首都圏の築20年超えの中古マンションを購入した30代の女性から、マンションの修繕についての相談がありました。

その内容とは、もともと購入したマンションが「管理費だけで修繕積立金が必要ない」という条件で分譲されたもので、しかし住んでみてから「今後の修繕のことや、将来的にこのマンションはどうなるのか」という心配を抱えられていたものでした。

このマンションは、以前は賃貸マンションだったものが、その所有者が死去し相続が発生、相続人が複数いたことから戸別に販売され、分譲された建物だったのです。このようなケースでは、大規模修繕計画そのものがなく、管理組合はあるけれど、理事もいなければ監事もいないし、そもそも管理規約がない、というケースがあり得ます。

議決権割合と運営面で難がある場合も

このような、途中から分譲に切り替わったマンションでは、管理組合の議決権割合の問題も起こりやすいことが知られています。その区分建物を元々の所有者が全戸数の過半数を超えて所有している場合が多く、あとから購入した他の区分所有者は議決権割合が少ないので、管理組合運営上必然的に発言力が弱くなるのです。

標準管理規約第47条2項の「総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。」との規定があるので、その元々の所有者が議決権の過半数を持っていれば、その一人が反対すれば何も決められないという住みにくい居住価値が低いマンションになります。このような、問題を抱えるマンションは、途中から分譲マンションになったマンションだけではなく、等価交換で建設された小規模マンションの旧地権者が全戸数の過半数を超えて所有している場合でも発生しています。


賃貸マンションだった時の所有者や旧地権者が分譲後も数十年間続けて理事長職を務めるなどして、利益相反、独断専横がありほかの区分所有者にはとても住みにくいという相談は数多く寄せられます。それでも多くの区分所有者は文句も言えず、現状の理不尽でずさんな管理に気づいた他の区分所有者がいたとしても改善に向けての対策が取りにくく、管理規約もあってないようなもので、受け入れざるを得ないということなってしまいます。

このようなマンションはこのまま放置すると近い将来には選別されたり、淘汰されてやがてスラム化して資産価値のない「管理不全マンション」になってしまう可能性が高いのです。


このようなマンションを購入しないための知識

国土交通省が公表しているマンション標準管理規約第64条(一部抜粋)では、「理事長は、会計帳簿などを作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があった場合には、これらを閲覧させなければならない」との規定があります。利害関係人とは、組合員から媒介の依頼を受けた宅建業者等は法律上の利害関係にも含まれますので「元不動産業者』に修繕積立金の額、長期修繕計画の有無と直近の作成日など確認させて説明を受けることが必要です。

法律の専門家の中には、マンション購入検討者も利害関係人に含まれるという意見もあります。その場合には、購入予定者ご自身がご自分で確認することが可能です。

また、国土交通省が公表している、マンションの修繕積立金に関するガイドラインの修繕積立金の額の目安(計画期間全体での修繕積立金の平均額)より、著しく低く設定されているマンションは、購入すると計画修繕ができなかったり、購入したあと修繕積立金の月額が大幅に値上げになったり、大規模修繕工事のときに一時金を徴収されるかもしれません。

マンション購入前に必ず確認したい資料

中古マンションの売買にあたり、不動産仲介業者が宅地建物取引業法第35条に基づいて売買契約締結前に「重要事項説明書」を交付して説明することが義務付けられています。


その「重要事項説明書」作成するために不動産仲介業者はマンション管理会社から「重要事項に関わる報告書」という資料を取り寄せますので、色々な管理に関することが説明されて理解することができますが、自主管理のマンションや途中から分譲マンションになった管理会社に管理を委託していない自己流の管理のマンションでは、「重要事項に係わる調査報告書」の作成の依頼に協力しないマンションがあり、正確な情報が把握できないこともあります。


ちなみに、「重要事項に係わる調査報告書」には、管理組合全体の管理費・修繕積立金の滞納額、管理組合の借入金の額などの報告を求めることができるのが一般的です。中古マンションのご購入を検討する場合には、管理組合の資産についても調査可能です。

マンションを購入するということは、おそらく人生で最大の買い物のひとつです。購入してから後悔しないように物件を慎重に調査して選んで行かなければならないことは言うまでもありません。