立川市議会議員研修会 | 立川市議会議員/公明党 高口やすひこブログ

立川市議会議員研修会

4日、市議会委員会室で、『令和6年度 第1回 立川市議会議員研修会』が開催されました。

 

被災したあなたを助けるお金とくらしの話 経済的な被災をしたら知っておきたい支援制度」と題して、銀座パートナーズ法律事務所 弁護士・博士(法学)・気象予報士の岡本 正氏の講義を受けました。

 

ご自身、東日本大震災、能登半島地震等の大地震において、何かできることが無いかと、多くの弁護士の仲間、関係機関等と協力されながら、復興支援に携わられてきた方です。その経験・体験をもとに話されました。現地に行って、聞くことができた被災者の困難は、想像を絶するものだったと、言われます。

 

大災害被災による困難を言語化すれば、建物が壊れる、自宅に住めなくなる、飲み水がなくなる、トイレが流せない・使えない、アレルギー対応の食事がない、避難所で喘息や肺炎が心配、職場まで出勤できない、家族と連絡が取れない、マンションだと避難所に行けない、家の修理や工事はどうすれば、運動不足でエコノミークラス症候群に等々、無数の困難が浮かび上がってきます。

 

その中でも、難問中の難問の1つがお金になります。被災した瞬間から漠然と、不安を胸に抱えることになります。下記の具体的なことを話されました。

 

”買ったばかりの家が流された、配偶者が行方不明です、子どもが高校生になったばかりです、どうしたらいいのですか。”

”家がなくなりました、当面の生活費となる貯金もほとんどありません、当面の生活費をどうしたらいいのですか。”

”一家の大黒柱が亡くなりました、受験を控えた高校生の子どもがいます、大学はあきらめなくてはなりませんか。”

”トラクターや車が流されました、多額のリース料やローンが残っています。このまま支払わなければなりませんか。”

”家が全壊し、電気・ガス・水道・固定電話は使えません、テレビもインターネットも使えません、スマホは使えるが家族全員分の支払いは結構な金額になります、毎月の公共料金はどうしたらいいのですか。”

 

このような相談を受けた時、不明瞭ないい加減なことは応えられません。。。

 

災害ケースマネジメントについて、話されました。被災者一人ひとりの被災状況や生活状況の課題等を個別の相談等により把握した上で、必要に応じ専門的な能力をもつ関係者と連携しながら、当該課題等の解消に向けて継続的に支援することにより、被災者の自立・生活再建が進むようにマネジメントする取組みです。

内閣府 防災情報のページ:災害ケースマネジメント

 

行政支援・復興制度情報、金融・保健等情報、支援団体等の情報が様々あり、また新たに作られてきます。膨大な情報を基礎自治体では受けとめきれず、まして被災者一人一人には、行き届きません。

 

支援する側の各分野の専門家団体、情報収集能力のある組織が、各々の専門情報を収集・整理し、被災者支援に繋げていくものです。また新たに発生する問題・課題等について、支援元に対しフィードバックして対策を求めていくものです。極めて有益な手法と思います。

 

生活再建制度の知識の備え、押さえておきたいことについて、話されました。

住宅が被害を受けた場合、先ずは「罹(り)災証明書」の制度があります。すべての支援の起点になる証明書です。必ず申請してください。自治体は、地震保険会社等との協定を結ぶことも検討することが大事です。

 

そしてほぼ被災者生活再建支援法が適用されるので、被災者生活再建支援金の申請を行ってください、最大で300万円が支給されます。但し、申請期限があります。(令和6年能登半島地震の被災者の生活再建を支援するため、要件を満たす世帯には最大600万円が支給されます。)

 

家族で亡くなった方が生計維持者の場合、災害弔慰金の給付があります。

 

住宅ローン等の支払いが困難になった場合は、自然災害債務整理ガイドラインが利用できるかを、金融機関等に問い合わせすることができます。住宅ローンなどの免除・減額を申し出ることができます。破産宣告をしないで、再建に繋げるものです。

 

公共料金等については、減免措置がなされます。申請をする必要があります。

 

都市部においては、住宅等において、賃貸借のトラブルが無限に起こると、話されました。弁護士会では、「災害時ADR ”Alternative(代替的) Dispute(紛争) Resolution(解決)”」が実施されるとのことです。

東京弁護士会:災害時ADRについて(★現在は実施していません)

 

また所有者不明建物が、ネックになりえます。通常の空き家対策さえ難しいのですが、災害時においては猶更ということでしょうか。

 

被災者台帳(データベース)について、話されました。実際に使えるかどうか、日常で試しておく必要があるとのことです。

 

自治体は、災害救助法が柔軟に使いこなせていないことが多いと話されました。各自治体でスペシャリストの養成をしておく必要があるとのことです。知らなければ、国と交渉ができないということです。

 

終わりに、福田徳三氏の関東大震災時における、復興を主導した帝都復興計画の後藤新平総裁への苦言・忠告「人間の復興」を紹介されました。


私は、復興事業の第一は、人間の復興でなければならぬと主張する
人間の復興とは、大災によって破壊せられた生存の機会の復興を意味する。
今日の人間は、生存するために、生活し営業し労働せねばならぬ。
すなわち生存機会の復興は、生活、営業及び労働機会 ―これを総称して営生の機会という― の復興を意味する。
道路や建物は、この営生の機会を維持し擁護する道具立てに過ぎない。
それらを復興しても、本体たり実質たる営生の機会が復興せられなければ何にもならないのである。
復興第一の標準は、営生機会の復興にあらねばならぬ。
いたずらに形式復興、建築復興、入れ物の復興(総評すれば風袋復興)ばかり考えて、肝腎要めのその中に入って生き、かつ働くべき人間の復興を閑却するが如き現下のやり方は、根本的に改めてもらはなければならぬ。”

 

関東大震災当時において、この主張は驚異的なものです。今尚、輝きを放つものと思います。

 

被災とは、「お金とくらしの困難」。本日は、大変に勉強になりました。ありがとうございます。

 

NHK 佐賀放送局:災害に備える豆知識