中央官庁の第一種試験において高級官僚を志した理由を問われた某東大生は「いずれ政治家になりたいから」と即答した。だが政治家を目指す若者にキャリア官僚はお勧めできない。確かにその企業の人事はその企業で育った者でなくてはこなせない。しかし同じ役所勤めでも政治家と役人では思考法が異なるのだ。官僚としての実務を重ねる内にーー事務には精通するもののーー思路が袋小路に入り大局を捉えられなくなるという難点がある。その典型が東大生、羨望の的「後藤田正晴」さんであろう。後藤田さんは霞が関の頂点を極め永田町に足を踏み入れると天下を取る器と囁かれながら党三役にも主要閣僚にも就けず形だけの副総理に終わった。後藤田さんの政界入りがあと10年、早ければ総理の座を手中に出来たかは実際のところ疑問符だが、人には向き不向きがあり後藤田さんは細かな行政事務の処理に適した能力と性格をお持ちだった気がしてならない。