ルーヴル美術館の有名な大階段だ。

『サモトラケのニケ』

 有翼の勝利の女神ニケが船の舳先に舞い降りた場面が彫られている。頭と手がないがミロのビーナスと同様にこのままの姿形で非の打ち所がない。紀元前190年頃、ヘレニズム時代の作品でサモトラケ島で発見された。

 女神ニケはスポーツウェアメーカー、ナイキの社名の由来となっており、ロゴはこの像の翼をイメージしたものだ。

 

 ハンス・メムリングの三連の祭壇画『キリストの復活』。左翼『聖セバスティアヌスの殉教』、右翼『キリストの昇天』。

 

 同じくハンス・メムリングの三連の祭壇画『エジプトへの逃避行中の休息』。左翼『洗礼者ヨハネ』、右翼『マグダラのマリア』。

 

 出入り口左側の小さな肖像画に注目していただこう。

 

デューラー『自画像』

 若々しく自信に溢れ、挑むような表情をしている。私の好きな作品だ。

 

 

ホルバイン『ロッテルダムのエラスムスの肖像』

 世界史の教科書にも載っている作品だ。ネーデルランドのルネサンス期の人文主義者、神学者、著書『痴愚神礼賛』が有名。厳格な学者の姿がよくとらえられている。顔や手の表現だけでなく背景のカーテン、服装などの表現も秀逸だ。

 ヘンリー8世、トマス・モア、エラスムスなど王侯貴族、学者の肖像を冷徹な写実的手法をもって描いた。

 

ヤン・ファン・エイク『宰相ロランの聖母』

 ルーヴル美術館で一番見たかった作品だ。小さな作品だが、超絶技巧の細密画で、時間のたつのを忘れて見入ってしまう。

 

 

 

 宙に浮かぶ天使によって戴冠を受けている聖母マリアが、ブルゴーニュ公国の宰相ロランに幼児イエスを見せている。遠くの風景まで恐ろしく緻密に描かれている。眼下の街は架空の都市のようにも見えるが、ブルゴーニュのオータンという都市らしい。

 ファン・エイクは神の目を持つといわれた。イエスがオジサンのような顔をしているところも面白い。

 神は細部に宿る。私の好きな言葉で、私の芸術観でもある。

 

 私の好きなルーカス・クラナッハの『風景の中のヴィーナス』。小さな作品でデフォルメされたヴィーナスが可愛らしい。帽子は当時の宮廷で流行った帽子らしい。写真では分かりにくいが、素っ裸ではなくレースを羽織っている。

 

 ヴェネチアを描いた2作。ベラスケスやデューラーなど、ヨーロッパの画家たちはイタリアへ留学して絵画修行をした。

 

 

ラトゥール『ダイヤのエースを持ついかさま師』

 17世紀ヨーロッパでは「賭博」、「飲酒」、「淫蕩」は三大悪徳とされたらしい。左のカードを持った男が「賭博」、次の酒の入ったグラスを持っている女が「飲酒」、肌を露わにしている目つきの悪い女が「淫蕩」を表している。同様の主題はカラバッジョの作品などにも見られる。

 

ラトゥール『大工の聖ヨセフ』

 ラトゥールの代表作で、ただの日常を描いた風俗画に見えるが、題名をみるとイエスの父親大工のヨセフとその子供イエスということになる。子供の手元を見てみよう。

 

 蝋燭の炎に指が透けて見えている。ラトゥールの得意な表現である。

 

フォンテーヌブロー派の『ガブリエル・デストレとその妹』

 フォンテーヌブロー派というだけで作者は不詳、ユーモラスなようなエロチックなような作品だ。モダンな感じもするが、1594年頃の作品だという。

 

 静物画の大家、シャルダンの静物三作。磁器の光沢、瑞々しい果物、ガラスのグラスなどシャルダンならではの素晴らしい作品だ。

 

 

 

ヴァトー『ピエロ(ジル)』

 等身大の存在感のある絵だ。人を笑わせるピエロであるにもかかわらず、憂いのある表情をしている。

 

ヴァトー『シテール島の巡礼』

 人生を憂いなく朗らかに肯定的に描いたロココの作品は俗っぽいようにも思えるが、実際の絵は素晴らしく美しいし、何よりも幸福な気持ちにさせてくれる。

 ギリシアのシテール島は、古代のギリシア神話では愛の女神ヴィーナス (アフロディーテ) が上陸したとされ、ヴィーナス崇拝の中心ともなっていて、独身者が巡礼に行けば必ず良き伴侶が得られるという。

 

ドビュッシーの「喜びの島」はこの絵から着想を得た。


ブーシェ『オダリスク』

 あられもない肢体の随分エロチックな作品だ。オダリスクは、オスマン帝国においてスルタンなどイスラム君主のハレムで奉仕する女奴隷のことだ。オダリスクはアングルの『グランド オダリスク』など、画家のオリエンタリズムの主題として好まれたという。

 ブーシェは私の好きなポンパドール夫人の肖像画でも知られている。

 

 下段右から二番目にある絵。

 

フラゴナール『アンヌ・ルイーズ・ブリヨン・ド・ジュイの肖像』

 豪華な衣装を着て、瑞々しく輝くような美しさ、愛らしさ、人生の最高の時を生きている。

 

 肖像作品を多く挙げたが、作者もモデルも誰一人としていまは生きていない。

 

プッサン『我アルカディアにもあり』

 三人の牧人が石棺の文字を指で追って読んでいる。右に立っているのは運命の女神だ。「我アルカディアにもあり」と書かれている。

 アルカディアとは地上の楽園のことで、我とは「死」のことだ。楽園にも死があり、その運命から誰も逃れられない。

 

 窓の外を見ると急速に夕闇が迫っている。

 

 

 

 

『カルーゼル凱旋門』

 

『エッフェル塔』