村上和雄著「生命のバカ力」(講談社α新書) | 城陽発☆くまちゃんのダイエット&読書部屋

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生命のバカ力―人の遺伝子は97%眠っている (講談社プラスアルファ新書)/村上 和雄

¥924
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 村上和雄さんの著書の2冊目。「生命のバカ力」というネーミングが粋です。

「火事場のバカ力」という言葉があるように、人間には、日常では考えられないような力を発揮するときがあるーーそれは、ふだんは眠っている遺伝子がONになり、眠っている力を呼び覚ます。
このように、人間の遺伝子は97%は眠っており、わずか3%しか使われていない。では、どうすれば、遺伝子を意識的人間の能力や生き方の幅を広げるために、ON・OFFをコントロールできるようになるのか?
 そのことを、著者自らの体験を赤裸々に綴りながら、遺伝子工学とは何か?というやや専門的な問題への解説もわかりやすい言葉で説明してくれているのが、本書です。

 僕が、心に残った箇所を引用して紹介します。

 遺伝子の世界は、踏みこめば踏みこむほど、すごいものだと感じてしまいます。
 私たちの肉眼では見えない小さな細胞の核という部分におさめられている遺伝子には、たった四つの分子の文字の組み合わせであらわされる三十億もの膨大な情報が書かれています。その文字もAとT、CとGが、きれいに対をなしています。そして、ほかでもない、この情報によって私たちは生かされているのです。
 もちろん、人間だけではありません。地球上に存在するあらゆる生き物、カビなどの微生物から植物、動物にいたるまで、少なく見積もっても二百万種、多く見積もると二千万種と言われていますが、これらすべてが同じ遺伝子暗号によって生かされているのです。
 こんなことがあるものか・・・・・・とも思いますが、しかし、現実にあるのですから、否定のしようがありません。
 こうした奇跡的な現実を前にしたら、どうしてもサムシング・グレートのような存在を想定しないわけにはいかなくなります。
 サムシング・グレートとは、具体的な形を提示して、断言できるような存在ではありません。大自然の偉大な力とも言えますが、ある人は神といい、ある人は仏と言うかもしれません。どのように思われても、それは自由です。
 ただ、私たちの生命体の大本にはなにか不思議な力がはたらいていて、それが私たちを生かしている、私たちはそういうものによって生かされているという気持ちを忘れてはいけないと思います。
 私たちがいくら気力をふりしぼってみても、遺伝子のはたらきが停止すれば、一分一秒たりとも生きてはいられません。その私たちが百年前後も生きられるのは、大自然から、はかり知れない贈り物をいただいているからなのです。(本書227~228ページ)


 神や仏を信じる信じないは、個人の自由です。サムシング・グレートというのは、個々人が自由に解釈していいものだと、僕は思います。
 しかし、脳という思考する物質をもつ人間を生み出すところまで進化してきた大自然の力というものは、誰もが否定できないこと。その大自然の壮大な営みに敬意を払い、それを守り未来につないでいく、ということは、地球環境の破壊の危機が地球的な規模で問題になっているだけに、とても大切なことではないでしょうか。

 それから、長くなって恐縮なのですが、もうひとつ、引用したい箇所があります。

 それは、「いまここに生きる価値」という最終項です。

 遺伝子の世界を見ていると、私たちが生きて存在していること自体が、驚異的なことに思われてきます。
 私たちは約六十兆の細胞の集合体です。細胞が集まって高度な秩序をもつ器官や臓器をかたちづくっています。
 たとえば腎臓の一個の細胞をみると、腎臓の役割をはたすためだけの遺伝子がONになっていると同時に、腎臓という臓器の一部を形成し、さらにほかの細胞と協力して、腎臓という臓器全体を成り立たせています。
 これは、会社勤めのサラリーマンのようなもので、一人の社員は会社の営みの一部分を担っていますが、会社に隷属しきっているわけではありません。彼には個人的な生活もあります。
 細胞も同様で、腎臓の細胞でありながら、それ自身に個性があり、臓器の中で自主的、選択的にはたらいているのです。これは部分である細胞が、全体としての性質もそなえていることを意味します。
 これらのことは、細胞と臓器の関係だけでなく、人間と社会、人間と地球、ひいては人間と宇宙との関係についても言えるのではないでしょうか。私たち人間は、一人の人間でありながら、全体としては宇宙の一部でもあるということです。
 そう考えると、いまここに生きていられるだけでも価値のある、ありがたいものだと思われてきます。
 中にはそう思わない人もいるかもしれませんが、そう思ったほうが楽しいじゃないですか。そして、感謝して生きるとは、そう思って生きることにほかならないのです。(本書231~232ページ) 


 この一文には、中学生のころ読んだ、吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるか?」(岩波文庫)にある、「網の目の法則」にも通じる、人と社会の関係についてのあり方が示されていますし、思考する臓器である脳をもった人間が、自然を支配するのではなく、自然の一部として、自然との共生をはかる力を発揮すべき時代が21世紀である、という僕自身の時代認識とも一致します。

 さらに、村上和雄さんの著作をよみすすめていきます。

僕なりにランクをつけています。
村上和雄著「生命のバカ力」(講談社α新書)★★★★☆


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