担当のひとが深夜まで仕事だというので、代わりに映写室に預けてあったデッキを取りに行く。豊洲の夜は早い。東銀座を過ぎたあたりで広い道路に見えるテールランプの数が減る。広い道路を走る。


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一番はじめに通用口に行く。通用口はまだ出入りするひとがいない。専用エレベーターでおめあてのフロアーへ行くが、ドアを解錠する装置にテンキーがついていてもらったパスでは開けられない。インターフォンを押して「預けてあるデッキを引き取りにきました」というと、ドアから白いシャツの男性が出てきて、別な入り口へ案内してくれる。

細いストライプのカーペットを敷いた長い廊下を歩き、授賞式で借りたカフェの二階へ上がって、一番奥に着いたドアに入る階段三段上って映写室の中に入れてもらう。暗い通路の壁に切り取られた窓から階下のスクリーンが見える。窓の前に映写機があるので、覗いてみたいが我慢する。

床に10番と書かれた角を曲がって、突き当りのひっそりした場所にデッキは置いてあった。手を貸そうとする白シャツくんを同行した旦那さんが「いいよ、いいよ」と断り、ドアの外で別れた。もの静かな青年だった。「途中は迷子になったけど、あの人が来てくれてからはスムーズだった」と旦那さんといい合い、ふたりでエレベーターに乗ってデッキを運んだ。