松山市住宅情報館会長日記 『へつらわない店』

 

客を怒らせる商法かもしれないが、一つ間違えれば取り返しの付かない接客となる。接待したり接待される時、相手との話に夢中となり、お酌に気を取られ食事を楽しむことを忘れてしまう事がある。料理人は料理を創ることに命をかけている。料理人に取って調理場は戦場であり真剣勝負の場所だと思う。玄関で見送られる時『あれっ、何食べたっけ』では料理長に対して失礼極まりない。私の様な田舎者にはよくあることでもある。こんな客は来て欲しくない。店が客を選ぶ店として気に入らない客は来なくて結構、客にへつらわない店として有名な店がある。

 

ある料亭での出来事です。次々と出てくる素晴らしい料理の品々です。珍しい食材、新鮮な食材、手間暇かけた料理の種類はみごとであった。次々と出てくる料理を前に、お客の食事の進み具合にばらつきが出てきた時です。さあ箸をつけようかと思った瞬間、手つかずの料理をサッと持ち去ったのです。何もなかったかのように次の素晴らしい料理が出てくる。料理の存在を無言で気付かせる店側の大勝負だと思う。

 

 食事の途中で客の料理を顔色一つ変えず、無言でサッと取り下げる行為は、一つ間違えればお客を敵に回すきわどい商法だと思う。一瞬腹が立つが何故か、『しまった!』持って行かれた料理が気になるのも事実である。お客が店に気を使う店としても有名な店だ。横着な店という評価と本物の料理店という評価にはっきり分かれている店である。お客様を突き放すのも一流料亭として生き残る道かもしれない。