びして退屈なのですが、
「浜松小屋の段」からおもしろくなってきます。
一番面白いのが「嶋田宿笑い薬の段」。


駒沢次郎左衛門(元阿曾次郎)は大内義興が本国へ帰る先ぶれとして
岩代多喜太とともに嶋田宿に逗留していますが、
岩代は駒沢を殺す機会を狙っています。
そこへ萩の祐仙が尋ねてきて、痺れ薬を混ぜた茶を駒沢に飲ませて
殺害しようと二人で計画。
その密談を立ち聞きした宿屋の亭主は、とっさの機転で痺れ薬の入ったお湯を
笑い薬の入ったお湯ととりかえてしまい、それを知らない、既に解毒剤を飲んでいた祐仙が
まずその湯で淹れたお茶を飲むのですが、当然笑い転げます。


その笑い方が人間国宝である竹本住太夫が、本当に上手に語るんですよね。
何種類の笑い方ができるんだ!


この段の前半(中)を豊竹咲甫太夫が語ります。
宿屋の下女お鍋・小よしと手代松兵衛とのやりとりも面白いんですね。

駒沢と岩代、そして亭主の噂話をしていた下女に松兵衛が横槍(亭主に告げ口をする)をいれ、くどくのですが、その時の松兵衛の科白
「いや、告げる告げる、告げてこますぞ。
が、何とそこが物も相談ぢゃ。
イヤこれお鍋。旦那へ告げるが嫌ならば、
松兵衛山の松茸とその片思いの鮑とを焚出しにしてくれるなら、
何もかも沙汰なしに済ます。どうじゃ、どうじゃ」


こんなん、放送できるのかな~。


そして三部はサマーレートショー「天変斯止嵐后晴」


やじのブログ-天変斯止嵐后晴


名前の通り、シェークスピアの「テンペスト」を元に作られた作品で、
平成四年に大阪の近鉄アート館(近鉄百貨店阿倍野店にあった劇場ですね。
もう閉鎖されてしまいましたが)で初演されました。
当然脚本は日本人の山田庄一氏が書き、
作曲は鶴澤清治さん。


演出が普段の文楽と違って、
緞帳が上がって、柝の音とともに定式幕がだんだんと開いて、
「とうざい~ただいまの段~あい勤めまする太夫~」
で義太夫が始まって人形が。なのですが、


真っ暗になった劇場の緞帳が上がると大きな琴、そして三味線が並んで、
嵐を現す演奏がはじまるんですね。
最初はその演奏で終わり。


新作ですから、太夫の語りにもいろいろいれごと(アドリブ?)があったり、
文楽人形が携帯電話を使ったり。笑える部分がいっぱいありました。


そして最期は阿蘇左衛門藤則の独り芝居。
劇場が真っ暗になり、阿蘇左衛門にスポットライトが当たって、
「これにて接写の身の上話はおわりましてござりまする。
方術の書も悉く焼き捨てましたれば、最早拙者には何の力も残っておりませぬ。
これからの拙者の行く末は皆様方のお心任せ。
私をこのまま嶋にお残しなさろうと、又懐かしい故郷の土を踏ませてやろうとも、
相成るべくは、皆々様のお情けと拍手を以って拙者奴も、
あの者どもと一緒に本国へお返しなされて下さりましょうなれば、
この上の喜びはござりませぬ。
付して願い上げまする。」


そして拍手の中に緞帳が下りて幕。


もしかしてカーテンコールありの芝居?などと思っていて何時までも拍手をしていたのですが、さすがそれはありませんでした。


たまには新作もいいものですが、やっぱり自分は義太夫物がいいです。





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