映画「捨てがたき人々」観てきた。 | East-C

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日々のツレヅレ事とか特撮の事とか猫とか趣味の事とか観に行った舞台の事とか。

今晩は、YAHOです。

7月8日、火曜日。
会社帰りにテアトル新宿で、映画「捨てがたき人々」を観てきました。
【映画・捨てがたき人々 公式サイト】
http://sutegatakihitobito.com/



20140708


や、6月頭の公開からずっと観たいと思ってたんだけど、ずっと観損ねていて。
いよいよ7月11日にテアトル新宿での上映が最終日になるので、慌てて観てきました(^_^;)ゞ
レイトショーだったから、なかなかね…会社終業から上映時間まで3時間近く空いちゃうからさ…時間潰しを考えると、めんどくさくなってつい後回しにしていた(汗)



この「捨てがたき人々」は、ジョージ秋山氏の漫画を映画化したもの。
脚本は秋山命さん(ジョージ秋山さんのご子息であり放送作家)、監督は榊英雄さん。劇伴音楽と主題歌は、榊さんの奥様、榊いずみ(元 橘いずみ)さん。
主演:大森南朋さん。ヒロインは三輪ひとみさん、その叔母に美保純さん。

監督の榊さんといえば、まず私的には「特命戦隊ゴーバスターズ」で黒木司令官を演じた俳優、なのですが…。(実写映画「魁!男塾」では伊達臣人も演じてらっしゃる)
普段は、胡散臭いルポライター役や犯人役や死体役やゲスい役や、とにかく昔から沢山の映画やドラマ作品に出演しているエキセントリック俳優さんである。
……と同時に、映画監督もすごく意欲的にこなしてらっしゃる。
「俳優が映画を撮ってみる、というのはよくある事。1本だけ、とかだったらね。それだと周囲も『役者が調子こいて片手間に監督なんぞやりがって』という見方をする。ただね、コンスタントに【撮り続けて】いたら、誰からも何も言われなくなった。継続って大事よ」――と榊さんご本人がアメーバのweb生放送で言っていたのが印象的。


榊さんの監督作品は、昔、「「GROW- 愚郎-」を観た事があって。
当時ハマってたボウケンブルーの三上真史がチョイ役で出てるってんで、DVDを買ったのね。そしたらこれが滅法面白かったというか引き込まれて。
また、榊監督のオーディオコメンタリが凄くて(とにかく喋る喋る!)、圧倒された記憶が。
その後もアグレッシブなネタに挑戦し続けている榊監督ですが、今回の「捨てがたき人々」も、もれなくアグレッシブ。攻めてます。
そして、2015年に公開を控えている「木屋町DARUMA」もまた…概要を聞いただけで「うわぁ…大丈夫かそれ…」ってな感じなので期待中。(笑)

【遠藤憲一主演!出版禁止の問題作「木屋町DARUMA」を榊英雄が映画化】
http://eiga.com/news/20140707/1/



さて、「捨てがたき人々」。
私が観に行った日は、「上映前に榊監督と武田梨奈嬢のミニトークショー有り」の日でした。
武田さんは、今回の映画には出ていませんが、上記「木屋町DARUMA」のヒロインです。
上映前ということで、お二人ともネタバレしないよう、トーク内容に気を付けながらw話していました。
武田さんほっそいなー。かわいいなー。
そして榊さん男前。
実は映画館に早く着きすぎて、ロビーでパンフレットを眺めてたんですが、そこへ榊さん登場!ロビーを横切り、奥の控えスペースへ入って行かれました。直に見ると、デカイなぁやっぱり。



観る前に漫画の方は読破済でしたが、いやまあ、何と言いますか、飄々とした漫画ですよね。“ジョージ秋山らしい”っちゃらしいのですが。

「なんだか、生きるのに飽きちゃったなあ……」
主人公は底辺で生きている、見た目も中味もゲス度120%(笑)の、狸穴勇介という男。
仕事をなくして、生まれ故郷の漁師町にフラリと帰ってくるけど、世間が狸穴に向ける視線は、“汚物”を見る目。
そんな中、弁当屋のバイトの「京子」(超ブスだけどイイ身体してるw)だけは笑顔を向けてくれる。
でもそれは、狸穴の為というより自分の為、というか…京子は新興宗教に傾倒していて、「自分の幸せ(笑顔)を掴むには、まず他の人へ笑顔をあげようね」的な事を信条としている人。
しかし、ナンダカンダで“ヤる”事しか考えていない狸穴に無理矢理ドウニカされてしまい、二人はなしくずしに同居を始め、やがて子供(息子)が出来て…。


酒を呑んでは暴力…の父親と、そんな夫と離婚する資金が欲しいから…と近所のオッサン達に毎夜体を売る母。そんな両親にろくに愛されず、棄てられて育った過去を持つ狸穴と、実は鬱屈したものを抱えている京子。(家族(母一人)とは上手くいっていない。いい歳をして、毎日のようにどこかのオッサンを家に上げては“ヤってる”母を、京子は軽蔑している。でも、そんな自分も結局狸穴と…というジレンマ)


底辺で生きている者同士がくっ付いて、一応「家族」という形ができて、《人並みの幸せ》というヤツが掴めたかに見えたけど、やっぱりそうは問屋がおろさない。
「家族」ができても、狸穴の本質は変わらず…幼女から婆まで“女(ヤる対象)”としか見られない性分、生い立ちからくる卑屈さと、ともすれば爆発しかねない暴力的な衝動を内に抱えている状態。
浮気(というか、狸穴とは元々心が通じ合っていたかというとそうでもなかったわけで、“浮気”というのも微妙?)に走る京子。

10才になり、嫌悪感丸出しで狸穴を無視し始める息子。

そんな息子に怒り、衝動的に殺しかけてしまう狸穴。


「愛してるって言ってみろ!ウソでもいいから言ってみろ!」
京子に対して手を上げ、激昂する狸穴。



“愛”って何だ。
自分は何で生まれてきたんだ。
何の為に生きているんだ。


そういう、本当にひとの原点的なところを抉ってくる映画でした。


「結局みんな、食べ物とセックスとお金の事しか考えていないのです。」(その合間に、ちょろっと政治の事とか仕事の事とか考えてるのです、っていう)
漫画の中でも、何度も繰り返される、こんな言葉たち。(すまん、今原作漫画が手元にないのでうろ覚え)
それを言っちゃあ身も蓋も無いんだろうけど、真理なんだよなぁとは思った。


他にも、京子の叔母でスナックのママである“あかね”と狸穴の関係や、狸穴が勤める事になる海産物下処理工場での「社長、その妻、従業員の女の不倫模様」とか色々詰まってるのですが、ちょっと書ききれない(^_^;)



以下、つらつらと感想メモ書き。


・原作の舞台は、名もない漁師町なのですが、この映画版の舞台は、長崎県の五島列島になっています。(榊監督が生まれ育った町で撮ったそうです)
でも海辺のひなびた町の感じは漫画そのままで、良い感じ。堤防の感じとか、そのまんまだ。
登場人物も、みんな長崎弁で喋ります。時々「え、今なんつった?!」ってなってました私(^_^;)ゞ


・濡れ場も大変多い映画で、観る人によっては「ポルノ映画じゃないの」と言われかねない作品ですが、それでも何故か「一昔前の日本映画にありがちな“暗い4畳半で延々とせくーすで刃傷沙汰上等”」的なジメーっとした感じがしないのは、ロケ地である五島列島の爽やか景色のせいだろうか…。


・大森南朋さんのおしりがステキ。三輪ひとみさんのおぱーいがステキ。役者さん達の脱ぎっぷりと喘ぎっぷりがステキ。振り切ってる。
漫画の狸穴は飄々としたゲスだが、大森さん演じる狸穴は、イケメンゲスだなぁ…(笑)
エロかったはエロかったけど、女優さんがみんな細いせいか、ジョージ秋山的「むっちり」度は低かった気がw


・漫画と大きく変わっていたのは、京子。
つかそもそも、三輪さんがかわいすぎて、「ブス」っていう設定、できないよね(笑)
それ故に、「ブス」の代替として「顔の痣」にしたのかと思っていたのだけれど。
個人的には、「顔の造作が悪い」って話と、「きれいな顔に痣がある」って話では、女性のコンプレックスとしては全く別の種類のものだと思うので、代替にはならないと思っているけど、原作通りの京子である必要もないわけだから、これはこれでいいのかな。
ただ、原作の狸穴は、京子に「このブス」とか「ブスのくせに」とか「いい女とヤりてぇなぁ」とか言うんですが、映画版ではさすがに「ブスブス」言ってないなあと思いました。
確かに最初は三輪さんが綺麗すぎるって事で、助監さんからこの案(顔に痣)が出たそうですが、他にも、舞台を五島に設定したが故に生きてきた「痣」設定、て面もあったのね…と目から鱗でした。
(昭和43年、九州で「カネミ油症事件」てのがあって、その主な症状が皮膚病変で…現在でも、私達世代(榊監督世代)の人で、顔や体に痣がある人が居るそうです(五島は被害者が多かったらしい)。そういった背景から、京子に痣があっても、それがリアルに“五島に住む人の姿”だよね、という事で(決して事件への批判とかそういう意図は無いけれども)採用されたんだって)
また、ドフトエフスキーの「罪と罰」のヒロインに憧れてる、という設定は、脚本の秋山さんがつけた、劇場版オリジナル要素とのこと。


・寺島進さん、本当に出番一瞬でワロタ
 寺島氏「俺、これだけの為に(五島列島に)呼ばれたの?」
 榊監督「うん」
映画を観ると、榊監督が語ったこの会話がじわじわくるwww



総じて、原作の気怠さや達観したような宗教臭さは軽減されていました。
これもどこかに書いてあったと思うのですが、俯瞰的な視点で進む漫画版に対し、映画版は登場人物の動きや心情に重きを置いた感じでメリハリもあり、エンターテインメントとしてすんなり観られるように作られていると思いました。


漫画と映画版は、もはや別物といってもいいかもしれません。

どっちがどう、というのは好みだと思うけれども。
1回しか観てないのでちゃんと消化できてないな。もう何回か観直したいな…(*´¬`*)