月麗館 第5話 | 仕事と戯れ言と小説の日々

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「神無月(カンナヅキ)~いたよ~」


「ホントか、睦月(ムツキ)っ」


少年の言葉に、床に寝そべっていた青年は飛び起きた。


少年、睦月は柵に手をかけ、向かいの建物の中を見た。


焦げ茶色をした髪を短く刈り上げ、見た目10歳前後だろうか。


自分の背丈以上もある柵の隙間から、向かいの建物を見る。


建物の中には学生服やセーラー服を着た学生が沢山いた。


睦月の隣に立って、神無月と呼ばれた青年がスボンの中に手を入れて、睦月と同じ方向を見る。


肩まである薄い茶色の髪を一つに縛っている。


細くつり上がった目付きは悪く、着崩れた上着からも乱暴な印象を与えた。


「どいつだよ」


不機嫌そうな声で目の前の建物を凝視しながら睦月に話しかける。


「ほら、あれ。あの4人だよ」


睦月が一つの窓を指差した。


その先には4人で談笑してる雷架たちの姿があった。
そう、二人がいたのは雷架たちのいる学校の屋上だった。


「あ?あいつらか」


ドスの効いた低い声で話しかけられても、睦月は怯まない。


「あの人たちだよ。神無月のほうがよく分かるでしょ」


「あぁ…しかしあいつら何話してるんだ?」


「ん~…分かんないや。ちょっと神無月、あれ使ってよ」


「あ?なんで俺が。めんどくせー」


頭をかきむしった。その勢いで髪を縛っていた紐が取れそうになっていた。


「お前だって似たようなの出来んだろうが」


神無月の言葉に睦月は何故か焦った。


「あれは全然似てないよ!」


「にしたって、あいつらの会話聞き取れることには変わりねぇだろうが」


「でも……!」


「あ?」


神無月はスボンに手を入れたまま、睦月を睨んだ。


「う~」


睦月は神無月から視線を外して指先をいじりだした。


「睦月」


「だって…できないもん」


「あ?」


「まだあの術は使えないもん……」


神無月は深いため息を一つついた。


「お前な…だからあれほどサボるなって言ったろ」


「だって…」


「全く…しゃーねーな」



神無月は再度嘆息して柵から離れた。



「帰ったら練習だぞ」


「うん…」


睦月は渋々頷いて、神無月の方を見た。