国家統合情報省の新設 イスラエルの情報機関モサド 戦前日本の情報機関 | 『日本史編纂所』・学校では教えてくれない、古代から現代までの日本史を見直します。

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従来の俗説になじまれている向きには、このブログに書かれている様々な歴史上の記事を珍しがり、読んで驚かれるだろう。



国家統合情報省の新設

イスラエルの情報機関モサド


日本の情報機関として有名なものに内閣官房の内部組織で内閣情報調査室(内調)がある。
内調は主に情報の集約やオシントを行っている。またその他の情報機関として、警察庁警備局(公安警察)、外務省国際情報統括官組織、防衛省情報本部、法務省公安調査庁、海上保安庁警備救難部などが挙げられる。

(注)オシントとは
OSINTとはオープン・ソース・インテリジェンス(open source intelligence)の略称です。
これは諜報活動の一種で、一般に公開され利用可能な情報を情報源に、機密情報等を収集する手法を指します。
一般に公開され利用可能な情報とは、合法的に入手できる情報で、トップに対するインタビュー記事や企業のプレスリリース、書籍、インターネット情報等が挙げられます。これらを合法的に調べて分析することにより、
一見、断片的なデータから、意味を持った情報が得られる場合があります。


日本の情報機関において特徴的なのは、警察(公安警察)が人事面で優勢である点である。日本の情報機関における取りまとめ的な位置づけである内閣情報調査室には警察官僚やノンキャリアの警察官が数多く出向しており、
トップの内閣情報官は創設時から警察官僚が代々務めている。また、外務省国際情報統括官組織、防衛省情報本部、公安調査庁、海上保安庁警備救難部にも警察官僚が出向している。
一見しても日本の情報機関は、バラバラで情報の共有ができていないのが判る。これが情報貧国とか、スパイ天国と云われる所以なのである。
従って日本も、アメリカの、CIAやFBIの様な、強力な捜査権、逮捕権を持った「国家統合情報省」の新設が急がれる。何故なら、

武漢病毒悪性肺炎(新型コロナウイルス)の蔓延、尖閣諸島への海からの侵略、サイバー攻撃による個人、企業情報の略奪、経済侵略、中国や韓国企業による土地や水資源の買収、
と日本は攻撃されまくっているのが現状だからである。
日本は、スパイといえば卑しい仕事と思っている人間が多い。しかし、スパイ先進国、イギリスやアメリカでは高校、大学在学中の俊秀をリクルートして、情報専門家(分析官、特別捜査官)として育成している。
日本でも旧陸軍中野学校のような、プロ集団養成機関を設立する必要がある。この際慎むべきは、警察、公安調査庁、外務省などからの寄せ集めは厳禁である。
何故なら、縄張り争いで組織の運営に支障をきたすからである。
この組織は前記オシントは勿論大切だが、諜報、防諜、謀略機能も持たせなければ意味はない。
スポーツ庁や天下り温床の各種社団法人の全廃で予算は賄える。


さて、世界には有力な情報機関がいろいろある。ロシアのKGB、アメリカのCIA、英国はM16(SIS)等は有名である。その中でイスラエルのモサドは世帯こそ最小だが、情容赦のなさと効率のよさでは群を抜いている。
暗殺も数多くやってきたが、その実行部隊となっだのは、ヘブライ語で"剣”を意味する"キドン”という語を冠した三つのキドンーチームである。
その隊員"キドニム”と呼ばれている。彼らは(女もいる)形式上、正規軍の師団に所属しているが、あくまでも敵国に深く潜航して冷酷非情に鉄槌を下す。しかし、モサドにも、お手盛りとはいえルールがある。
そして、暗殺には二つの範疇がある。一つは"作戦上の必要”から実行されるもので、予期せぬ緊急事態にみまわれて味方の生命にかかわる作戦が危殆に瀕し、
その原因となった人物をすばやく且つ永遠に除去しなければならない、といった場合がこれに該当する。

こうしたケースの場合、工作管理官は任務全体を危険に陥れている敵対者を"始末”、即ち殺す権限を与えられ、テルアヴィヴの上司に支援を仰ぐことができる。
 もう一つの範疇はすでに暗殺(処刑)リストに載っている人間を処分する場合である。
このリストは二か所に存在する。そこは首相専用の金庫とモサドの長官の金庫である。新任の首相は必ずこのリスト、その時期によって差はあるがだいたい30から80の名前が記載されている。

だから、首相は必ずこのリストに目をとおすよう求められる。そして首相はそれぞれの名前について検討して、"もしも、あるいは、何々の場合は”という条件つきでモサドにゴーサインを出すか、
モサドが独自の判断で新しく暗殺を実施するときは必ず事前に自分の意見を求めるよう主張するのが普通である。どちらにせよ、暗殺命令には首相の署名がなくてはならない。
アメリカ映画では、出先の暗殺者は、CIA外部組織に下請けさせている内容がよく見られる。
あの場合でも、大統領は直接命令しないが、暗黙の許可は出しているのである。その点イスラエルの首相は「直接暗殺指令者」としての過酷な責任を負っている。

日本も、北朝鮮に自国民を拉致され、全く取り返す意思も能力もない現状をどう見るのか。
歴代総理大臣は口先だけで全く責任を果たしていない。北の残酷な金正恩を特殊部隊によって、極秘裏に拉致や暗殺を命令できるような剛直で正義感旺盛な首相は今までも全く見当たらない。
何しろ、占領軍、アメリカに押し付けられた憲法を70年以上守り続けた、平和ボケした日本国民である。彼らを覚醒させ、中国や北朝鮮に「戦う姿勢」を取らせるのは至難の業である。
しかし、首相は三軍の最高指揮官で、集団的自衛権発動の際は、自衛隊員を死地に送らねばならない。
確固たる愛国心、国民愛に溢れた精神と、覚悟と責任感の重圧に耐え、命令できる首相でなければならない。
それには、やはり強力な情報、諜報、謀略、防諜機関が絶対必要なのである。



さて、イスラエルのモサドでは、大まかにいって、暗殺リストに記されている名前は三つに分類できる。
第一のグループはいまだに罰を免れている元ナチスの高官であるが、この類はもうほとんど生存していない。以前、イスラエルは一大作戦を展開し、アドルフ・アイヒマンの身柄を押えて強引にアルゼンチンから連れ戻し、
公開裁判にかけたが、あれは、いわば、見せしめのためで、他の元ナチス戦犯は全て隠密裏に殺されているのである。

第二のグループはほとんどが皆今現在のテロリストたちで、アーメイド・ジブリルやアブ・ニダルのような、すでにイスラエル人、あるいはユダヤ人の血を流したか流したいと願っているアラブ人が主で、
少数の非アラブ人もまじっている。


 第三のグループはイスラエルの敵のために働いている人間で、その仕事が進展すればイスラエルとその国民に多大の危険を及ぼすと考えられる連中のことである。
 この三者に共通する特徴は、彼らがみなその手を血で汚しているか、汚す可能性が強いという点てある。
 暗殺の要請があると、首相は法務調査官に検討を依頼する。この調査官の存在は厳重に秘匿されており、イスラエルの法律家でもその存在を知っている者はごくまれで、
いわんや一般市民はだれ一人として知らない。調査官は検察官と弁護人を招いて"裁判”を開き、罪状を披露する。

この裁判でモサドの要請か是認されると、その結末が首相に報告されて署名が求められる。
あとはキドンチームが然るべく処理する……これは可能ならばの話ではあるが。

 最後にもう一つ、モサドは科学者や実業家を相手にするときには、テロリストを扱うときにはけっして踏まない手順を一種の慣例として用いることにしている。
いつも必ず最後の警告を発するのだ。こっそり忍びこんでグラスを動かしたりビデオテープを巻き戻すなどという姑息な手段を弄することなく、言葉で明確に警告するのだ。

イラク最初の原子炉の建設に携わっていたエジプトの核物理学者ヤヒラーエルーメシャド博士の場合でもそうだった。博士は、一九八〇年六月十三日、パリのメリディアンーホテルの一室で暗殺されたのだが、
そのときもこの手順がきっちり踏まれている。アラビア語をしゃべる工作管理官が部屋を訪れ、手をひかないと命はないとぶっきらぼうに告げたという。
エジプト人は、さっさと失せろと男を追い返したが、これは賢明ななやり方とはいいがたい。
モサドのキドンーチームに向かって実行不可能のことをあえてやれと頭ごなしに告げるなどというこJとは、保険会社の承認を得られない愚行である。二時間後、メシャドは死んだ。
生き延びられるチャンスを自ら放棄したのと同じである。一年後、フランスの援助で建設されたオシラクの原子炉がイスラエル空軍の戦闘爆撃機によって破壊されている。


もう一つ、これはアメリカ映画のスパイものによく描かれている「国旗偽装徴募」という謀略戦術である。
これは、情報源として狙いをつけた人物を、その者が共感を寄せている国のために働いているふりをして徴募するやり方である。
実際はまったく別の国の手先なのだが、徴募された本人は気が付かないという高等戦術である。
イスラエルの情報機関モサドなどは特にこのテクニックに長けている。

ユダヤ人は全世界に散らばっているので、ほとんどあらゆる国の人間として通用するエージェントにこと欠かないというわげだ。
モサドはこのテクニックで見事な成果をおさめている。

 たとえば、こういうケースがある。中東の石油会社で働いている或るドイツ人が休暇で帰国中に、やはりドイツ人から接触をうけたとする。

その人間は、ドイツの情報機関BND(連邦情報局)の者だと名乗り、それを証明する完璧な証拠を示す。そして、イラクでそのドイツ人と同じプロジェクトにかかわっているフランス人が、
NATOで域外への移出を禁じられている極秘の技術情報を、より大きな商談を確保するために、流している云々という、まことしやかな話をして、お国のためにその実態をさぐって報告してくれないかと持ちかけるのだ。

ドイツに忠誠なそのドイツ人は彼らの要請を受け容れて、その後エルサレムのために働きつづけるという訳である。
彼は母国ドイツの為になると信じて、情報を流したのだが、実際はイスラエルの為に働かされていたことになる。情報戦の世界では、こういう事例がままあるのだ。


ついでに、旧ソ連から続いている悪名高いロシアKGBについても触れておく。
この組織の、海外工策活動を担当するのは、第一管理総局、特別部と通常の部に分かれている。
外交官を偽装する通常のKGBエージェントは、各"地域”から選抜される。

 日本を担当しているのは第七部である。これらのスタッフは、海外勤務につくときは"PRライン”と称し、在勤先で通常の情報収集、有益な連絡員の確保、技術文献の渉猟等をおこなう。
第一管理総局の極秘の心臓部にあるのが、非合法活動局で、"S”管理局とも称されるこの部門には地域の区別などない。
非合法活動局は"非合法”工作員を管理し運営する。これらエージェントは外交特権に守られない、偽の身分証を持ち、秘密の任務を負って相手国に潜入する。

彼らは大使館を根拠地にせず、それとは一応、独立して活動する。
 しかし、どこのソビエト大使館にもあるKGB駐在官事務所には必ず一人、"S”管理局の人間がいる。彼らは海外に在るときは"ラインN”と呼ばれ、特別の任務だけを扱うが、
しばしば諜報活動の対象となる国に生まれ育った者を徴募し、運営したり、深く偽装した非合法工作員がロシアから潜入してくるに際して、技術的な面をも含めてさまざまの支援活動をおこなったりする。



       戦前日本の情報機関

 戦前は陸軍参謀本部及び海軍軍令部にお粗末ながらも情報部門があり、駐在武官となって各国の軍事情報収集をしていたが、能力は駐在武官の性格によりけりだった。
今は防衛省情報本部が対諜を担っており、国内防諜に関しては調査隊、自衛隊内部の防諜は警務隊が担っている。
 旧陸軍中野学校はスリーパーを育成する軍の教育機関で、この機関自体が対諜及び防諜をしていたわけではない。
 憲兵隊は旧陸軍内部の軍内防諜機関としての性格もあったが、国防保安法絡みで活動することもあった。
 
特高警察は、日本国内の防諜機関としての性格があり、主に国内で情報収集をしていた。
大逆事件や小林多喜二の例にもあるように、行き過ぎが祟って、GHQにより一斉罷免され、さらに旧内務省も解体された。
こうした経緯から、日本は敗戦後一貫して専門情報機関の設立をおろそかにしていた。その結果前述のように、中国、ロシア、北朝鮮のスパイの坩堝状態になっている。
最近、菅総理は「子供庁」設立と新たな政策を提案しているが、的外れも甚だしい。
子供を増やし、育てやすい環境を整備し、人口増加を目標にするには、別の政策を執らなければならない。
菅総理は、コロナウイルス対策にしろ、デジタル庁新設や携帯電話値下げなど、一生懸命努力していることは判る。しかし「努力」とは方向と方法を間違えると、徒労に終わり、成果は上がらないのだ。
さらに、デジタル庁担当の平井卓也大臣など、台湾のオードリー・タン氏と比べれば、デジタル構想や技術面では子供に等しい。
タン氏は、幼年から哲学書を読み、プログラミングを身に着けている天才なのである。ここにも日本の人材不足が露呈している。

従って、中国が日本に陰謀の限りを尽くしている現在、子供庁新設など、悪い冗談に想われる。
一日も早い国家統合情報省の新設が望まれる。


(注)今回の記事は、前述オシントによってのものである。