松山市住宅情報館 館長日記 「男の意地、渋沢栄一を見て」

 

  NHK大河ドラマの中の渋沢栄一の生涯が終わった。渋沢家の家系も分かった。栄一の両親となる父・市郎左衛門と母・るいから始まり、渋沢栄一、栄一の子・篤二→栄一の孫・敬三に続く。渋沢栄一の長男・篤二は栄一の偉大さに押し潰される。篤二は40歳の時に女性問題を起こし栄一から勘当される。私は女性問題を起こしたことより、仕事に対する取り組み方(甘え)が許せなかったのだと思う。人様に立派なことを言っている栄一には息子を許すわけにはいかなかったのだ。そんなことで、栄一は孫の敬三を自分の秘書とし、敬三に帝王学を教えることになる。

 

 人は不満や対立があると歪んだ自尊心ができる。歪んだ自尊心で意地を張る。自分の人生で意地を張ることは決してプラスにはならない。むしろマイナスになる。大事なものを失ったり、大きなチャンスを手にすることができなくなる。松下幸之助は人間成功の秘訣は「素直な心」だと言っている。人間歳を取るとなかなかハイと言う素直な心にはなれない。分かっていても素直になれないのだ。

 

  ドラマの最終場面で孫の敬三が栄一にお願いする場面がある。敬三の父である篤二を許してくれ(勘当を解いて欲しい)と問う場面である。栄一も既に晩年である。篤二の不始末から何十年も経っている。栄一にとっても篤二のことは心残りだった筈だ。栄一はしばらく考えたのち、敬三の問いに答えず、「敬三は優しいなあ。」と答えるに留まる。栄一は「許す」と言わなかった。篤二を許すと言いたかった筈だ。栄一は心で泣きながら男の意地を貫いた。昭和6年、関東大震災のその時、渋沢邸に駆け付けた篤二を抱きしめて泣いた。「良かった。良かった。生きていてくれて良かった。」が和解の言葉だったと思う。昭和6年は栄一が逝去する年である。こんな立派な人だって意地を張るのだ。人間は本当に難しい生き物だと思う。