『レナ・セイヤーズの朝』その1 | Ноль минус пять минут

『レナ・セイヤーズの朝』その1

※……設定は漫画版、三巻と四巻の間を想定しています。


ゼロ・マイナス5分-挿絵1 「ふあぁ~あ」
 アリカちゃんは大きなあくびをすると、ほうきにもたれてウトウトとし始めた。立ったまま寝るなんて、これはもう立派な特技だな……。


 ガルデローベ学園では朝起きて身支度を済ませると、みっちり一時間掛けて学園内を掃除することになっている。これもオトメ修行の一貫なんだって。もちろん居候の身であるボクも例外じゃない。オトメになるわけじゃないけどね。ボクはもう慣れたけど、アリカちゃんは毎朝眠たそうだ。
「アリカちゃん、眠いんだったら掃くのはいいからチリとり持ってて」
 見かねたエルスちゃんが声をかけた。
「エルスちゃんはやさしいなあ……」
「甘やかしてはダメよ、エルス。座らせたら起きなくなってしまうわ。だいたいアリカは授業中も寝ているじゃない。眠りすぎよ」
 ニナちゃんが掃除の手を休めずに言った。厳しいだけあって、ニナちゃんは消灯時間が過ぎても夜遅くまで勉強しているけど、寝坊したことは一度もない。昨日も机に向って本か何かを読んでいた。
 でも、近頃ニナちゃんはため息をついたり、何だか元気がない。アリカちゃんほどじゃなくても、少しは休んだほうがいいと思うな。
「寝る子は育つってばっちゃがいってたもん……ニナちゃんは寝ないから育たないんだよ」
 アリカちゃんが半分眠ったままお決まりのセリフで反論した。

ゼロ・マイナス5分-挿絵2  ニナちゃんはムッとしたようだったけど、くるりと背を向けて掃除を続けた。
 いつもならケンカになるパターンなのに……。拍子抜けしたボクはエルスちゃんと顔を見合わせた。
 と、その時。
「ほうきは杖ではありませんよ、アリカ・ユメミヤ。しゃんとなさい」
 いつの間にかアリカちゃんの後ろに生活指導のミス・マリアが立っていた。
「はっ、はい――っ!」
 アリカちゃんは持っていたほうきを鉄砲のように小脇に抱えて敬礼した。
「おはようございます、ミス・マリア」
 ニナちゃんが挨拶して、ボクたちも続いた。
「掃除はアリカの分まで私たちがやっていますから」
「掃除の指導にきたのではありません。アリカ・ユメミヤ、学園長がお呼びです。すぐに学園長室に来なさい」
「……へ? 今ですか?」
「今すぐにです。わかったら返事をなさい」
「はいっ」
 ミス・マリアはそれだけ言うと、すたすたと校舎に向って歩きだした。
「……アンタまた何かやったの?」
 ニナちゃんが眉をひそめて小声でアリカちゃんに訊いた。
「うーん、わかんない」
 アリカちゃんは腕組みして首をひねっている。いつもセットでお説教されているボクにも心当たりはない。大体怒られ済んでいる……と思う。
「とにかく早く行ったほうがいいよ。掃除道具はボクが片付けておくからさ」
「ありがと! マシロちゃん、やっさしい!」
 アリカちゃんはミス・マリアの後を小走りで追いかけていった。(つづく)その2に進む≫