バスの時間の間隔が長く待ち時間が長いので、駅から歩いて目的地に向かう。

 

 30分ほどで着いた。この変わったデザインの美術館に入る。これを見て誰の美術館か分かる人は美術通かもしれない。

 

『ダリ劇場美術館』

 こちらが美術館の入口。ダリはフィゲラスの出身だった。

 

 

 ひっくり返った船から雨の雫がぶら下がっている。

 

『雨降りタクシー』

 この日は本当に雨が降っていた。

 

 

 中央の壁画がリンカーン大統領に見えるのには、誰も異存はないだろう。

 

 これを少しアップにすると、中央には女性の裸体が描かれている。

 

 左下にリンカーの肖像も見られる。

 

 これはダリの妻のガラのヌードだ。ダリにとってのミューズであり、彼女をいろいろな場面で描いてきた。ガラはダリより10歳年上で、フランスのシュールリアリズムの詩人、ポール・エリュアールの奥さんだった。エリュアール夫妻がダリの元を訪れると、そのときにダリとガラは肉体交渉を持ってしまったという。そのまま同棲生活が始まり、3年後ガラはポールと正式に離婚し、さらに2年後ダリと結婚した。

 ダリと結婚してからも、ガラは性衝動の強い人で若い芸術家が好きで、いろいろ浮名をならし、晩年になってもその傾向は治まらなかったという。それはダリの心配の種でもあった。この美術館だけでもガラの絵は何点もある。

 

 

 

         

          『球体のガラティア』

 

 

 ダリは1982年ガラが亡くなると「自分の人生の舵を失った」と言ったという。ダリは翌年を最後に生涯(1989年没)絵を描くことはなくなった。

 

 暖炉、椅子と壁には写真が飾ってある。

 

 ダリは「子供たちが退屈するような美術館は作りたくない。ダリ・ランドは新しい発見への旅であり、魔法の国、神秘の国にしたい」と友人に語ったという。

 

 有名な『記憶の固執』の巨大なタペストリー。

 元のこの絵は24.1cm×33㎝という小ささだ。

 

 

 

ちょっと危ない版画!

 

 巨大な風景の中に右下に小さな子供が描かれているが、この絵も実物はとても小さい。ダリの圧倒的な技巧、筆力による産物だ。 

 

 

 

 何か違和感を感じるだろう。絵の中のダリはモデルの後ろ姿を描いている?

 

 ダリはドン・キホーテが好きだったようだ。稚気満々たるダリは自分を現代のドン・キホーテだと思っていたのかもしれない。

 

 大作はないがドン・キホーテを主題とした作品が幾つかあった。

 

 

製作中のダリ。

 

『十字架の聖ヨハネのキリスト』 

 これはなかなかの大作で、ダリは「夢ででてきた宇宙がヒントとなって、この絵が生まれた」と言った。

 

『パン籠』

 ガラがダリの絵の中で一番好きだったという絵だ。上掲のキリストと同じ部屋に展示してある。

 

 リアルが突き抜けて、シュールな感じさえする。

 

 ダリの希望で遺体はこの美術館の地下室に埋葬され、死の直前まで最も大切にしていたものは、ガラがくれた小さな木のお守りだったという。

 

 このあとバルセロナに戻った。