『おそろし 三島屋変調百物語事始』 | しろやぎくろやぎ、本を読む。

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シロヤギとクロヤギによる、徒然気まぐれ偏りぎみ読書日記

 クロヤギです。

 昨日の予告通り、今日は宮部みゆきの最新刊の『おそろし 三島屋変調百物語事始』の感想です。
 『おそろし』は時代小説。宮部みゆきの時代小説なので、怪談ものというか幽霊話というか、その類いです。
 こんな話。

 17才のおちかは、ある事件に巻き込まれたために実家を離れ、叔父である伊兵衛の構える江戸の袋物屋、三島屋で働いていた。
 事件のために周囲に心を閉ざすようになり、ただ働くだけの日々をおくるおちかに、伊兵衛は店を訪れる客の語る「変わり百物語」を聞くように言いつける。
 「黒白の間」と呼ばれる座敷にひとり、客と向き合い、彼らの不思議な話を聞くうちに、おちかは自身を襲った恐ろしい事件と向かい合い始める。
 
 第一話「曼珠沙華」、第二話「凶宅」、第三話「邪恋」、第四話「魔鏡」、最終話「家鳴り」の五話からなる連作短編集。
 一話ごとにおそろしく不思議な話が語られて、そのなかでおちかの過去の事件についても語られます。
 そのひとつひとつを楽しんだあとに一応の話の締めくくりとしての最終話があって、全体をひとつの物語としても楽しめるという趣向。
 とはいえ、八月発売の『ダ・ヴィンチ』に載っていたインタビューによると、これは続きが書かれるようで、シリーズ物になるのかな。

 ところどころ「やっぱりうまいなぁ」とは思ったのだけれど、それぞれの話にあまり魅力を感じませんでしたし、最終話にいたっては途中で読み止めようかと思いました。
 なんていうか、「みんなで敵に立ち向かうぞ!おう!」みたいなノリになってきまして…。
 「こども向けのアニメとか特撮みたいだな…」と思えてくる展開に、本当にどうしようかと思いました。
 最後に、ある人物(人間じゃないかも)からおちかに投げつけられた、ある疑問があったおかげで、最終的な印象はましになりましたけど、あのまま安易に大団円になっていたらかなり評価は下がった…というか、「金返せ」と思ったかも。

 とはいえ、物語の主軸となるおちかの過去にあった事件は、なかなか考えさせられるものだし、「さすが宮部みゆき」と思わせるものでした。
 事件を起こした当人、そしてそうなるに至る道筋をつくった人々。
 こいつが悪い、いや皆が悪いと言うのは簡単だけれど、どの人物も責め切れないものがある。
 それは、同じ状況なら自分だってそうしたかもな、こういうずるさは私の中にもあるな、と思うから。
 それは悲惨な事件なんだけど、心情的に決して突飛なものではない。我々の日常にもそういうことが起こりうる萌芽はあるんじゃないか、と思わせるリアリティーがある。

 おちかの過去が読者にも重いものを突きつける分、なおさら最終話の展開はどうよと思ってしまうんですよね。
 消し去ることのできない過去に、おちかは向き合いはじめたばかり。
 今回の最終話は、体裁上の一応のエンドマークでしかなかったんだろうな、とクロヤギは解釈しています。
 
おそろし 三島屋変調百物語事始/宮部 みゆき

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