― 蘂取村の水事情

蘂取村では、生活に欠かせない水は主に山から引いて利用されていました。


海岸沿いの山すそに家々が建ち並んでいたため、山間からトイを使って水を引き、キツというコンクリートの水槽にためて使う工夫がなされていました。

村には井戸もあり、五、六軒ごとに設けられていました。

天秤を使って水を運ぶのは子どもたちの役目で、水を運ぶ量が増えていくことは成長の証でもありました。


運ばれた水は家の中のカメにためられ、飲料水として大切に使われていました。


しかし、場所によっては井戸の水は塩辛く、飲用に適さないこともありました。

そのため、山の湧き水や引き水が、貴重な飲料水として利用されていました。


また、水は飲用にとどまらず、暮らしのさまざまな場面で活用されていました。

水槽や桶にためた水は、野菜を冷やしたり、洗濯などの生活用水として使われ、水に当てることで野菜がより冷たくおいしくなるといった工夫も見られました。

冬になると、水の確保はさらに難しくなります。

水槽の水だけでは足りず、川の水を汲んで使うこともありました。

こうした中で、飲み水は特に大切に扱われ、用途によって使い分ける知恵が、住民の間に自然と根付いていました。


参考資料

『われらの北方領土』


岩田省三『年輪』


蘂取村島民 河口キワ 鈴木咲子 山本忠平 談