6.内閣府モデル

内閣府モデルについて説明します。内閣府はある経済シミュレーションを使って、公共事業をしても(乗数)効果がないから大幅削減し、消費増税しても日本経済に対して悪影響がないから実施することを決定しました。実は経済シミュレーションというのは前提条件を変えると結果が大きく変わり、正反対の結論が導き出されることがあるのです。たとえば、次のグラフを見て下さい。

乗数効果とは、財政支出の結果どれだけ景気や財政収支上の効果があるかを見ることができる予想値です。内閣府の結果だけ乗数効果が異様に低いことがわかります。この結果だけを見る限り公共投資を継続させても効果がないという結論になります。しかし、他の経済シミュレーションでは乗数効果がプラスに出ています。また、消費増税の実質GDPへの影響のグラフ(以下)を見ると、内閣府のモデルでは消費増税を行ってもGDPはほとんど影響を受けませんが、他のモデルでは大きく落ち込む結果になっているのです。


実はこのモデルは、新自由主義の小さな政府を想定したモデルです。小泉政権になって初めて採用されたもので、それまでは経済企画庁が独自のモデルによってシミュレーションしていたのですが、2001年省庁再編で経済企画庁が内閣府に再編されたのを機に、この内閣府モデルが唐突に採用されたのです。そして小泉政権はこのモデルに従い公共事業の大幅削減を行いました。その結果日本のGDPは上がらなくなりました。』

小泉俊明氏は著書「民主党大崩壊」のなかで、小泉竹中改革を総括し批判しています。以下はその部分の要約です。

『小泉純一郎氏が首相に就任してから、株価(日経平均)が14000円(2001年)から7606円(2003年)に下がりました。その原因の一つが、竹中平蔵金融担当大臣が金融機関に不良債権処理を急がせたことです。この結果金融機関は貸し渋り、貸しはがしを行いました。また、前回説明した会計制度を時価会計に変更したため、会社の資産が減少しました。さらに株の持ち合い(相互保有)を禁止したため、銀行保有の一部上場企業の株式と、企業保有の銀行の株式が大量に放出され株の大暴落が起きたのです。こうした状態で無理に利益を上げるには、人件費をカットするつまりリストラで正社員を派遣社員に切り替える等の手段をとらざるを得ません。それに合わせるかのように2003年6月派遣の期間を拡大した改正労働者派遣法が成立、7月には契約期間緩和へ労働基準法が改正されています。また、この時期自殺者の増加も止まりませんでした。中小零細企業の経営者は企業の借金を自分の命と引き替えの生命保険で、リストラされた人々は住宅ローンの返済を自分の命と引き替えの生命保険で返済しようと考えたのです。

小泉政権は2003年1月からの15ヶ月に35兆円という史上最高のドル買い介入をしました。これらは米国債となり、多くの資金が米国に送られることになりましたが、その資金の一部が日本の株式の購入に使われました。』

日本人に「身を切る改革」を強要し、ダンピングした企業を外資に売り払う。しかもその金の一部を日本政府が用立てていたのです。これでは日本人が貧しくならない方が不思議です。

次は郵政民営化に米国がどのように関わったかを見ていきます。