Ferryどうも。

 

「あんのこと」は、行くかどうか迷ってます。アト6の宇多評も聞きましたけど、どうかなあ...って感じです。河合優実はちょっとインフレだし。 ローファーの時代っていうのは、カジュアルセットアップの隆盛と関係あるんだろうね。当方最近は専ら、一枚革のモカシン(ランコートってとこの。これ楽ちんでいいのよ)かオールデンのローファー(雨が一滴でも降りそうだと履けないけど)かトップサイダーのデッキシューズですか。あ、これからはほぼサンダルになりますが笑。 ニュージーランド行きの前にヤクオクに放出してしまった、J.M.ウェストンの「ゴルフ」を取り戻したくて種々のポイントを貯めているんですが、為替の力は圧倒的で、どうにもなりましぇんね。履いてた当時(2000年代前半)は、言うても8万円くらいでしたが、今は、17万円っすよ!何がどうなるとそうなんの! バカバカしさを感じてます。手放さなきゃよかったーー。

 

 

 

蛇の道」 ('24)

 LE CHEMIN DU SERPENT

 黒沢清 脚本、監督

 オーレリアン・フェレンツェ 脚本

 高橋洋 オリジナル脚本

 柴咲コウ、ダミアン・ボナール、

 マチュー・アマルリック、

 グレゴワール・コラン、

 西島秀俊、青木崇高

 

 『8歳の愛娘を何者かに殺された

 アルベール・バシュレは、心療内科医

 ・新島小夜子の協力を得て、事件に

 関係していると思しき児童福祉団体

 ”ミナール財団”の元会計係ティボー・

 ラヴァルを拉致監禁する。小夜子と

 2人で容赦ない拷問を繰り返し、

 ラヴァルから少しずつ証言を引き出

 し、真相に迫っていくアルベールだっ

 たが...』(allcinemaサイトより)

 

 ’98年製作のVシネマ「蛇の道」の

 黒沢清監督自身による、舞台をフラ

 ンスに移してのセルフリメイク作。

 オリジナル、うろ覚え程度の状態で

 臨みましたです。

 いやあー。キた。ズシンと。場内

 明るくなってもしばらく立てなかっ

 たくらい。う、うわあぁ..でした。

 

 因みにsnakeは生物一般としての蛇

 の意で、タイトルにあるserpentは

 蛇ヘビというよりはジャで、大蛇、

 またはプラスして邪悪なもの みた

 いな意味も入ってくるらしいです。

 「蛇の道は蛇」って諺があるじゃな

 いすか。即ち「同類の者のすること

 は、同じ仲間なら容易に想像できる

 ことの例え。またその道の専門家は、

 その道をよく知っていることの例え」

 っていう。詳しくは申しませんが、

 本作は正に、何をかいわんや で、

 そういう話です。暴力は暴力しか生

 まないって話だし、本当の”底の無さ”

 が見えてしまう終幕には、戦慄しか

 なかったです。

 このラストの切れ味よっ!

 

 「キュア」「贖罪」「復讐 THE

 REVENGE」シリーズ、「クリーピ

 ー 偽りの隣人」もそうか。”人間

 が、やはりいちばん恐いです”な

 ボクの大好きなラインの黒沢清作品

 に連なる、傑作と思います。

 

 オリジナルもたしかそんな感じでし

 たけど、ミステリーというか、冒頭

 いきなりから映される、人物たちの

 禍々しい行動が、一体なぜこのよう

 な?が明らかにされないまま、淡々

 と凶行が繰り返されるので、全く

 楽しくないですし、時折ギャグやコ

 ントのような描写も挿みながら(こ

 の辺りは北野武映画とも通じる)も

 全くエンタメじゃないので、正直、

 我慢が必要だったりしますけど、

 何でしょうね、好きなんすよね。

 この雰囲気、緊張感というか。黒沢

 清作品の。今作も当然、廃墟、

 廃工場、倉庫、古びた物置きなど、

 いつもの舞台装置が揃ってますし、

 今回は廃遊園地まで出てきてました

 (笑)。また、画面の黒いところか

 らふうっと人間が浮かび上がるシー

 ンとか、ほんとたまらなく好きなんよ

 (笑)わたくし。

 

 柴咲コウ、素晴らしかったですね!

 こんなに大量のフランス語を話す

 日本人、初めて観ました(笑)。

 あと西島秀俊の、尋常じゃない

 圧倒感。狂気。半端なかったです。

 

 テーマ的に、奇しくも「関心領域」

 とも通じ合ってると思いました。

 本当はうっすら分かっているのに

 己の保身やお金?のために、無自覚

 を装って悪事に手を染めてしまう

 ことの断罪 というかな。

 

 → と、ここまではオリジナルうろ

 覚えの状態での感想。気になっちゃ

 って、アマプラのカドカワが2ヶ月

 99円で入れたから、オリジナルを

 観直してみました。

 以下、オリジナルとの比較を中心に。

 

 <ネタバレ>

 一番の改変点は、新島役が男性(父

 親)から女性に変わっているところ

 なのですが、’98年版にある、ヤク

 ザ内タテ社会構造だったり、暇つぶ

 しのゴルフとかはアレとして、その

 他の部分、プロット的なところは、

 かなり、変わってなかったです。結

 構そのまんま。

 ただねえ、この新島を女性にしたっ

 ていう改変点の意味は、大きいと思

 います。

 オリジナルはVシネマで、ほぼ男性

 がターゲットというのもあったから

 なんでしょうが、新島(哀川翔)の

 妻=娘の母親の存在は不自然なほど

 オミットされてましたからね。むし

 ろホモソーシャル感、新島(哀川)

 と宮下(香川)の関係に漂う、の

 方向に、Vシネのマナーとして意図

 的にもっていってるのかもしれない

 んですけど、妻(及び母)をオミッ

 トしたことで基本的には”男の世界”

 な話になってしまって、狭い感じは

 しちゃうというか。あと、父親の、

 娘に対する愛情って、誤解を恐れず

 に言えば、かなり危ういものとも

 いえるわけで、ちょっとアレな話な

 んすよね。客観的には。

 

 要するに今回の改変では、ジェンダ

 ーという視点が入ったわけです。

 それによって本作、新島小夜子(柴

 咲コウ)という女性に対する男性側

 からの様々なアプローチが描かれます。

 ・仏語を解さない日本人女性は親切

 にしなければならない対象(会計係

 マチュー・アマルリック)

 ・とかく排外的な異国の地で専門職

 として開業し、長く続けられている

 彼女に対し、強烈な劣等感を抱き、

 ひいては己自身への蔑みに繋がって

 しまうがゆえ、嫌悪する態度(患者

 西島)

 ・混乱(実はこの混乱にこそ問題が

 あるわけだが)から自分を救ってく

 れた恩人。やがて恋慕も抱く(アル

 ベール)

 ・繋がり、絆を強調。壊れた夫婦関

 係を雑に修復しようと試みている

 (夫 青木 ..奇しくも「ミッシ

 ング」の夫とキャラクターが近い)

 と、新島を女性にすることで、様々

 な形の男性の抑圧が見えやすくなっ

 たのだと思いました。

 然して、新島が女性になったことで

 迎える驚愕のラスト。これによって、

 ’98年版の「蛇の道」が描いたのは、

 人間の禍々しさ だったのが、本作

 では、人間の禍々しさを、時代の

 禍々しさが超えてしまった みたい

 な感覚を覚えましたかねえ。格好つ

 けて言うと。

 

 アルベールの奥さんも既に、取り込

 まれてしまっている”悪のシステム”

 みたいなところは、村上春樹が呈示

 する「ワタナベ的なモノ」を感じま

 したし、近親者、我が子であってさ

 えも、”その愛情は、不確かなもので

 ある”みたいなところは、「キュア」

 の、恐わあいところとも相通じてま

 したねえ。 ★★★★

 

   蛇の道 : 作品情報 - 映画.com

 

 

 

そんじゃまたね。

チャオ。