1968年、数々のヒット曲を生み出したアストル・ピアソラと詩人のオラシオ・フェレールの共作の一つ。
「バチン」はピアソラたちが当時よく通っていたステーキハウスの名前。「チキリン」は少年、小僧という意味で、「バチンの小僧」とでも訳せるでしょうか?
実際にバチンの店にはバラの花を売る貧しい少年が出入りしており、ピアソラたちは彼と話をしたり小遣いをやったりすることもあったようです。
その少年を題材にフェレールがその場で詩を書き、ピアソラが即興でメロディを付けました。
当時も、そして現在も存在するであろう貧しい中で懸命に生きていた子供の姿を、フェレール特有の幻想的な歌詞で美しく表現した名曲です。詩的な表現が多く、訳は難しいんですが、日本語ではだいたいこのような感じでしょうか・・・
『毎晩のように汚れた顔で、ブルージーンズをはいた小さな天使が、
バチンの店のテーブルを回ってバラを売る。
月がグリルの上に輝いているなら、月と煤のパンを食べる。
毎日の悲しみの中、彼は夜明けを望まない。
1月6日の祭りの朝、裏返しの星とともに、
「東方の三猫」(「東方の三博士」のもじり?)が彼の靴を盗んでいく。
左の一足と、それからもう一足も!
チキリン!
花束をひとつ俺におくれ
そしたら俺も自分の恥を花に入れて売りに出よう
3本のバラで俺をひっぱたいてくれ
お前の飢えを理解しなかったことを痛みで償うために
チキリン・・・
太陽が上り、子どもらが学校のエプロンを着けるとき、
彼が学ぶのはこれから知らなければならないゼロの数
そして母親に会おうとうろついて、うろついて・・・
でもあんな姿は見たくない
毎日ゴミ箱の中のパンとスパゲティで
飛び去るための凧をつくるのに
結局ここから抜け出せない!
彼は不思議な人、千歳の子ども
彼の中は糸でもつれている
チキリン!花束をひとつ俺におくれ
そしたら俺も自分の恥を花に入れて売りに出よう
3本のバラで俺をひっぱたいてくれ
お前の飢えを理解しなかったことを痛みで償うために
チキリン・デ・バチン・・・』