「毎日新聞」2024年7月7日付け朝刊 社説転載

 

 ネット交流サービス(SNS)の広告で投資を呼びかけ、お金をだまし取る詐欺行為が横行している。巨大IT企業には、根絶に向けた対策を講じる責務がある。

 

 動画や画像で著名人や投資家をかたった広告からLINE(ライン)などのアプリに誘導し、投資話を持ちかける。人工知能(AI)で作成した偽動画は、本物との区別が難しい。ネット上の架空口座で利益がでているように見せかけて何度も振り込ませ、4億円超をだまし取ったケースもある。

 SNS型投資詐欺と呼ばれ、昨年後半から急増している。今年1〜5月は3049件、被害総額約430億円と昨年の総額を超えた。

 

 政府は6月、フェイスブックを運営するべいメタなどに対し、広告の審査基準の策定や公表、広告主の本人確認強化などを求めた。ただ、要請に強制力はない。

 事業者は、責任を回避するかのような予防線を張っている。

 メタは「世界中の膨大な広告を審査することには課題も伴う」との声明を出した。不適切な広告を削除するシステムの改善には限界もあると説明する。

  

 だが、どこまで本気になって対策を講じているか、外部からは分からない。広告のなりすまし動画に使われた起業家が、具体的な詐欺対策の公表を求めてメタを提訴する事態になっている。

 

 プラットフォームビジネスは広告掲載で利益を得る構造である。事業の拡大に応じ、コンテンツの品質管理を強化するのは当然だ。

 巨大ITの技術と資金は、AIで作成した動画の検知といった被害防止策に投じるべきである。

 

 消費者にも金融の知識が求められるとはいえ、何より事業者の責任が大きい。競合サービスが少ない寡占状態にあぐらをかき、問題を放置するなら容認できない。

 

 政府は関連法の改正を視野に、SNS事業者などに有害情報への対処を求める規制強化を検討している。投資の削除は言論や表現の自由に抵触しかねず、慎重な議論が求められる。ただ、営利目的の広告はそれとは区別すべきだ。

 ネットを安心して使うために、実効性のある対策が欠かせない。被害がこれ以上拡大することのないよう、政府は巨大IT企業への監視を強めなければならない。

 

(コメント)

 プラットフォームビジネスやアルゴリズムで労働者を管理するアマゾンなどは、社会的規制から逃れ無法状態を生み出しているといっても過言ではない。

 投資詐欺に対するメタの対応、またアマゾンは偽フリーランスの配送事業者で事業を行っているが、社会保険の脱法行為であることは明白であり、これは社会保障制度を瓦解させることにもなる。

 

 いずれも野放しにするべきではなく、早急に法令遵守と規制強化をすべきだ。