世の中の成功者と呼ばれる人に習慣をお聞きすると、その口から必ずと言っていい程「親やご先祖に感謝をする」という言葉が出てきます。一体なぜなのでしょうか。

 



一方で、マナー研修や個人レッスンの折に、学生の皆さまや社会人の方からこんな悩み相談を受けることがあります。

「卒業後、本当にやりたいことが見つからない」
「今の仕事が自分に合っているかどうかわからない」

自分やお子様の人生に素敵な花を咲かせようとみんな一所懸命です。
「時代が激変する中、生き方の選択肢が増え、自分らしく生きたい!」

 

 

でも、なかなか先行きが見えない。根無し草のようにふらふらしていて心もとない。根っこがしっかりしていないのでちょっとした風雨ですぐに倒れてしまう・・・!
かつての私もそんな一人でした。

こんなお話があります。

かつての日本では、父親が子どもを叱るとき、「〇〇、私の部屋に来なさい」と言って呼び、「座りなさい」と座らせました。それから叱るわけです。

父親では手に負えないという場合も当然ありました。そんなときはどうしたのでしょうか。父親の意見が効かない場合は、仏間の薄暗い部屋があって、そこにお祖母様が神妙な顔で座っています。

戦前、一家の家長である父親の権威は大変なものでした。その家長の権威でも通用しないとなると、お祖母様が登場するわけです。しかし、お祖母様は声を荒げて叱ったりはしません。ただそこに座っているだけ。仏壇をバックにしたご祖母様が、

○○家の息子ともあろうものが、ほんに情けない」と一言。

 

 

これは、子ども心にかなりのインパクトです。

なぜならば「お祖母様の背後には無数のご先祖様がいらっしゃる。もし仮にお祖母様に忠告を受けても聞かなかったら、ご先祖様に叱られる」ということを、子どもは知らず知らずのうちに感じ取りました。

仏壇には観音開きの扉がついています。通常は開けてあって、そこにいつも水をあげたり、掃除をしたりします。つまりはご先祖様が棲む部屋なのです。

昔の家屋には『父親祖母ご先祖様』という素晴らしい連携プレーが働く設え(しつらえ)がありました。昔の日本人は、まさに「先祖と暮らす」生活を送っていたのですね。
 

“叱る”という話を例に挙げましたが、私は、ここに素晴らしい生命のループを感じます。

 

 

仏壇の前に座ったときに感じる温かさ、あるいは背筋が伸びるような気持ち、自分の居場所といった感覚。それは、ご先祖様の姿に他なりません。
余談ながら、私は仏壇の前や読経の音が本当に好きだな…と再認識しています。皆さまはいかがでしょうか。
 

戦後の日本人は、「家」から「個人」への道程をひたすら歩んできました。たしかに戦前の家父長制に代表される「家」のシステムは、日本人の自由を拘束してきたという一面はあると思います。その意味で、戦後の日本人が自由化、個人化してきたことは悪いことではないと思います。しかし、個人化が行き過ぎたあまり、多くの日本人はとても大事なものを失ってしまったように感じます。

それは生きる根っこ、ルーツです。その中の重要なもののひとつが先祖や子孫に想いを馳せることです。

 

 

激増する凶悪犯罪や痛ましい自殺などの行為も、この個人主義から始まった「個の意識」すなわち「自我」の肥大が原因のひとつにあると思います。たとえば、犯罪という行為を行う前に、「ご先祖に申し訳ない」「子孫に迷惑をかける」という意識が強く働いたならば、その行為を止めることができるのではないでしょうか。

自分だけのこと、自分の身近な周囲のことで頭がいっぱいになっているときは、とても息苦しく感じるのに、ご先祖様から子々孫々とつながる流れの中に自分がいると思うと、深く息が吸えるような思いがします。

 

「私とは先祖の集合体である」

原始の時代から、日本人は先祖崇拝を根底に生きてきました。私たちは、先祖、子孫という連続性の中で生きている存在です。遠い過去の先祖、遠い未来の子孫、その大きな河の流れの「間」に漂っています。

 

 

「自分は自分ひとりのものではない」
「過去と未来をつなぐパイプ」


そう思うと、心が穏やかになりませんか。
全体の中の自分の役割を冷静に俯瞰して捉えることができるからです。そして、現在取り組んでいることがご先祖様の意志を受け継いでおり、次世代の子どもに繋がっていく・・・と思うことができれば自然と力が湧いてくるのではないでしょうか。

これこそが、日本人のメンタルを強くする秘訣のひとつであると考えます。

 

 

絶え間ない不安を生み出す「自我」の力をコントロールする鍵、日本人の素晴らしさを引き出すヒントは、私たちの家庭の中にあります。

核家族化が進んだ現代社会ですが、折に触れて親御様やご先祖様へ思いを馳せ、感謝の気持ちを伝える機会を増やしてみましょう。

 

いよいよ新年度スタート!
自分軸を整えて、新しい一歩を踏み出してみませんか。

ユウキアユミワールドアカデミー
クォンタムヴォイスアカデミー
校長 由結あゆ美