『湾岸ミッドナイト C1ランナー』続き | ゼロ・マイナス5分

『湾岸ミッドナイト C1ランナー』続き

『C1ランナー』を読まずに積んだまま休みなしで京都に無泊で行ってきたのは、多少『湾岸ミッドナイト』が絡んでいるんです。
復活祭の主催が三年前からチラシを持って挨拶に来てくれてましたが、そのたびに「いつか出たいと思ってるんですけどねー」とか言ってお茶を濁してたんです。
で今年も主催から手紙が来て、ふとエイジ編の「いつかは来ない」という北見さんの言葉と、大阪から出てきて車で寝泊りしてたというシゲさんを思い出して、「同人は損得度外視といいながら京都までいけないのは割に合わないと思ってるからじゃないのか」と。
気がついたら高速バスを予約してしまったわけです。
結果行って良かったですね。自分はまだ無茶がやれるとわかって。
オワコンになるのは作品じゃない、自分自身だと。
というわけで「まだイケる」という高揚感の中で読んだ、失速していく『湾岸ミッドナイト』は格別にさびしいものでした。
まさにしぼんでいく業界の話だったからです。

落ちていく星・荻島に対してもう一方の主役、星を継ぐものである瀬戸口ノブなのですが、こちらは中盤から加速度的に魅力がそがれていきますね。
湾岸シリーズの中でもナンバー1のチューニング集団であるRGOのニセステッカーを貼って中古のRX-7でGT-Rを蹴散らす、何も知らないシロートのコゾーとして登場したころはイリーガルな走り屋の世界のさらにイリーガルな存在として、これまでの湾岸キャラクターにナイ魅力を持っていたように思います。
完成されつつあった『湾岸』の流儀に染まっていなくて。

それが中盤から終盤にかけて、ノブの周りに説教好きなおっさんが集まってきて、気持ちの悪いことになっていくんです。おまえらショタコン☆ブギに改題したほうがいい。
このままクルマ氷河期の中で滅んでいくしかないさびしいおっさんどもにとって、若くて才能のあるノブが希望なのはワカるんですが、知らない間にGPS取り付けられて走行データをロギングされてるとか、もう絶滅危惧動物の扱いですよ。もう野生じゃない。なんだこの部活のOB会のような馴れ合いムード。
ノブが死なないように、事故起こさないように、あらかじめ先回りして教え込んで去勢してしまう、この扱いはまるで『湾岸』におけるケイや女のコのレイナですね。スレない永遠の処女ノブを毒さないためにおっさんどもは二年で離れろとか、そこまで心配して計算して動くことがソイツや自分にとって楽しいのか。

ノブのポジションを女のコにしたらよかったのか? とか思いましたが、ノブのもうひとつの平行線である椎名エリはさらにハコ詰めされて背景の一部になってしまったのでどうにもならないのでしょう。

最後はクルマで食っていけるように就職口のお膳立てしてもらって、なんというか高齢化した走り屋専門の介護サービスに就職したみたいで、そこまでしないと公道の暴走行為が成立しないならもう滅んでくれと思いますね。
自分の理想が自分の限界になってしまった荻島より、答えを教えられてしまうノブのほうがずっと早く行き詰りそうな気がします。
アキオが通った後を何も知らないノブがなぞっていく、ノブのストーリーはそういう感じです。
そういう二代目が残ったところであまり希望は感じられませんでした。

最後の最後に『悪魔のZ』がちょっとだけ出てくるんですが、あれに乗っているのはたぶん前作のアキオ本人ではないのでしょう。
荻島とノブのラストバトル前に「正月は首都高自粛な」とか誰かに言われたら、アキオだったら空気読まずに出てくるだろうし、ずっとZを追い続けるといっていたブラックバードこと島が湾岸を卒業してドイツ留学してしまうなど、あれは「三代目」のアサクラアキオなんじゃないかという思いがよぎるんですヨ。
先代アキオの妹えりこも兄の事故死を振り切るために留学してしまいましたし。
アキオが自分からZを降りることはない、とすればつまりそういうことでしょう><。