『うちの子をもっと強くしたい!』
このように考える親御さんはとても多いと思います。
強くなって、試合で優勝してメダルやトロフィーをもらって。
全国大会でも活躍して強化選手になって国際大会にも出場して、やがてはオリンピックへ。
それはそれでもちろんよいのですが、うちでは子どもに「なぜ柔道をするのか」を教えました。
それは以下のようなものでした。
<何のために柔道をするのか>
1.人との関わり方を学ぶため
2.礼儀作法を身につけるため
3.運動をして健康になるため
4.できなかったことができるようになる喜びを知るため
1から3はまあ当たり前のことと思います。大事なのは4番のできなかったことができるようになる喜びを知ることです。
まだうちの子どもたちが柔道を始めて間もなかった時、えびと逆えびという基礎練習ができなかったので家で練習していました。
私もどうやるのかわからずに、YouTubeで動画を見ながら練習をしていました。
それでなんとかできるようになって、「そうそう、それでいいんだよ!」と子どもたちに声をかけると、子どもたちはとてもうれしそうにしました。
そうした時に、「できなかったことができるようになった時って本当にうれしいよね。その気持ちを大切にしなさい」とよく話しました。
年齢が上がって、いろいろな技に取り組むようになった時も、「今うまくできなくても焦らないこと。いずれできるようになった時に悩んだり苦しんだ時間が長いほどできるようになった時の喜びが大きいから頑張りなさい」などと話したりしました。
これは勉強でもそうです。
わからなかったことがわかるようになる。知らなかったことを知る。人はその喜びを求めて、生涯努力を続けるのです。
人には必ず物理的な限界があります。
例えば、どんなに努力しても100メートルを1秒で走ることはできません。
でも、努力して能力を高めていけば、その限界に挑戦できます。
できなかったことができるようになる。自分が行きつくことができるところまで行く。
もし、オリンピックで優勝して目標を達成したとしても、それは自分の限界へ至る途中経過でしかありません。
その先にある自分自身への挑戦が本当の意味で柔道をする理由なんだよと、うちの子どもたちには何度も話しました。
今、コロナで大きな試合が中止になって、目標を失ってしまった人がたくさんいると思います。
こんな時だからこそ、自分が柔道をしている理由をよく考えてほしいと思います。
今年の試合に全力を注いでいたり、試合で結果を残すことを目標にしていた人も多いと思います。
なぜ今年なのか。なぜ自分がこのような目にあわなければならないのか。
そのように思う気持ちはとてもよくわかりますが、でも考えてほしいのです。
試合は通過点でしかありません。
卒業後も柔道を続けるなら、まだまだチャンスはあります。
そして卒業で競技としての柔道をやめたとしても、自分の限界に挑戦する方法は必ずあります。
もしかしたら、それは柔道ではないのかもしれません。
でも、必ず自分の限界に挑戦する道はあります。
できなかったことができるようになること。できていたことでも、よりうまくできるようになること。そして、知らなかったことを知ること。
今のような時だからこそ、自分が柔道をしている理由について、多くの方に考えてほしいと思います。
そして、お子さんに柔道をさせる理由について、親御さんにも考えてほしいです。
「強くすること」が理由だと、どこかで目標を見失うのではないかと思います。
柔道は生涯取り組むことができるスポーツです。
柔道をする理由についてよく考え、多くの方に楽しく柔道に取り組んでもらえたらと思います。