12.岸田文雄政権

によると、『(2021年9月、岸田氏は)総裁選で訴える経済政策を発表し、「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」と述べました。岸田氏は「小泉改革以降の規制緩和、構造改革の新自由主義的政策はわが国経済の体質強化、成長をもたらした。他方で富める者と富まざる者の格差と分断を生んできた。コロナ禍で国民の格差がさらに広がった」と強調。「今までと同じことをやっていたら格差はますます広がる。成長を適切に分配しないと格差の拡大は抑えることができない」として、新たな日本型の資本主義を構築すると訴えました。・・・「令和版所得倍増のための分配政策」の4本柱として▽下請けいじめゼロ▽子育て世代の住居費、教育費の支援▽医療、介護、保育などの現場で働く人の所得を増やすための「公定価格」の抜本的見直し▽財政単年度主義の弊害是正、を掲げました。岸田氏は「目指す社会はあらゆる人たちの所得を引き上げることによって一体感を取り戻し、国の一体感、社会の安定を目指していく。米国ですら社会が分断されると民主主義の総本山である議会に暴徒が乱入して破壊行為が行われる。民主主義を守るために格差の問題にしっかりと目を向けなければならない」と主張しました。』

この主張を要約すると、「小泉改革以降の規制緩和、構造改革の新自由主義的政策を転換し、これ以上の格差の拡大を抑えるために、成長の果実を適切に分配し、あらゆる人たち(中間・低所得層)の所得を引き上げる」すなわち”令和版所得倍増計画”です。さらに簡単に言うと、「これまで一人勝ちしてきた投資家・株主の富を一般人に分配する」となります。これは非常に大きな政策の転換でした。個人的には、とうとう待ちに待った政治家が登場した、外資のためではなく、普通の日本の勤労者によりそった政治家が登場した、と思いました。しかし、その後どうなったでしょうか?

岸田氏の目玉政策の一つに金融取得課税の引き上げというのがありました。これは簡単に言うと、これまで株の配当金(利子のようなもの)にかかる税率は一律20%でしたが、それを引き上げようというものです。高所得者ほど、株式など給与所得以外にも収入源を持つ場合が多いので、株式の配当金といった金融所得が全体の所得額に占める割合は当然ながら高くなります。実際年間所得が1億円を超えると税の負担率が低下する「1億円の壁」が発生しています。岸田氏はこれにメスを入れようとしました。つまり年収1億を超える大金持ちに所得に見合う税金を払ってもらおうとしたのです。しかし、岸田氏は2021年10月10日、テレビ番組の出演に際し、金融所得課税を当面の間は引き上げない方針を述べました。

 そして、岸田氏は今年5月上旬に、英国金融街シティの講演で、突然「資産所得倍増計画」を打ち上げました。

https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2022/fis/kiuchi/0531

6月初め、岸田政権は「新しい資本主義」の実行計画を発表しましたが、それについて、

は以下のように述べています。『岸田政権の経済政策である「新しい資本主義」の実行計画が、政権発足から8か月経ってようやくまとまりました。岸田総理は去年、自民党総裁選挙に出た際には、「新自由主義から転換」、「分配重視」を掲げ、具体的には、池田元総理の看板政策にあやかって、「令和版所得倍増」を唱えていましたが、今回まとまった実行計画は、「まず成長ありき」に大きく変質した形になりました。・・・・・・・(岸田氏が倍増すると述べた)資産所得とは、資産(株や預金)の運用から得られる利子や配当のことですから、資産所得倍増と言われても、そもそも貯蓄や投資に回すお金がない人には全く無縁の話です。岸田総理の唱える「新しい資本主義」は、貯蓄や投資に回す余裕資金がない人たちへの分配を手厚くするという話だったはずなのに、そこが、すぽーんと抜け落ちてしまいました』

こういうのを元の木阿弥というのでしょうか?「所得」と「資産所得」とは全く違います。「所得」とは毎月の給料を指しますが、「資産所得」とは株の配当や預金の利子です。岸田氏は、普通の会社員がもらう給料ではなく、配当や利子を倍増すると言っているのです。これで喜ぶのは株式や預金を多く持つ金持ちだけです。成長の結果貯えられた富は分配されず、格差はますます広がります。新自由主義から転換すると言っていたのに、完全に新自由主義に戻ってしまいました。しかし、総裁戦のときにあれだけはっきりと「小泉改革以降の規制緩和、構造改革の新自由主義的政策を転換する」といっていたのに、なぜこんなに簡単に新自由主義に戻ったのでしょうか?この政策転換の理由を岸田氏はきちんと説明していません。新自由主義的政策は米国の要望で始まりました。現時点において明確な証拠はありませんが、岸田氏の変化の背後に米国からの圧力を感じずにはいられません。

 

自民党小泉政権が行った郵政民営化は米国の強い支持がありました。民主党鳩山政権は米国から距離をおく政策を実行しようとしましたが頓挫し、次の菅政権で元に戻り、野田政権、安倍政権、菅政権に引き継がれました。しかし、自民党岸田政権は米国の持ってきた新自由主義を止めようとしましたが、途中から方向転換して再び元通りになり、政権を維持しています。以上、日本の政治は米国の強い影響下にあり、米国の意向に沿った政策しか実行できない、と言ってもいいでしょう。日本は米国の属国であり、その結果日本人は不幸になっている、そう考えることができるのではないでしょうか?