【接客実務の基礎】

今回は実際の実務での考え方、捉え方を記します。

前記でも少し触れましたが、接客の本質は自分の部屋に心から尊敬する人、好きに成った異性を招くことに似ています。

心を寄せる方々を家に招くとなると ほとんどの方はいつもより早く起床して大掃除をして身だしなみを整えるところから始めるでしょう。

その理由は自分を気に入って欲しい、好きに成って欲しい、また部屋に来ていただきたい、そう言った事からだと思います。

御店に置き換えても同じ理由で御客様に気に入って欲しい、好きに成って欲しい、また来店いただきたい、そういう理由で身だしなみを整え、店は清潔でなければならないのです。

またここに付け加えるなければならないのは

レストランは非日常を演出しなければならない

事です。

家庭でも味わえる雰囲気や味、接客であるのなら、お金を払ってレストランに行く価値はありません。

例えば接客者として必要な気遣いは、御客様の見える場所にラップがあったり、掃除用具や洗剤が見えたりする事は日常が見えてしまうので収納し見えなくすることです。

また高級レストランでもそうですが彼らが腕時計をせず、懐中時計を忍ばせているのもファッションや格好良くするためではなく、ご来店頂いた御客様に時間を忘れ非日常のレストランを存分に味わって頂きたい思いから、御客様の目に触れる腕時計はせず懐中時計にしているのです。

 

さて話を戻します。

掃除については学校でのやらされる作業としての適当に成りがちなものとレストランの掃除は全く違います。

例えばガラス窓を拭く場合、やらされていると言う意識では綺麗にしようと言う意識はなかなかでません。

さっと撫でるだけの様に拭いて『終わりました!』なんて言って見に行くとガラスに拭いた跡が残っていたり拭きむらがあったりすることが関の山です。

ところが前記したように人を部屋に招く能動的な掃除の場合はガラスなんて無いのではと思う程磨くはずです。

理由は気に入って欲しい、好きに成って欲しい、また来て欲しいと言う御店と全く同じ動機があるからです。

 

身嗜みについてついても掃除と同じ動機を含みながら違った側面の意識が必要です。

何故、飲食業や宿泊業のフロントなどは昔から派手な格好や髪を染めてはならないと言うのかわかりますでしょうか。

まず忘れてはならないのはレストランにおいて

主役はあくまでも御客様である

ということです。

例えるのなら結婚式に出席した時に新郎新婦よりも派手で目立つ格好をするような行為ににています。

そんな事をすれば皆から嫌われてしまい場合によっては怒られてしまうかもしれません。友達もたくさん失ってしまうでしょう。

ですから御客様よりも目立つ格好をしてはならないのです。

しかし現代では髪については染めたりすることは日常に成り多少ルールも緩和されました。

それを踏まえても常識内の色、デザインでなければならないのはおわかり頂けるとおもいますし、もし少しめだつかな?と思えるのなら条件があります。

主役は御客様であることは変わらず、御客様が不快になってもいけません。

もし派手な髪であった場合接客態度が悪ければ2つの事で怒られてしまいます。

態度が成っていないし髪が不快

と御客様を怒らせてしまう要素が増えてしまうのです。

ですので、もし少し派手かな?と思うのなら、それを吹き飛ばすほどの素晴らしい接客と笑顔が無ければ仕事が出来ないと思わなければならないのです。

 

さて接客についてですが、よく大手の飲食店には辞典のようなマニュアルがあり事細かにルールが決められています。

私はこのマニュアルを全否定します。

何故ならば利用動機、年齢層、性別、個人、グループによって欲する接客は変わるからです。

では何故マニュアルがあるかというと、せめて最低限の作業をさせてそれ以上は求めずよしとして諦めているからです。

ですから笑い話である、某ハンバーガーチェーンに1人で行って野球チームの為に大量に購入した御客様へ『こちらでお召し上がりですか?』と聞いてしまうありえない行為が起こってしまうのです。

接客には正解はありません。人には性格があり全て違うように、その方、その方で対応を変える必要があるからです。

なんだか難しく聞こえますが、これもヒントは部屋に人を招いた事を想像して頂ければ、それが接客の基本なのです。

掃除、身嗜みを整えたら恐らく相手に喜んでもらえるように色々考えるのではないでしょうか。

BGMはどおしよう・・・・料理は何が好きかな?飲み物は何が良いだろう・・・そう考えませんか?

そして相手が来た時には飲み物が減ってきていたら『次何を飲みますか?』だとか黙って注ぎ足したりするでしょう。食べ物も無くなりそうなら次を出したり作ったりするでしょう。

これがマニュアルに成るとグラス半分に飲み物が減ったら追加注文を取りましょう、となります。

私から言わせれば馬鹿じゃなかろうかです。前記した通り部屋に招いた事を想像できれば自然にできる事ですし、雰囲気を見て飲みそうになければ水を黙って出したりすることが正解で追加ドリンクを取る事だけが全てではないからです。

 

次に笑顔です。笑顔は人を穏やかな気持ちにさせます。

御客様から給与を頂いている我々は御客様に喜んで頂けることを追求しなければなりません。ですから笑顔は必須なのです。

もっと言えば普段テーブルについていなくても口角を上げて微笑みながら作業をして、テーブルに着いたら笑顔に成る習慣は必要です。御客様の御店への印象は入り口の扉を開けた瞬間から始まります。扉を開けた瞬間に働いているスタッフ全員が微笑むように仕事をしていると御客様には素敵な空間に見えます。

そして笑顔で従業員が話してくれるととても居心地が良くなります。ですから笑顔は必要で笑顔や微笑みが出来ない従業員が居るのなら、その方は接客に向いていないと言わざるを得ません。

 

次に作業についてです。

最善は御客様に違和感を与えずお邪魔をしないことが肝です。

そういった意味でテーブルでは極力作業はゆっくり、音を立てずにサービスすることが基本です。テーブルを離れても走ったりせわしなく動いたりすることは、ゆっくり食事を楽しみにいらした御客様にとって雑音に成ってしまいます。

もちろん御客様の目線から外れた裏動線などに入ったら急ぐことは必要です。しかしそれ以外では御客様の体内時計のスピードよりも遅く作業をしなければ違和感を与え雑音になり場合によっては楽しい会話まで切ってしまいます。これではレストランに来た意味がなくなります。

 

同じ理由で従業員同士の会話も気にしなければなりません。普段でも見知らぬ人のプライベートの話を聞かされても全く興味はありませんし、興味を持つこともありません。

ですからレストランにおいて従業員の私的な会話がテーブルまで聞こえる事は雑音でありマナー違反、失礼にあたります。仕事での報告、連絡、相談ならば良いですがプライベートな会話は御客様の見えない聞こえない場所でしなければならないのです。

 

以上が接客の大まかな基礎であり、常にこの事を意識しながら行動しなければなりません。

大事なのは

 気遣う事

気付く事

もてなしの心 

なのです。

そしてどうしたら御客様が喜んで頂けるか考え、1つの事にとらわれるのではなく色々自分で考え行動することが大事なのです。ですから接客は職人なのです。

ただし何度も言いますが接客とは難しく考えず自宅に人を招いた時を想像して頂くことだと捉えてください。

部屋と店との大きな違いは1対1なのか1対30なのかです。確かに1対1の接客を30人に同じように出来るかと言うと難しいでしょう。しかしそれは諦めろと言う訳ではなく、目指して頂きたいのです。今日は1対1の良い接客が1組にしかできなかった、だから明日は1組プラス0.5でも良いから出来るように成ろう、そういった意識が日々人を育てていきます。

接客業も職人の世界です。一隻一兆で出来るようになるほど簡単ではありません。ですからあきらめず、結果を急がず、焦らず、日々努力を積み重ねて少しずつでも前に進めば良いのです。

 

以上が接客の基本的な考え方です。

次回は接客マナー、作法についてお伝え致します。

では