妹は水戸に住んでいた
2011年3月11日、東日本大震災、福島原発事故
その年の夏、今頃だったか
「福島の桃、食べる?」と電話があった
毎年、送ってくれていた桃
福島産だった
「食べるよ」「放射能心配してないよ」「歳だもの」
福島産の海産物・農産物は、被爆していると
危惧され、敬遠されていた
「桃と染付け皿」 36×27
二人住まいに、20個もの桃が届いた
箱には、「福島産」と表示されていた
開けると、部屋いっぱいに芳香が広がった
それは、妹の好意だった
パステル画を描いた 香りも描いたつもり
皿、敷布ともに、バックを選択ミスしてしまった
その妹は、もういない
福島の桃も、しばらく、見ていない
パステル画が残って
寂しさだけが、身に纏いつく