私の教師として、校長としての心構えを
本にして、「義文録」と名付けた。その抜粋です。
(S中、卒業文集への寄稿 45歳頃)
暖冬の所為か、松の内というのに君子蘭の根元が膨らんで
薄緑の芽がのぞいている。
この君子蘭は十二月になると外の寒さを避けて家の中に入ってくる。
実は、この君子蘭には、いわくがある。
五、六年前、卒業生を送り出した三月末のある日、
家の玄関の三和土の上に誰かが置いて行ったものである。
その当時は、数日間「誰が」「なぜ」などと憶測してもみた。
それから、この時期が来ると、憶測がしばらく繰り返された。
触れると傷つきそうな花芽が真っ直ぐに高々と伸びて、
黄紅の花が濃緑の厚葉と見事な対照を見せるまでは、
二カ月ほどかかるのである。
この君子蘭も、新学期が始まる頃、
また、元の葉だけの姿に戻って春の戸外へと出て行く。
(注) 大層、高貴な名前、英国の貴族に因んだらしい。
