エアル名作劇場『幸福の王子』1
エアルのあるところに、とても美しい街がありました。無駄なく計画的に整備された街並みは素晴らしく、表通りにはゴミ一つ落ちていません。
その美しい街で最も美しいと評判なのは、何をおいても「幸福の王子」でした。王子は街の中心の、最も高い場所に居りました。
美しい王子は街の人々の自慢でした。
「いや、まったく美しい」市長が王子を見て言いました。
「もっとも美しさなど何の役にも立たないがね」彼は夢想家ではありませんでした。
「こんな世の中でも、幸福な人があるというのは奇跡だ」絶望した男が王子に向って言いました。
「まるで天使みたい」
綺麗な赤い服に白い前掛けをつけた子供たちが、校舎から出てきて言いました。
「なぜ天使のようだとわかるのです。見たこともないのに」教師が言いました。
「でも、夢で見たことあるもの」生徒が答えました。すると教師は眉をひそめ厳しい顔つきになりました。子供が夢に浸るのは教育上よろしくないと考えていたからです。
ある晩、街に1羽のツバメが飛んできました。
「やあ、遅くなっちゃった。今晩泊まるところを探さなきゃ」
ツバメは柱の上にそびえる金ぴかの像を見つけると、像が差し出している掌に止まりました。
「へへへ。こりゃちょっとしたスイートルームだね」ツバメは掌から街を見まわしてつぶやくと、翼をたたんで眠ろうとしました。
その時、大きな水の粒がツバメの頭に落ちてきました。
「冷たい!」
ツバメは飛び起きて辺りを見回しました。
「不思議! 雨も降っていないのに雨漏りするなんて」
また、もう一滴落ちてきました。
「雨除けにもならないんじゃ、全く像なんて何のためにあるんだろ」
掌から飛び立とうとすると、もう一羽のツバメが飛んできました。
「遅いと思ったら、こんなところで道草食っていたのね。みんなもう先に行ってしまったわよ」
「お弁当探してたら遅くなっちゃって。それより変なの、雨も降ってないのに雨漏りがするの」
「何バカなことを……冷たい!」
「ほらね」
「かわいそうに……」
頭の上で声がしたのでツバメが見上げると、黄金の像が両目を涙でいっぱいにしていました。(つづく)

