「毎日新聞」2024年6月18日付け朝刊社説  転載

 

 これで「デジタル化」とは聞いてあきれる。かえって透明性が低下しかねない。

 参院で審議中の政治資金規制法改正案である。岸田文雄首相はデジタル化の推進を訴えてきたが、政治資金収支報告書のオンライン提出とインターネット公表が義務付けられているだけだ。

 

 議員が収支報告書をオンラインで提出する仕組みは既にある。ネットでの公表も総務省と全都道府県選管で実施されている。義務化は無意味ではないが、デジタル化の入り口に過ぎない。

 

 透明性を向上させるためには、公表の方法を根本的に変える必要がある。鍵はオープンデータ化である。現在ネットで公表されている収支報告書は紙の書式をPDFファイルにしただけだ。単語検索や名寄せは難しく、有権者がチェックするには時間と手間がかかる。

 

 オープンデータ化とは、コンピューターが分類、整理できるファイル形式で公開することだ。不透明な資金の出入りが多い政治家をあぶり出すことも容易になる。

 

 国際機関の2017年の調査によれば、米英やカナダ、メキシコなど少なくとも13カ国がオープンデータで公開している。

 総務省と都道府県選管に分かれている収支報告書の公表サイトを統一することも必要だ。

 政党や政治家は複数の団体を持ち、総務省と選管へ別々に届けているケースが多く、全体像の把握が難しい。

 

 立憲民主党、国民民主党などが共同提出した案には、収支報告書のデータベース化や、国会議員関係団体を一元的に閲覧できる措置などが盛り込まれている。

 

 与党案には、情報公開を後退させる内容もある。

 官報や都道府県広報に収支報告書の要旨が掲載されなくなる。官公報把握永久保存されるが、報告書には3年間しか保存されない。

 

 官公報への掲載をなくすのであれば、代わりに収支報告書を永久保存とするのが筋ではないか。

 規制法は、公表の目的を「政治活動を国民の不断の監視と批判の下に置く」ことと定めている。原点に立ち返り、デジタル技術をカネの流れの可視化に生かす法改正にすべきだ。

 

(コメント)

 国民にはデジタル化としてマイナンバーカードに金融資産も紐付けすることで、一人ひとりが持つ金融資産を透明化させることを進めている。

 一方、国会議員はデジタル化名目で公表年数を制限する方向で、ようは隠蔽する方向。

 

 自民党国会議員は自分たちを「王様」と勘違いしているようだ。

 さらに言えば、裏金には追徴課税すら行われていない。