「毎日新聞」2024年4月14日付け朝刊社説  転載

 

 障害のある人が、ない人と同じように暮らせる社会の実現につなげたい。

 改正障害者差別解消法が施行された。障害者が生活するうえでの障害を取り除く「合理的配慮」が、国や自治体だけでなく、民間事業者にも求められるようになった。

 

 見下すような対応を障害者が受けたり、車いすや盲導犬を使う人が入店を拒否されたりする事例が後を絶たない。

 

 企業や学校、病院、NPOなど、あらゆる場面で意識改革が必要となる。過度な負担にならない範囲で、設備、施設などの変更や、活動に際しての支援に取り組まなければならない。

 

 障害者手帳を持つ人だけでなく、何らかの障害や病気があり、社会に残る障壁によって暮らしにくさを感じているすべての人のための施策だ。

 

 まず、いかに民間事業者への周知を徹底するかが課題だ。内閣ホームページでは、具体例を紹介している。

 研修会へ参加する視覚障害のある人に、移動しやすい出入り口近くの席を確保する。飲食店が、視覚に障害のある人向けに筆談ボードを用意する。車いすの人のために、高いところの商品を取って渡すー。このような取り組みを参考にするとともに、当事者の声に耳を傾けたい。

 

 相談機能の強化も必要だ。

 内閣府は昨年10月、障害者屋家族、事業者、自治体からの問い合わせに対応する「つなぐ窓口」を開設した。今年2月までの相談は827件に上った。

 

 ただし、窓口は2025年3月までの試行的な取り組みだ。常設化が望まれる。

 障害者の希望に、事業者が対応しきれないケースもあるだろう。そのような場合、両者の間に立って、話し合いや歩み寄りを促す仕組みを作ることも検討すべきだ。

 

 差別をなくすことは国際的な潮流だ。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」は、不平等の解消やバリアフリーの実現をうたう。

 障害者に障壁のない社会は、だれにとっても暮らしやすいはずだ。超高齢社会の課題解決にもつながる。社会全体が我がこととして、差別解消の取り組みを進めることが肝要だ。