旅館業法の一部改正法案が閣議決定され、今国会に提出されています。

 

かみ砕いて言うと、

感染症の症状が疑われる宿泊者に対して、旅館側は、チェックインの段階で、「お客さん、熱あるっぽいね、コロナじゃないの?病院に行って検査受けてシロだと証明してもらってきな。さもなければ、宿泊させませんぜ」というのが可能になる法律です。

 

おいおいおい。

「感染症予防法」では、「我が国においては、過去にハンセン病、後天性免疫不全症等の感染症の患者に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め、これを教訓として今後に生かすことが必要である」と書いてあるじゃないですか。

 

感染症の拡大を防止するためには感染症の患者の人権を制限しても構わない、という考え方が、らい予防法の大きな間違いでした。だから、二度とくり返さないように意識を変えるべく取り組ませるのが厚労省の役目のはず。2003年に熊本県内で発生したハンセン病回復者ホテル宿泊拒否事件をよもや忘れたのではあるまいな。今もハンセン病差別は存在しているし、啓発なんて全然行き届いていない。こんなとんちんかんな法律、時間かけて作り上げてる場合かってんだ。てやんでぃ。○×#■*○---!!!!!

 

今日、ハンセン病問題、衆参両院議員懇談会の合同総会を傍聴しました。

宿泊拒否の被害者として、竪山勲さんは冒頭「旅館業法改悪に大いなる恐怖感を覚える」と話されました。

以下、要旨。

「宿泊拒否事案がおきた際、差別文書が多数送りつけられたのは89年間にもわたり、国辱、民族浄化、社会防衛のためとらい予防法で差別してきた結果。「宿泊拒否」がどれほどの重みのある言葉か、自分たちを排除してきた言葉、人間を差別する言葉である。排除してきた歴史に逆戻りするようで受け入れがたい。法律はひとたび作られれば、廃止や改正するのは難しく、拡大解釈される歴史的事実をみてきた。法律は、全ての人を幸せにするものでなければならない。排除の論理を入れるのではなく、感染症の人を守るという視点に立ってもらいたい」

 

竪山さんの言葉、厚労省の人たちに届いてますか。政府に届いていますか。

 

ハンセン病訴訟弁護団の徳田靖之弁護士の意見書にもとづき、どこが問題なのか整理します。

 

①感染症の患者等に対する偏見差別を助長する

 

②立法事実が存在しない

コロナ感染拡大過程において、旅館においてクラスターが発生した報告、宿泊客から旅館従業員への感染が起こったという報告はない。むしろ、ホテルの気密性、個別性から軽症者の療養施設として活用されてきたじゃないですか。

 

③障害者差別解消法の趣旨に反し、障害のある人に対する宿泊拒否を拡大する恐れがある

改正案では「宿泊しようとする者が営業者に対し、その実施に伴う負担が過重であって他の宿泊者に対する宿泊に関するサービスの提供を著しく阻害するおそれのある要求をくり返したとき」は宿泊拒否できるとしている。

えっと、どれが主語?その実施?なんとわかりにくい文だろうか。それは、さておき。どんな人を想定しているのかというと、長時間威圧的にクレームをつける迷惑客のことらしい。「負担が過重」「等」、がこわい。どうとでも拡大解釈可能。現状でも、補助犬を伴っての宿泊や大型車椅子の利用者に対する宿泊拒否が少なからず発生しているわけです。旅館側の負担が過重であるなら宿泊拒否してもいいよ、と法律が認めるというのはどういうことだ?障害者差別解消法では合理的配慮を事業者に求めているわけで、逆行する考え方といえる。

 

差別につながらないようにするため、従業員に対して必要な研修を行うよう努めなければならない、とあるけれど、そんなことやると思う?それでなくとも、ようやく客が戻ってきて超忙しいというのに。

 

コロナじゃなくても熱は出る。そもそもコロナの症状があって熱のある人は旅行に行かない。熱や咳があってコロナのおそれがあるからと、医療の専門家でもないホテルの人の判断で病院送りって・・・。こんな乱暴な法律ありえないです。コロナ初期は誰もが不安で様々な差別も起きた。パニック状態だった。でも、もう3年目。マスクも外そうよという段階。旅行支援もはじまった。なんで今、こんな法律通す必要があるの?感染対策の国や行政のルールに則ってやればいいことでは?迷惑客は警察案件では?人権を制限する法律を作るときは、よくよく、よくよく考えて。

すでに、日弁連、日本自閉症協会、日本障害者協議会、等から反対声明が出されています。もちろん、ハンセン病訴訟弁護団もカンカンです。私も怒っています物申す ぷんぷん。

絶対に、阻止しましょう。

 

ZOOMを使って配信されました。

竪山さん、鹿児島から島根で講演して、今朝3時に東京に着いたとか。

おつかれさまでした。