「毎日新聞」2024年4月22日付け朝刊社説  転載

 

 詳しい事故原因はいまだに説明されておらず、住民の不安は増すばかりだ。在日米軍と陸上自衛隊が、輸送機オスプレイの飛行を再開してから約1カ月がたった。

 

 米軍は、昨年11月の鹿児島県・屋久島沖での墜落事故を受け、世界各地で飛行を停止していたが、先月、約3カ月ぶりに解除した。防衛省による関係自治体への説明を経て、日本国内でも飛行が再開された。

 

 整備や手順を変更することで安全に運用できるという。だが、事故原因を「特定部品の不具合」とするだけで、部品の名称も不具合の内容も、米国内法上の制限を理由に明らかにしていない。

 

 現在、国内には計40機以上のオスプレイが配備され、その6割近くは沖縄に集中している。

 安全軽視の再開に、県民からは「納得できない」との憤りの声が上がっている。米軍普天間飛行場がある宜野湾市の松川正則市長は、首相官邸を訪れ、事故原因の丁寧な説明を求めた。

 

 3月末には、沖縄県議会が再開に抗議し、配備撤回を求める決議を全会一致で可決した。地元への説明が「極めて不十分」と指摘し、政府と米軍の姿勢について「基地の運用を優先し、説明責任を果さず、県民の命と安全をないがしろにする」と批判している。いずれも当然の反応だ。

 

 オスプレイは世界各地で繰り返し墜落事故を起こしている。この2年間だけでも4件に上る。

 

 政府は米軍に対し、情報公開を積極的に働きかける責任がある。

 事故が起きるたび、米軍に特別な権利を認めた日米地位協定が障壁となり、日本側が調査できないことが問題となってきた。現場の捜索や事故機の差し押さえ、検証などができるよう、地位協定を抜本的に改定すべきだ。

 

 先の日米首脳会談では、両国を「グローバルパートナー」と位置づけ、共同声明で「同盟は前例のない高みに到達した」とうたった。一方で、オスプレイの事故や地位協定改定などの問題について言及はなかった。

 

 米国に追随しているだけでは、同盟関係は安定しない。政府は住民の不安を払拭するとともに、沖縄の基地負担軽減に向けさらに努力する必要がある。