環境シンポジウム | 立川市議会議員/公明党 高口やすひこブログ

環境シンポジウム

8日、立川市女性総合センター・アイムで、立川商工会議所主催『第13回 環境シンポジウム Innovation Farm 〜Going green〜』が開催されました。

 

イノベーション ファーム(Innovation Farm)立川”は、立川商工会議所が昨年(2023年)創立70周年を迎えられ、2033年までの10年間を見据えて作成した立川商工会議所のビジョンです。

 

主催者等挨拶があった後、「地域循環共生圏について 〜脱炭素 ✖️ 循環経済 ✖️ 自然再興を目指して〜」と題して、環境省関東地方環境事務所所長の松本啓朗氏より、基調講演がなされました。

 

気候変動等を巡る国内外の動向について、話されました。

1990年に、気候変動枠組条約(UNFCCC)として、先進国が率先して取り組むべきとの認識の下、先進国と途上国との間で、求められる責務や対応を「共通だが差異のある責任」として合意。この当時、世界各国のCO2排出量は205億トン。先進国が約6割を占めています。

 

1997年に、京都議定書として、先進国のみ排出削減目標を定められました。先進国による途上国への緩和・適応の資金供与も定められています。

 

2015年に、パリ協定として、すべての国が排出削減目標をNDC(Nationally Determined Contribution)として作ることを定められました。先進国による資金供与に加え、他の締約国による資金供与も奨励されました。2019年現在、世界各国のCO2排出量は336億トン。途上国が約6割を占めています。

環境省:日本のNDC(国が決定する貢献)

 

パリ協定には「気温上昇を2℃を十分に下回る程度に抑え、1.5℃に近づくように努める」と書かれています。

 

日本の中期目標として、2030年度に46%削減(2013年度比)。長期目標として、2050年に全てのGHG(Greenhouse Gas 温室効果ガス)をネットゼロ(正味ゼロ)にするとしています。同じように各国が排出削減目標を立てていますが、日本のこれまでの進捗状況は、各国と比較しても、真面目に取り組んでいます。

 

ESG金融の拡大について、話されました。

ESG金融とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)という非財務情報を考慮して行う投融資のことです。そのうち、ESG投資が世界的に注目されています。世界全体のESG投資残高に占める日本の割合は、2016年時点で約2%にとどまっていました。その後4年で国内のESG投資は5.8倍、2020年には世界全体の約8%にまで伸びています。

 

ESG投資では、グローバル企業(大企業)は、自らの排出量だけでなく、事業活動に関連するサプライチェーン全体の排出量まで把握しているかを問われます。Appleは、グローバルサプライチェーンに対して、2030年までに脱炭素化することを要請しています。出来ない企業とは、取引しないということです。

 

地域と社会のリデザイン(再設計)に向けて、話されました。大きく、カーボンニュートラル(脱炭素)、サーキュラーエコノミー(循環経済)、ネイチャーポジティブ(自然再興)についてです。

 

脱炭素社会(カーボンニュートラル)に向けて、今後の5年間に政策を総動員し、人材・技術・情報・資金を積極支援、少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」をつくり、脱炭素に向かう地域特性等に応じた先行的な取組を実施するとともに、脱炭素の基盤となる「重点対策」を全国で実施し、国・地方連携の下、地域での脱炭素化の取組を推進するとしています。意欲的な脱炭素の取組を行う地方公共団体等に対して、地域脱炭素推進交付金により支援されます。

 

農村・漁村・山村、離島、都市部の街区など多様な地域において、地域課題を解決し、住民の暮らしの質の向上を実現しながら脱炭素に向かう取組の方向性を示すとしています。2022年から選定が始まり、現在4回行われ、全国36道府県95市町村の74提案が選定されています。宇都宮市・芳賀町のLRT等、注目を集めていると思います。

 

令和5年5月末現在、重点対策加速化事業として、110自治体が選定(29県、81市町村)され、取組例が示されました。また、中小企業における脱炭素化促進に向けた環境省の取組みについても紹介されました。
環境省・経済産業省:グリーン・バリューチェーンプラットフォーム

 

循環経済(サーキュラーエコノミー)は、資源循環と成長の好循環を目指す新たな経済の概念です。もったいない精神でしょうか。これまでの線形経済(リニアエコノミー)では、もはや限界です。
天然資源-->大量生産-->大量消費-->大量廃棄

 

宮崎県の「霧島酒造」の取組みが紹介されました。
原料のさつまいもについて、使用できない芋くずがあります。また製造工程の蒸留では、副産物として焼酎粕が生じます。かつては、大量のゴミになっていました。

 

現在は、芋くずや焼酎かすを細かく刻んで発酵装置へ送り、メタン菌の働きによって発酵させ、ガスを発生。発電事業(さつまいも発電)を展開されています。更に、バイオガスを抽出した後の残りかすを個体と液体に分離し、個体はたい肥化。液体は微生物の働きで浄化後に下水道へ。また、焼酎かすを使用したパンの製造・販売も行われています。これら全てを一社で行われています。素晴らしいですね。

 

ネイチャーポジティブ(自然再興)では、行動目標”30by30 サーティー・バイ・サーティー 2030年までに30%”が示されています。

 

2022年生物多様性条約COP15で公表された、新たな世界目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の一つです。2030年までに、陸と海の30%以上を、国立公園、国定公園など法令によって保護されている地域と、OECM(民間の取組等により生物多様性の保全が図られている区域)により保全していくとしています。

 

民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域を公募、第三者審査を経て、環境大臣が「自然共生サイト」として認定します。2023年10月6日時点で、全国122カ所が認定、公表されています。

 

基調講演の後、3社から具体的な取組みについて、講演されました。

はじめに”スマート農業 立川から発信する「里いもっと!」”と題し、東洋システム株式会社・代表取締役社長 飯田哲郎氏より講演されました。

地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターが実施する中小企業のIoT化支援事業で、公募型共同研究として、「露地での収量予測と最適灌水制御AIエンジンの開発」に取組まれたものです。

 

東京農工大学と産学連携の実証実験で、対象品目は里芋です。高効率で高収量、高品質の作物と環境保全を同時に実現するために、生育・生理状態をIoTセンサーやカメラにて取得し、AIで分析させ、その結果を灌水指示までつなげるシステムを構築するものです。

 

無灌水の場合と比較し、適切に灌水した場合、里芋の成長等が約3倍になったとのことです。

 

次に”ラストワンマイルが地域を潤す立川MaaS”と題し、BRJ株式会社・代表取締役 宮内秀明氏より講演されました。

 

電動キックボード等で注目を集めている次世代型モビリティです。現在、立川周辺で事業展開されていて、街を走っているキックボードをよく見かけるようになりました。

 

ジオフェンシング機能を有し、GPSを使って走行エリアを把握し、特定エリアに入るとストップする安全システムがあります。サンサンロードなどを走行禁止エリアに設定され、自動的に車両が止まるよう制御されています。

 

最後に”三越伊勢丹におけるサーキュラーエコノミーへの挑戦 ~サスティナブルな社会を実現する事業の構築~”と題し、株式会社三越伊勢丹・伊勢丹立川店店長 北川竜也氏より講演されました。

 

三越伊勢丹が自主運営する買取・引取サービス(直営では百貨店初)、アイムグリーン(I'm green)についてです。

 

大手百貨店が、2次流通に取組まれているものです。2次流通と1次流通を戦略的にかけ合わせることで商売が最大化し、1次流通に還流します。その結果としてサスティナブルな社会の実現に貢献するものです。

 

雑駁なまとめになりましたが、国も経済界・産業界も、真剣に地球環境について、再生へ向けて取り組まれていることを認識しました。ありがとうございます。第1部しか伺えなかったのが残念です。