書店ポップに惹かれて買った本の話 | しろやぎくろやぎ、本を読む。

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シロヤギとクロヤギによる、徒然気まぐれ偏りぎみ読書日記

 クロヤギです。



 最近は、多くの書店で店員の手書きポップが目につくようになったように思います。
 それがきっかけで本を手に取ったことがあるという方も多いのではないでしょうか。


 私が初めて書店員の手によるポップを読んで買うことに決めた本は、クリストファー・プリーストの『逆転世界』でした。
 以前にも少し書きましたが、『逆転世界』は東京創元社が毎年行っている復刊フェアにより2003年に復刊されたSF小説です。
 そのポップには、『逆転世界』をなんとしても復刊させたいという編集者の思いが書かれていたように記憶しています。
 とても心動かされる文章でした。 
 実際に読んでみると、『逆転世界』はとっても風変わりでとっても面白い本でした。


 あのポップを超えるものに出会ったことはありません。
 おおかたのポップは、既によく売れている本を取り上げているとか、出版社の書いたあらすじ以上のものは書かれていないとか、たんに「泣けます」やら「感動します」やら書いてあるだけでしかないとか、まず第一に読みにくいとか。
 勿論、よいポップを書くのは難しいことだろうと思います。
 自分が大型書店でバイトをした経験があるから言うのですが、書店員が必ずしも本をよく読んでいるわけではありませんしね。



 さて、今日は久しぶりに書店ポップに惹かれて買った本の話です。
 出張先の書店で購入しました。
 これまた東京創元社の本で、レナード・ウイバーリーの『小鼠 ニューヨークを侵略』という1950年代に書かれたユーモア小説です。
 2005年の復刊フェアで復刊された本ですが、もう既に出版社の方では在庫なし。


 ポップの内容は忘れてしまいましたが、今の日本では大売れしそうもないタイプの本を選んで薦めたセンスに敬意を表して購入しました。
 購入した書店のブログにこの本についての記事がありましたので、リンクしておきましょう。
 Book Blog SANAEIDO 三省堂書店 京都駅前店 L・ウイバーリー 『小鼠 ニューヨークを侵略』


 さて、こんなお話でした。
 北アルプス山中に、長さ5マイル(8 km)幅3マイル(5 km)というとても小さな国があり、名をグランド・フェンウィック大公国という。
 自由で平和なこの国では、国産ワインを輸出するだけで、まったくの自給自足でやってきた。
 ところが人口の自然増により自給自足が立ち行かなくなり、国内の需要に必要とされるだけの金をどうにか手に入れなくてはいけなくなってしまった。
 国内は、声価の高い大公国ワインを水増しして売り外貨を獲得しようという人々、水増しワインに反対する人々に分かれて喧々囂々。
 それに対して、芳紀二十二歳、領主たる女王陛下グロリアナ十二世大公女が打ち出した奇策は、なんと大国アメリカへの宣戦布告!
 どうなるグランド・フェンウィック大公国!

 

 まさに小鼠のような小国が、大国支配の国際政治を振り回す様子を描いたユーモア小説です。
 アメリカの小説なのですが、「アメリカってそんなお優しい国かよ」と思ってしまうようなところがあり、風刺小説というにはちょっと手ぬるい。
 でも、1950年代のアメリカではこういう小説が人気を得ていたのか、と思うと感慨深いものがあります。


 読んだ感想はというと、正直微妙。
 確かに思わずにやっと笑ってしまう楽しい小説なんですが、もっと風刺を効かせて欲しかった。
 そしてクロヤギ的に一番の問題となったのは、ある重大な事件が起こる経緯に納得がいかないというところ…。
 その事件がどんな出来事なのかということを書くと、これから読む方には興ざめになってしまうでしょうから省きます(隔靴掻痒てのはこういうことを言うんですかね?)。
 物語の重要なポイントとなるその事件というのは、起こる過程ではなく起きた結果が大事なのだけれど、クロヤギは引っかかってしまったのですよ、その過程の不自然さに。
 それに引っかからないともっと楽しめたろうになぁと思います。
 勿論、気にならない人も多い…というより、ネット上の感想を読むと、皆さん、そこは問題にしてらっしゃらない様子。
 全体の荒唐無稽さからすれば大した不自然さではないのは確かなのですが、こういうのは引っかかってしまうともう仕方ないのです。
 余計なことに引っかからないで楽しめた人が羨ましいです。


小鼠ニューヨークを侵略 (創元推理文庫)/レナード・ウイバーリー

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