グレイテスト・ショーマンが人気だ。
自分の周りでも観てきた人、感動した人が多い。
主演のヒュー・ジャックマンと言えば、
同じミュージカル映画「レミゼラブル」を思い浮かべる人も多いだろう。
レミゼと今作、一番大きな違いは前者が158分で、後者が105分という尺の違いだろう。
重厚過ぎず、すっきり観られるのはいい映画の証拠だと思う。
(別にレミゼが悪いわけではなく)
※以下、ネタバレを含むので、観てからお読みください。
物語は主人公の幼少期から始まる。
19世紀アメリカの実在の興行師P・T・バーナムは、
幼い頃から貧しい暮らしを余儀なくされていた。
彼の立ちはだかるのは、お金持ちと貧乏人の、埋められない格差である。
この物語には一貫して、格差、差別、偏見などの重いテーマが横たわっている。
19世紀らしいといえばそうだが、
そこに抗う手段として、彼が斬新なエンターテイメントを武器にしている点がいい。
映画の中で、古典芸術(クラシック)に浸透している金持ちたちの鼻をあかすシーンはいくつかあるのだが、
なんといっても見ごたえは黒人女性・キアラセトルの歌だ。
それは「虐げられてきた者」たちの魂そのものだった。
「わたしたちは戦士 戦うために姿を変えた」
「気をつけろ 私が行く」
歌詞と、メロディと、シチュエーションがすごくいい。
扉を開ける(メタファーではなく、文字通りに)アクションと、
決意に塗り固められた表情(演技)に、説得力がある。
先行作品で言えば「アナと雪の女王」のアナが、氷の城を作ったときに似ている。
いい意味での開き直り、全力全開の自己肯定である。
私たちは多くのコンプレックスと戦いながら生きているが、
時々こうして、誰かがそれをぶち壊してくれると、
溜飲が下がるのだから本当に不思議だと思う。
ザック・エフロンの長すぎる睫毛が気になるのはいつものことだから置いておくとして、
本当にいい映画だと思う。
一つ惜しむらくは、1時間45分の尺にしては、途中でドラマを詰め込みすぎた点だけだろう。
途中で主人公が完全に消えてしまう(観客の意識から)のはもったいない。
冒頭で丁寧にP・T・バーナムの半生を見せているだけに、である。
群像劇にしたいならば、やはりレミゼのように2時間38分は必要なのだ。
いつかは、朗読パンダ・ザ・ミュージカルを。