さて、今日はロイス・マクスター・ビジョルドのファンタジー、『チャリオンの影』のお話。
ミソピーイク賞受賞と帯に書いてありました。
べつにそれが理由で買ったわけではないのですが。
第一、ミソピーイク賞ってなに?
同じように思った方はこちらをご参照ください。もしくはここ。
西欧中世風異世界ファンタジーはもういいかなと思っていたクロヤギですが、書店でこの本を見つけて、迷った末に購入した理由はふたつ。
ひとつはSFで有名な作家の書いたファンタジーだったので、ふつうのファンタジーとは少し違うものが期待できるかなと思ったから。
もうひとつは主人公が奴隷になって身も心もぼろぼろになった35才の男性だったから。ちょっと珍しい設定じゃないですか。
結果としては、面白かったです。
上巻を外出先で読み終えてしまい、帰宅したら上着も脱がないまま書棚に直行して下巻を取り出し読みはじめてしまうくらいには面白かった。
ビジョルドは人物設定とか、そういうのがうまいと思うんですよね。
代表作ヴァルコシガン・シリーズでは、主人公は胎児のときに母親が吸った毒ガスのせいで骨がもろく、背骨が歪んだ小男です。
本作『チャリオンの影』の主人公は、貴族の身でありながら戦で敵国の捕虜となり、奴隷として海賊船に売り払われてしまった中年男。
中年といっても35才なのですが、奴隷生活で身も心もくたびれきっています。
主人公カザリルは、奴隷生活からなんとか解放され、古い縁を頼っていった先で国主の妹イセーレの教育係兼家令(事務官)に任ぜられます。
このイセーレというお姫様はまだ若く少女といっていい年齢なのだけれど、賢くて芯が強く火のような気性の持ち主。
彼女のお供として宮廷に出仕することになったカザリルは、イセーレを権力を握るための駒として使おうとする宰相たちを相手に苦闘することになります。
しかし彼は、イセーレの未来を覆う影の元凶が宰相たちなどではなく、チャリオン国主一族を覆う恐ろしい呪詛であることに気付くのです。
呪いがあるくらいなので神様も実際にいる世界なのですが、神様は全能ではなく、ましてや人間ができることはたかが知れている。
そういうなかで、イセーレを救おうと悪戦苦闘するカザリル。
でも、何をどうすればいいのかなんてまったく分からないのです。
読者としても、奴隷生活の後遺症でぼろぼろの上、イセーレを救おうとしてまた酷い目にあうカザリルを気遣いつつ、「ああ、とにかくカザリル頑張って(どう頑張ればいいのか分からないけど)」と思うしかありません。
暗い雰囲気になって当然のお話なのですが、はしばしにユーモアを感じさせる部分があり、勢いにのって読めます。
さすがに世界観の構築に隙はないですし、久々に面白かったファンタジーです。
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しかし、イセーレの母イスタの過去の打ち明け話が相当おそろしくて、このシリーズ続刊(イスタが主人公)を読めないでいます。