劇場の場所を確かめたあと、簡単な夕食をとる。ピカソ美術館と同様に前面道路の幅に比して建物が大きいので、いいアングルで外観を撮ることができない。

 

 

 軽く食べておいて、音楽堂に向かうことにした。友人を誘ったが疲れているので帰るとのことだった。フラメンコほど強く誘わなかった。当日券だといい席がないのが目に見えているからだ。

 

『カタルーニャ音楽堂』

 一般にはアールヌーボーとして知られている19世紀末芸術は、スペインではモデルニスモと呼ばれ、バルセロナがその中心だった。ガウディのほかに、この音楽堂の設計者モンタネールなどがその代表者だ。モンタネールの設計では、この音楽堂と『サン・パウ病院』が世界遺産になっている。

 

 では中に入ってみよう。

 

 以前に書いたが本当は半年以上前に世界的ピアニストのポリーニの演奏会を予約しておいたが、2ヶ月ほど前にポリーニが病気で演奏会が中止になったので返金しますと主催者からメールで連絡があった。それで慌ててこの公演を予約したが、もう平土間のいい席は満席になっていた。それでも聴かないよりいいと予約した。しばらくするとポリーニ死去のニュースをNHKが報じた。

 

 

 大ホールの天上や壁は装飾タイルとステンドグラス、彫刻で覆われ、煌びやかな過剰とも思われるほどの装飾は宝石箱の中に入ったようだ。

 バルセロナには別にオペラハウスがあって、本来はオペラの公演はそちらのほうが適していると思われる。この劇場はそれほど大きくなく、コンサートホールといったほうがいい。

 有名なスペインのチェロ奏者、パブロ・カザルスもここで演奏した。

 

 オペラ劇場ではないので演奏形式もかなり変則だった。普通はステージの前にオーケストラピットがあるが、それがないので舞台後方にオーケストラの席が見える。オペラはその前で演じられる。演奏会形式のオペラかなと思ったがそうでもなかった。

 

 

 

 

 

 有名な天井のシャンデリアというかステンドグラスは巨大な雫となって落ちてきそうだ。

 

 私の席から撮った写真。2カ月前の予約だと後方斜め後ろの席しか残っていなかった。

 

 

 

 外へ出るとすっかり暗くなっていた。スマホの電池が切れていて地下鉄の駅が分からなかったが、どうにかなると大して不安も感じなく、広い幹線道路を余韻に浸りながらぶらぶら歩いていたら、やがて地下鉄のマークが見えてきた。道に迷うこともなくホテルに戻ることができた。

 

 『トゥーランドット』の中の「お聞きください王子様」と「氷のような姫君の心も」。素晴らしいマリアカラスの歌唱が残っている。

 

「お聞きください王子様」

 

「氷のような姫君の心も」

 

 カザルスのバッハ『無伴奏チェロ組曲第一番』前奏曲。

 バッハの無伴奏チェロ組曲6曲はたんなる練習曲とみなされ忘れさられていたが、カザルスがその素晴らしさを再発見した。いまやチェリストの聖典とされ、別の楽器でも演奏されるほどになった。