少し前の週末、天気が良かったので思い立って鳥取市へ出かけてきました。
特別な予定があったわけでもなく、ただ「海が見たいな」と思ったのがきっかけ。
こういう衝動的な旅って、準備も軽くていいんですよね。リュックにカメラとお気に入りのスニーカー、それだけで充分。

鳥取駅に着くと、まず感じたのが空気の軽さ。
潮風の匂いと、少し乾いた風が肌に触れて「旅に来たな」と実感します。
タクシーの運転手さんに「どこ行くの?」と聞かれて、「砂丘に行こうと思って」と答えると、笑いながら「いい選択!」と言ってくれました。
なんだかその一言が嬉しくて、車窓の景色が一気に旅色を帯びて見えた気がします。

鳥取砂丘に着くと、広がる景色に思わず息を呑みました。
見渡す限りの砂と空と海。
足を一歩踏み出すたびに砂が沈み込み、音が吸い込まれていくような静けさがある。
観光地とはいえ、ちょっと外れた場所まで歩くと、風の音しか聞こえなくなるんです。
馬の背と呼ばれる高台まで登って振り返ると、歩いた足跡が細い線になって遠くまで続いていて、なんだか自分の時間を可視化したような感覚になりました。

砂丘のすぐそばには砂の美術館がありました。
すべて砂で作られた彫刻が展示されていて、細かな装飾や表情の豊かさに驚かされます。
砂という儚い素材で、ここまでリアルな作品をつくる技術と感性には本当に感服。
静かな館内を歩きながら、砂丘で感じた自然の力と、人の手による芸術が対比的に思えて面白かったです。

その後は白兎海岸へ。
日本神話「因幡の白うさぎ」の舞台として知られている場所で、名前だけでもどこかロマンチック。
波打ち際を歩きながら、夕暮れに染まる海を見ていたら、まるで時間が止まったような気がしました。
旅の中でこういう瞬間が一番好きです。目的がなくても、ただ「ここにいて良かった」と思える時間。

歩き疲れたので、街に戻ってちょっと遅めの昼食を取りました。
鳥取といえば海の幸。特に白イカは絶品でした。
身が透き通っていて、口の中でとろけるような食感。
地元の人にすすめられて頼んだモサエビも、甘みが強くてびっくりするほど美味しかったです。
そして、面白いことに鳥取は“カレー消費量日本一”を争うほどカレー好きの街だそう。
実際、街の至るところにカレー屋さんがあって、どこも個性的なメニューを出しているようでした。
お腹がいっぱいだったので食べ歩きはできなかったけれど、今度来るときは「カレー巡りの旅」もいいかもしれません。

お土産には、とうふちくわを購入。
豆腐と魚のすり身を合わせた、ふんわりした食感の練り物で、地元ならではの味わいがありました。
持ち帰って焼くと香ばしくて、ご飯にもお酒にも合う。
こういう“素朴だけど記憶に残る味”が旅の楽しみのひとつですね。

写真好きの自分としては、今回もたくさん撮影しました。
砂丘の風紋や、白兎海岸の岩肌、夕暮れに光る街の灯。
撮っているときよりも、あとで見返したときに「この瞬間をもう一度歩きたいな」と思える。
写真って、記録というより“時間の再生装置”みたいなものかもしれません。

そして、旅の帰り道。
電車に揺られながらふと「最近あまり乗ってない乗り物」があることを思い出しました。
それが、長年乗ってきたバイク。
最近は出かける時間も減って、少し放置気味になっていたんです。
ただ、旅をしていると「次にどんな景色を見たいか」を考えるようになって、バイクも誰かに乗ってもらえたらいいなと思うようになりました。

今はオンラインでバイク買取の自動査定ができるサービスも増えていて、スマホから写真を送るだけでおおよその価格がわかるんですよね。
昔は店舗まで持っていくのが当たり前だったけれど、今は気軽に試せる時代。
旅先での空気を吸って気持ちが整理されたのか、「ちょっと査定してみようかな」と自然に思いました。
思い出が詰まったものを手放すのは簡単じゃないけれど、次の誰かがまた新しい景色を見せてくれるなら、それも悪くない。

そんなことを考えながら、鳥取の空を見上げて深呼吸。
旅って、風景だけじゃなくて自分の中の“整理”までしてくれるものだなと感じた一日でした。