「紙」を彫ったり、巻いたり、ときどき溶かしたり。
おいしいアートとビーズを作る「やぎ~ぬ工房」です。
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遅ればせながら、
先日の21世紀アートボーダレス展にて展示した
彫紙アート新作をご紹介します!
【仁・慕・志】
200×200mm 20枚
このタイトル、
作品を見てすぐ読めた人と、
「……?」と考え込んでしまう人と二分してました💦
「に・ぼ・し」
と読みます。というか読んでください(圧)
煮干しにまつわる思い出をひとつ。
小さい頃、両親が共働きだったので、
すぐ近くに住んでいた母方の祖母が
毎日面倒を見てくれてました。
ごはんも時々作ってくれて、もちろんそれはおいしく食べていたのですが…
唯一、味噌汁に入れてくるにぼしだけが受け入れられず。
(出汁用に入れて、そのまま取らずに具として提供されるパターン)
とはいえ残すと「体にいいんだから」と怒られるので、
泣く泣く食べておりました。
かつお節や昆布ならまだ分かるのに…解せん…!
なので、マットの配色、味噌汁カラーになっています。
背景の薄いマーブル模様の紙も、出汁がじわじわ出ているイメージ。
大人になってから、ようやくにぼし出汁のうまさに気付き、
にぼしラーメンとかも好んで食べるようになりましたけどね!
…いまだに本体の方は食べる気にならないけれど…
なんでにぼしって、香りや出汁は美味しいのに
本体はだしを取る前も後も、あんな苦いんでしょうね…?
味噌汁の底に沈む銀色のアイツ、
幼少期の私には存在感がでかすぎました
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そんなにぼし味噌汁を作ってくれた祖母が、
今年10月、祖父の待つ天国へ旅立っていきました。
高齢とはいえ、あまりにも急すぎる旅立ちで。
実はこのアートボーダレス展の出展募集を受け取ったのが
祖母が旅立ってまだ1週間程度だったので、
正直出展する気持ちには全くなれませんでした。
ただ、日にちが経って少し落ち着いた頃、
やっぱり何かしら今の想いを形にして残しておきたい、
という気持ちが強くなり、
1カ月弱というとても短い制作期間でしたが、
なんとか仕上げることができました。
こういう時普通なら、
祖母の好物とか、祖母の得意料理とか、
そういうものをモチーフにするんでしょうが…
なんか、パッと思いつかなかったんですよね。
いったん「にぼし味噌汁」のことを思い出したら、
もうそれ以外の料理は考えられなくなってました。
(ごめん、おばあちゃん!)
いつもは写真から色分けして下絵を起こしていきますが、
今回は一からじっくりとデッサンに取り組みました。
集中するため、ネットカフェに1日籠ったりもしましたね~。
スケッチブックと色鉛筆ならまだしも、
にぼしをネカフェに持ち込む人ってなかなかいないのでは…
実は後半、顔の部分は、
祖母の写真を見ながらちょっとずつ手を加えていきました。
写真に写る祖母は笑顔の姿がほとんどでしたが、
同時に負けん気の強い人でもあり。
すごくメリハリのある性格でした。
イメージとしては、
となりのトトロに出てくるカンタのおばあちゃんと、
サマーウォーズに出てくる栄おばあちゃんを足して2で割った感じかな?
展示に来られたお客様(祖母に会ったことはもちろんない)の中には
何となく作品から祖母の面影を感じてくださった方もいらっしゃって、
とっても嬉しかったです!
…まぁ祖母は自分が煮干しに例えられたと知ったら
めちゃくちゃ呆れると思いますが
でも仕方ない!
だって私はアーティスト!!!
そしてタイトルの【仁・慕・志】に込めた思い。
一見、漢字ばかりで堅苦しい雰囲気ですが、
仁(に)…思いやりや優しさの心を持ち
慕(ぼ)…孫たちや家族、周りのみんなから慕われ
志(し)…自分の信念を曲げず、筋を通して生きてきた
そんな祖母の生き方が込められています。
タイトルというより、私なりの「戒名」なのかも…。
あの苦い苦い体から、
滋味にあふれた香りや出汁がじわじわにじみ出るにぼしのように、
厳しさの中にも、まろやかであたたかな愛情で人を包み込む。
そんな人に憧れるし、自分もそんな生き方ができればいいな…と思います。
そうそう、
搬入の3日前がちょうど祖母の四十九日でして。
その日まで、目の部分を彫らないで残しておいたんです。
龍の絵に目を入れると魂が宿り、飛び去ってしまう…とか、
だるまの右目は願い事が叶った時に入れる…とか、
「目」って昔から重要な意味合いを持つ部位ですよね。
四十九日の夜に目を彫り上げることで、
あちらの世界に旅立つ祖母を、心の中でしっかり見送りました。
また会える日まで、おじいちゃんと仲良くね。
私の第二の母。
ありがとう。
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そして今回、今まで苦手で避けてきたことにも挑戦してみて、
また違った視点での作風が作れるような気もしています。
もしかすると、今まで追い求めてきた、
本物より本物らしくおいしそうなスーパーリアル
な作風からは、少し外れるのかもしれません。
でも、軸はブレずに、さらに一歩踏み込んで、
観てくださるお客様の心に強く残る作品を
これからも作っていきます!
とんでもない長文になってしまいましたが、
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございます
やぎ~ぬ
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