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 スーパーマーケットの青果売り場で働いていた男性(当時61歳)が中皮腫で死亡したのは、天井から飛散したアスベスト(石綿)を吸ったのが原因だとして、男性の妻が労災と認めなかった国の処分の取り消しを求める訴訟を大阪地裁に起こした。第1回口頭弁論が19日あり、国側は争う姿勢を示した。

 

 提訴は4月11日付け。訴状によると、男性は1983年〜2005年、大阪府や兵庫県のダイエー店舗に勤務。特価商品などを知らせる販促広告を天井からつり下げる作業に連日従事した。天井材に金具をねじ込む際に粉じんが降りかかり、石綿が含まれていた可能性が高いという。

 

 男性は退職後の20年5月、石綿を吸い込むことで発症するとされている中皮腫で亡くなった。妻が労災保険の遺族補償給付を申請したが、堺労働基準監督署は21年12月、作業で石綿に暴露したことが確認できないとして不支給処分とした。妻側は訴えで、「男性が石綿を吸引する機会はこの作業以外になかった。中皮腫は業務で発症しており、不支給処分は違法だ」と主張している。

 

 この日、大阪市内で記者会見した妻は「夫は中皮腫になった理由がわからないまま亡くなった。裁判で原因を特定して墓前に報告したい」と述べた。妻側代理人の村松昭夫弁護士は「石綿と縁がなさそうな職種や職場で中皮腫になり、泣き寝入りしている人は多いと見られる。訴えが認められたら対策の見直しが必要になる」と述べた。

 

 厚生労働省は「係争中なのでコメントは差し控える」とした。

【木島諒子】

 

「毎日新聞」2024年6月20日付け朝刊  引用