Ferryどうも。

 

ネットフリックスの韓国製ドラマ「D.Pー脱走兵追跡官ー」の話をしなければなりません。シーズン1(全6話)は’21年に配信され、既にかなりな評価、人気になっていたようです。シーズン2(全6話)が’23年に配信されたタイミング(といってもちょっと時間は経ってますが)で両方をこの度一気視しまして、いやあ~ スゴく、好かったんです。脚本と監督はハン・ジュニさんという方で、キム・ボトンさんという方のウェブコミックが原作のようです。タイトル副題の通り、「韓国軍内の脱走兵を捕まえる任務を担った兵士(二等兵)が、それまで知らなかった様々な”現実”と向き合う物語」です。このような作品が、配信作とはいえ製作されるなんて、日本では考えられないです。自衛隊内の不祥事が”作品化される”のみならず、それらを隠蔽しようとする上層部の姿など、描かれるわけがないですもんね。恐らく今後も。 国の制度を根幹から揺るがす力をもつ作品ですし、それを、一級の娯楽作品として物した、製作陣、役者陣に、敬服します。現在進行形の切実な問題を描いているので、非常に勇気がいることだと思いますし、強い気持ちで皆が思いをひとつにしないと成し得ない作品と思いました。 ただそういう、”巨悪な組織の論理に個が立ち向かう、超・社会的な告発作品”という側面をもちながらも、ボクが観ていてずうっと感じてたのは、これって、超ハードコアな「前略、おふくろさま」だなあ なんすよ。ホモソーシャルの極北な環境で、且つ韓国の青年男性の誰もが逃れられないデフォルトとして存在する軍という組織を舞台にした、人生訓というか人情噺だと思うんすよねえ。特にシーズン1の「認知症の祖母を守護するために脱走する兵士」の話 だったり、シーズン2の「トランスジェンダー歌姫」の話は、深く心に沁みます。ネタバレしないようにいいますが、シーズン1のクライマックスは、壮絶です。すごい、エモーショナル。 シーズン1,2を通して通底する、ある種「原点」になっているので、シーズン1の第1話は非常に重要になってきます。しかとご覧になって下さい。度々、この「原点」に戻る、回帰するということを繰り返す、その姿勢がまた、いいんだよねえ。 主役のアン・ジュノを演じるチョン・ヘインは、いわゆる”子犬系”っていうんですか、母性本能をくすぐってくる愛くるしさが魅力ですね。彼とバディを組むク・ギョファンも、他の出演作とはちょっと違った、繊細さが魅力になってます。そしてパク・ボグム中士のキム・ソンギュンも、素晴らしい。ソン・ソックも、イイですねえ。 ★★★★ 

TVシリーズで、昨年に配信の作品ですが、「ノーマル・ピープル」「ダーマー」のように、また今年のベスト10に入れてしまうかもしれません💦。 結構ハードな描写が多いんで覚悟はいりますが、ネトフリ再加入の折には、mustでお願いします。

 

 

 

Saltburn」 

 ('23末 AmazonPrime配信)

 エメラルド・フェネル 製作、脚本、

 監督  リヌス・サンドグレン 撮影

 (「バビロン」「ドント・ルック・

 アップ」「007/No Time to

 Die」「バトル・オブ・セクシーズ」

 「ファースト・マン」他)

 マーゴット・ロビー他 製作

 アンソニー・ウィリス 音楽

 バリー・キオガン、ジェイコブ・

 エローディ、ロザムンド・パイク、

 リチャード・E・グラント

 

 『オックスフォード大学に入学した

 オリヴァー・クイックは大学生活に

 なじめないでいた。そんな彼が、貴族

 階級の魅力的な学生フィリックス・

 キャットンの世界に引き込まれていく。

 そしてフィリックスに、彼の風変わり

 な家族が住む大邸宅ソルトバーンに

 招かれることとなるのだが...』

 (AmazonPrime)

 

 「プロミシング・ヤング・ウーマン」

 のエメラルド・フェネル監督の最新作。

 前作と打って変わって、英国の名門

 大学や貴族が住む大邸宅が舞台で、

 陰影の濃いクラシカルな風格を漂わせ

 ながら、しかし描かれてることは前作

 同様、かなりのドギツさ、人間の欲望

 のえげつなさ でした。

 

 前記あらすじの通り、話としては学園

 内カースト話、言ってしまえば何百回

 も観てきた聞いてきた話ではあるんだ

 けど、こういう話って、時代や空間を

 超えて、人間社会が続く限り恐らく

 ある普遍的な話で、特に大多数の

 ”オリヴァー側の人”、オレも含めた

 ”持たざる側の人”にとって、痛いとこ

 突く話でねえ。オレも結構、大学入っ

 た頃、本作のオリヴァーと同じような

 屈折した感じあって、いろいろ恥ずか

 しいコトあったこと思い出したりまし

 た。あの頃の連中、どうしてんでしょ

 うか。

 

 「プロミシング~」もそうでしたけど、

 エメラルド監督、手際がいいんですよ

 ねえ、全てに於いて。分かり易いの。

 ズバズバっと。カット割りのテンポも

 やたらと速くて。超速の語り口という

 か。 話の仕掛け方もいいっすよねえ。

 オリヴァーの実家の真相が明らかにな

 る件り(貴族育ちのボンボンの無神経

 さも相まって)とかすんげえ意地悪っ

 !(笑)誰がこんな地獄考えました?

 (笑)。

 

 で、これはもう、充て書きでしょ!

 っていう、オリヴァー役のバリー・

 キオガン(「ヨルゴス・ランティモス

 「聖なる鹿殺し」や「イニシェリン島

 の精霊」他。既に若くして怪優の風格)

 が凄すぎ。バリー・キオガンのために

 あるような作品と思ったほど。

 フィリックス役のジェイコブ・エロー

 ディも、初めての方でしたけど、かな

 りなハマりっぷりで。これは今後、

 ブレイクするでしょうな。

 最後の帰結にもビックリ! そりゃあ、

 観客としてフィリックスの家族たちを

 紹介されたとき、良く言えばデカダン

 スな、悪く言うとその人間性の浅薄さ

 に、ボクもちょっとだけ、殺意を抱き

 はしましたけども(笑)。にしても

 まさかこんなオチになるとは!

 痛快!なのか?(笑)

 

 所々で挿まれる、ギョっとするショッ

 ト、汚物がぶちまけられた洗面台とか

 丸焼きにされている豚のカッと見開か

 れた眼 だとかが、実に効果的で。

 あと”バスタブのあそこ”とか、”血を

 すするあそこ”とか、最早正気じゃな

 いです(笑)。

 ポップで毒っ気に溢れて、キレのいい

 怪作&快作。おすすめ。 

 (ほんとは★★★★だけど、なんか

 憚れる(笑)んで) ★★★1/2

 

   Saltburn 映画 動画配信 オンライン 視聴 さん

 

 

 

 

 

ミツバチと私」 ('24)

 エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン

 脚本、監督

 ソフィア・オテロ、パトロシア・ロペス

 ・アルナイス、アネ・ガバライン

 

 『第73回ベルリン国際映画祭で、主演

 のソフィア・オテロが史上最年少の

 8才で最優秀主演賞(銀熊賞)を受賞

 したドラマ。性自認で苦悩するこどもが

 養蜂場でミツバチや自然と触れ合いなが

 ら自分と向き合い<本当の自分>を探す

 葛藤と、寄り添う家族の物語』(仙台

 フォーラムHPより)

 

 「アト6ー2」の宇多評ガイドがだいぶ

 助けになりました。宇多氏言うところの

 ”呼び名についての映画”である本作、

 主人公の”呼び名”、バスク地方では

 アイトールが男子につける典型的な名前、

 ココは”こども”みたいな意味で名前とし

 ては有り得ないもの、っていうことは

 予め知っておくのとそうでないのとでは

 映画への入り方が違ってたと思いました。

 

 ミツバチの生態と性自認との関係云々

 に関しては正直あんまよく分かんない

 のですが、ボクは本作、どうしたって

 ”家族なるものについての話”として観ま

 した。オレは本当にこどもに向き合って

 これたのか?と自問せざるを得ませんで

 した。無意識で”型に当てはめてきた”

 こと、なかったのか。面倒臭がって、

 彼らの無軌道な行動、言動を受け止めな

 いでやりすごしてこなかったか?なんか

 いろ~いろと考えてしまいました。答え

 は永遠に出ないことなんだろうけど。

 

 宇多氏は、「あの〇〇が最後、アイトー

 ルのことを〇〇!って呼び叫んで探し求

 めたところで涙腺決壊」って云ってまし

 たけど、ボクはその直前の、どうしても

 父親目線になるんでしょうね、他人に

 ”女子のような恰好をした息子”を見られ

 るなんて真っ平ごめんだ!って怒ってた

 父親が、「生きていてくれたら呼び名

 なんてどうだっていい」って我を失う

 ところで、決壊でした。おれ、ここが

 最弱ポイントなんだよねえ。父親には

 なったことない菊地成孔が以前ラジオで

 (あれ震災のときだなあ)「生きて

 無事でいてさえくれたら、塀の中だろう

 が構わないって思うのが親」って云って

 て、いざ親になってみて、あ、本当そう

 だなあって思う訳よ。数少ない真理の

 ひとつだなあって。で必ず、泣いちゃう

 の。なんだか。恥ずかしいんだけど。

 ★★★

  

    映画『ミツバチと私』“本当の自分”を探す子の葛藤&寄り添う家族の物語、主演は9歳のソフィア・オテロ - ファッションプレス さん

 

 

そんじゃまたね。

チャオ。