荒廃した惑星で、フィクスとフリーザが対峙してから10分が経過しようとしていたが、それは戦いというには余りにも一方的な状況だった。

フリーザはフィクスの顔面に連続で蹴りを入れ、その反動を利用して加速をつけた尻尾を叩きつける。

地面に着地したフリーザは後ろへ跳躍し、距離を取った。

この10分、ただひたすらにフィクスに攻撃を仕掛けるフリーザだったが、その拳その脚からは自身の鮮血が滴り落ちていた。

対するフィクスは10分もの間フリーザの猛攻を受けていたがその体には傷一つ付いてはおらず、何より恐ろしい事に彼女はその場から一歩も動いてはいなかっのだ。

フィクス「あれれ〜?もう終わり?…ほら、もっとガンバレガンバレ♥」

甘い声と身振りで煽るフィクスに、フリーザの中で何かが切れた。

ゆっくりとした速度でフリーザの体が宙へと上がっていく。

フリーザ「もう付き合いきれません…この星ごと…消す!」

天へ掲げたフリーザの人差し指から気の塊が生成されていく。

フィクス「止めときなさい、私は武装神姫っていうぷりちーなアンドロイドだから宇宙空間にでても死にはしないし、この星が吹っ飛ぶくらいはどうとでもなるもの。」

フリーザ「ぐ…く、その余裕な態度が気に食わないんですよ!!」

怒号とともにフリーザがデスボールを放とうとした瞬間、あらぬ方向から飛んできた気弾がフィクスへと着弾した。

フィクス「あら、ニューチャレンジャーかし…らッ?!」

気弾の爆発によって巻き上げられた土煙に紛れて自身に迫り来る薔薇色の刃を、咄嗟に躱すフィクス。

フィクス「へぇ、随分と早い復活ね。」

土煙が晴れ強襲者の姿が露わになる。

その正体は、白井だった。

フリーザ「白井さん、今彼女と戦っているのは私です…1度負けた貴方は引っ込んでいなさい!」

白井「ゴールデンになろうが何しようが貴方では勝てませんよ、フリーザさん。単にパワーを上げるだけではね。」

フリーザ「…貴方なら勝てると?」

白井「ええ。今のを見たでしょう?…今まで全ての攻撃を受けていた彼女が、次元を切り裂くこの鎌の一撃は避けた。」

フリーザ「…いいでしょう、そこまで言うのならお手並み拝見させてもらいますよ。」

白井「ええ。そこで見ているといい、私が彼女に勝つさまをな!!」

数メートルは離れていたフィクスの眼の前に、薔薇色の鎌を振りかぶった白井が現れる。

白井は瞬間移動を駆使し果敢に攻め込んでいくが、その振り下ろされる刃を巧みに躱していくフィクス。

フィクス「昔から言うでしょ?…当たらなければなんとやら…ってね」

白井「その余裕…何時まで持つかな…!」

白井の言葉通り、瞬間移動の変則的な動きに徐々に追い詰められたフィクスは、ついに背後を取られてしまう。


フィクス「あらら…フィクスちゃん大ピーンチ?」

白井「もらったぞ!!」

勝利を確信し鎌を振り下ろす白井。

フィクス「…なんちゃって♥」

まな板に思い切り肉を叩きつけた様な嫌な音が響き渡ると同時に、白井の体は凄まじい速度で後方へと吹き飛ばされ、いくつもの岩柱を破壊しながら彼方へと消えていった。

フィクス「…う〜ん、私ってば盛り上げ上手ぅ〜!」

フリーザ「今のは…」

どうやったのかは不明だが、白井が吹き飛ばされたのは自身がルケツピで受けた一撃と同じ、打撃できない程の至近距離での攻撃で間違いないと、フリーザは確信した。

フィクス「そうね〜…私ってば超優しいからそろそろ種明かしの一つくらいはしてあげる。…私の能力の一つはね、空間を繋ぐワームホールの生成なの。…こんなふうにね?」

そう言うとフィクスの姿が消え、直後に近くの岩柱の上に現れた。

なんてことはない、フィクスの足元にワームホールの入り口が、岩柱に出口が生成されただけのことだった。

フリーザ「…なるほど、その力で部下を消し、スーパーノヴァの位置を変え、私をこの星に移動させたということですか。」

フィクス「そそ。」

白井「なにを呑気に話をしている…!」

そうこうしている内に、フリーザの側へ白井が現れる。

かなり遠くまで飛ばされていたが、瞬間移動で戻ってきたのだ。

フリーザ「ありがたいことに、自身の能力の種明かしをしてくれるというのでね?…貴方の鎌も通じなかったみたいですし、聴く価値はあると思いますよ。」

白井「…良いだろう。」

フィクス「んふ。それじゃ続けるわよ。…で、攻撃を防ぐのに使ったのは空間を繋げるワームホールの前段階、空間をほんのちょっとだけずらしたワームホールを展開させたの」

白井「空間を…ずらす…?」

フィクス「この空間をずらしたワームホールに入ると、まるで境目のない鏡みたいにね、同じ存在が反対方向からきてぶつかっちゃうの。…面白いでしょ?」

フリーザ「つまり…気弾の類は自動で相殺されて直接的な打撃は自分で自分を殴っているということになる訳ですか…道理で妙な手応えだったわけです。」

白井「差し詰め、相殺ゲート…と言ったところか」

フィクス「相殺ゲート…良いわね、その名前!」

フリーザ(…ゲートそのものはもちろんですが、もっと厄介なのは…)

白井(…自身に攻撃が当たる寸前の位置にほんの一瞬だけ相殺ゲートを展開するその精密さとスピード、そして相手の攻撃を先読みする能力…)

フィクス「…ねぇ、白井ちゃん…だったわよね?…ちょっと聞きたいんだけど…」

白井「…何だ?(ちゃん付け?!)」

フィクス「…何時になったらダークザギちゃんは来るのかしら?…というか、ちゃんとそっちにメール届いてるわよね、貴方がここに来たんだし。」

白井「ええ、届いてますが…あのメールわざとああなっていたのではなかったのか?」

フィクス「…何のこと?」


……
………

<異空間、ハンター軍団拠点>

ディアボロモン「…どうしまシた?」

ダークザギ「…いや、それが…指定された宇宙の座標に来たけど…星がないんだけど?」

ディアボロモン「…ちょっと待っテくださいネ…アー…これハどうヤら文字化ケを起こしてるみたいでスね。」

ダークザギ「文字化け?!」

ディアボロモン「フリーザさンのコンピュータかラこちらへ送る際ニ次元ノ干渉を受けたせイでしょウ。」

ダークザギ「えーと…じゃあどうしよう?」

ディアボロモン「そうですネ…取りあえズ、似たような座標の宇宙ト星を計算し直しテ総当りするしかありませんネ」

ダークザギ「まぁ…それしかないか、その内また連絡が来るかもしれないしね。」

ディアボロモン「でスね…ざっト計算するンでちょット待っててくださイね。」

???「そういう話なら私も少し手伝ったほうがいいかな?」

ダークザギ「え?…あ、いいんですか?」

???「君の話に付いてきてただ待っているというのも暇だからね。」

………
……


フィクス「…文字化け?!」

白井「そうです。…お陰で苦労しましたよ、あちこちの宇宙と星を探し回ってね。」

フィクス「…あー…フリーザちゃんの船のコンピュータをハッキングして送ったのがいけなかったかしらね…急いでいたとはいえ次元の影響も考えて送ったんだけどなぁ…まぁメンゴメンゴ♥」

フリーザ「ちょっと待ちなさい!!ダークザギさんを呼んでたんですか?!私の船のコンピュータをハッキングして?!」

フィクス「そうよ?…あのままアンタが帰ってくれればよかったけど、流石にあそこまでされちゃあね、他に連絡手段もなかったから。」

フリーザ「…白井さんがここに来たのは少々不自然だとは思いましたが…そういうことでしたか。」

フィクス「…まぁ、あなた達二人には丁度良かったんじゃない?」

フィクスの言葉にフリーザと白井は怪訝な顔をする。

フィクス「ダークザギちゃんが来るまで、まだもうちょっと掛かりそうだし…それまで相手をしてあげる。…二人同時なら、ワンチャン…あるかもよ♪」

その言葉を聞いた二人は、大きな声を上げて笑い出した。

フリーザ「ホッホ…私がこの男と共闘…する理由無いでしょう?」

白井「ええ、そうですね…私達がするのは…」

金色と薔薇色のオーラが、それぞれの体から溢れ出す

フリーザ&白井「「どちらが先にお前を倒すかの…『競争』だッ!!」」

二人は叫ぶと共に全身に力を漲らせフィクスへと向かって行った。

〜tobeContinue〜