「六義園」から巣鴨はそう遠くない。道順が複雑だったらタクシーで行くしかないが、スマホで調べると一度曲がるくらいで簡単行けそうだったので歩いて行くことにした。途中高級住宅街なのか立派なお屋敷が何軒も見られた。

 

 この店は15年程前、仕事関係で付き合いのあった社長のTさんがこの近くに住んでいたので時々連れてきてもらっていた。六義園のあとは銀座か新橋に戻るつもりだったが急に思い出したのでこの店にした。店の構えも変わりないようだった。

 店はまだあるとは思ったが、寿司屋の親爺までいるとは思わなかった。その時もけっこう歳に思っていたので、失礼ながらもういないと思ったのだ。親爺はそれほど変わりのない姿で寿司を握っていた。老けて見えただけで案外若かったのかもしれない。店の内部も小奇麗で昔と変わりないように思われた。

 以前Tさんと時々来たことを話したら、最初は思い出せないようだったがしばらくして思い出してくれた。Tさんの奥さんと同郷だという話までしてくれた。奥さんがお医者さんの家系で俺とは身分が全然違うということまで言っていた。最近はあまり見かけないので奥さんにまた来てくれるように言っておいてくださいとのことだった。

 

 中トロ、赤貝、青柳。

 

 私の大好物のサザエのつぼ焼き。この味もTさんから教わった。

 

 ホタテ、タコ、コハダ。

 

 鯛、ヒラメ。

 

 これも私の好きな穴子の白焼き。

 

 久々に「蛇の目」に来ていろいろな思いが蘇ってきたが、言葉には言いつくせない。十数年も前に「蛇の目」に来なくなってしまったのは、Tさんが亡くなってしまったからだ。