以下は「公共貨幣」(山口薫)、「公共貨幣入門」(山口薫・山口陽恵)をもとにして書きました。これらの書物は難解で私はきちんと理解しているわけではありません。間違い等ただしてくれる方がおられるとありがたいです。

MMTの理論は、「政府は借金返済に必要な貨幣(円)をいくらでも作ることができるので、国債が円建てであれば、絶対に破綻しない。」ですが、「公共貨幣」(山口薫)は、それは間違いであると主張しています。その根拠は以下のようになります。

日本政府は原則として貨幣(円)をつくることはできません。貨幣(円)をつくることができるのは日本銀行(日銀)です。日本政府ではありません。そういうと、いやテレビで政府・日銀といっているから両者は一体ではないのか、あるいは日銀は政府の所属機関ではないのか、といわれそうです。しかしその考えは間違いです。日銀はジャスダックに上場されている株式会社、つまり民間銀行です。ただし株式の55%は日本政府が保有しています。ならば日本政府の子会社のようなものだ、と思う人もいるかも知れません。しかし日本政府以外が45%も株式を持っています。持ち株比率が33.4%(3分の1)を超える株主は、株主総会の特別決議を単独で否決する権限を持ちます。簡単にいうと、日本政府は日銀の運営を何でも自由に行うことができるわけではありません。政府は日銀の運営について他の株主からかなりの制約を受けるのです。それでは日本政府以外の日銀の株主はだれでしょう?「公共貨幣」(山口薫)のp68によると、

『日銀出資証券の構成割合についてジャーナリストのベンジャミン・フルフォード氏は次のように述べています。2007年に日本銀行が公開した株主構成は、政府出資者55%、個人39%、金融機関2.5%、公共団体等0.33%・・・・なかでも39%を占める個人がいかなる人物であるかは、一切明らかになっていない。つまり、日本銀行の株主は誰なのかについてはほとんど情報がなく、大手メディアは一度たりとも報じていないタブーなのだ。私(フルフォード)は日本銀行の元総裁を含め、複数の情報源に当たることでタブーを破った。日本銀行の大口株主であり、支配権を握っているのは、高齢ながら現在もロックフェラー家の当主に当たるディヴィッド・ロックフェラーや、ロスチャイルド家の大物で東京在住のステファン・デ・ロスチャイルドなどだ。』

ロックフェラー家やロスチャイルド家などは国際金融資本の元締めに当たるような人たちです。彼らの本質は今まで述べてきたとおり、「今だけ、カネだけ、自分だけ」です。日本銀行はアベノミクスで市中銀行から多くの国債を買い集め、国債をかなり保有しています。つまり政府にお金を貸しています。そして日本政府から多くの利息を受け取っています。これが日銀の株主の利益になっています。

現在のシステムは、日本政府は民間銀行の日銀に対して、利息を払い続けなければなりません。ただ、利息分を上回る経済成長をしていれば、税収も増加し、政府は国債利息を、余裕を持って支払うことができます。問題は「失われた30年」のように経済成長が止まった場合です。この場合でも利息返済は否応なく強制されるので、政府は民間から強制的に消費増税などで増税して利息返済をしなければならなくなります。ちなみに日本政府の毎年の国債の利払い費は約9兆円(2009~2108年の平均)です。日本の国家予算の約1/10です。日本はコロナ対策で相当お金を使いましたから、国債発行額も2020年以降増えています。つまり今後の利払い費はさらに増えるでしょう。そうなるとますます増税となりますが、増税を強制される民間の純資産はますます減少し、やがて増税に応じられなくなるでしょう。

それでは利払いのためにさらに国債を発行することは可能でしょうか?(以下は私の解釈です)「もしそれをすると、国債の発行は際限がなくなります。日本政府は際限なく国債を発行できるのでしょうか?言い方を変えると、民間銀行の日銀はいつまでも日本国家にカネを貸すのでしょうか。お金を貸す側になって考えてみましょう。お金を貸す側は、貸したお金と利息を回収することが可能なうちは、お金を貸すでしょう。つまり、借りた人が持つ財産を強制的に売却して元が取れる内はお金を貸せます。仮に借金返済額がその人の収入を上回っても、その人の持っている財産(家や車)を売却すれば、貸したカネを回収できる内はお金を貸します。しかしその人の財産にも限度がありますから、借金には限界があります。これは民間銀行の日銀が日本政府にお金を貸す場合も同じでしょう。いずれ限界がやってきます。」いずれにしても、日本政府はいつまでも国債を発行し続けるわけにはいきません。

つまり、このままいくと政府債務の増大が止まらず、日本経済は破綻するのです。これを解決する手立てはあるのでしょうか?「公共貨幣」(山口薫)はその方法を提案しています。