わたしはなにをよんだのでしょうか『虚航船団』 | しろやぎくろやぎ、本を読む。

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シロヤギとクロヤギによる、徒然気まぐれ偏りぎみ読書日記

シロヤギです。


『虚航船団』をようやく読み終えました。
筒井康隆さんの本です。

三章からなっていて、第一章は宇宙船に乗り込んだ文房具たちの話。
第二章は、鼬の星の歴史。
第三章は、「神話」となっています。

文房具たちが鼬の星に攻め入ってきます。
理由はよくわかりませんが、鼬を全滅させるために、宇宙から降りてきます。
そのせいで鼬の住んでいるクォール星は壊滅状態に。
生き残った文房具たちと鼬たちの戦いは三十年を過ぎても続いている。

粗筋を書こうにも、書けません。
だって、自分で何を読んだのかよくわかってないのだから。

いきなりこれを選んだ自分のカンがある意味すごい。


文房具たちが宇宙船に乗ってるなんて、なんだかふぁんしーなんて思ってはいけません。
この文房具たちは変なのです。
宇宙船内で共同生活を送りながら、みんなそれぞれどこかに何らかの問題があって、互いにうまくコミュニケーションを取ることができない。宇宙船はそういう、ストレスでいっぱいの閉鎖空間です。

第二章の鼬の星の歴史は、そのまま人類の歴史です。

第三章は、いわゆる「黙示録的世界」。
鼬たちの国はほとんど滅んでしまい、生き残りの鼬たちが細々と暮らしていたり、文房具たちを襲ったり。
途中で、筆者の家の近くを通ったと思われる選挙カーの宣伝とか、「男の作家だから陣痛が書けない」とかなんだかかんだかワケのわからないものがズカズカ入ってくる。

なんだろう、メタ小説っていうのでしょうか。
でも、終わりはちゃんと終わっています。けっこう衝撃的に。映画的かも。


宇宙船団やら話をする文房具やら出てくるので、SFとかファンタジーってことになるのかもしれないけれども、そう言ってしまうともったいない。
文房具や鼬を風刺として読んでいいのだと思いますが、単に「風刺」って言ってしまうのももったいない。

何を読んだのかよくわからない、というのが正直なところです。
ほかの方の書評を見ると、実験小説って書いてあります。
現実(作者の現実)と虚構(小説という場)が交じり合っていて、それは司馬遼太郎が「著者はこう思う」なんていうレベルではないのです。
ナラトロジーの勉強をしている方なんかには、けっこう面白いのではないのでしょうか。

何がなんだか面白いのかどうかもよくわかりませんが、圧倒的なエネルギーがほとばしり出ています。
筒井さんの写真を見るとバルザックを思い出すのですが、ばりばりばりばり書いているイメージがあります。

それから、これだけふざけたことを書いているのに、この作品は非常に真摯な作品だと思います。
それはとりもなおさず作家が文学に対して、また社会に対して非常に真摯だということなのではないかと思いました。
(これは、『文学部唯野教授』を読んだときから思っていることです。)

万人にお勧めできる本ではありませんが、個人的には「読んでよかったなぁ」と思います。

虚航船団 (新潮文庫)/筒井 康隆
 

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文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)/筒井 康隆
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岩波なんだ! ちょっとびっくり。